みらい(新人医療事務)
「保健師、看護師、作業療法士又は精神保健福祉士共同訪問指導加算」って、名前が長すぎて覚えられないです……。これ、何のための加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
長いですよね。でも中身はシンプルで、精神科の「退院前訪問指導」を複数の職種で一緒に行ったときに上乗せされる加算なんです。令和8年度の医科点数表では、精神科退院前訪問指導料(I011-2)の「注2」として規定されています。
みらい(新人医療事務)
「注2」ということは、単独では算定できない加算なんですね?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。まず土台になる精神科退院前訪問指導料を算定していることが前提で、その上に複数職種で共同訪問した場合だけ、この加算が乗る形です。まず土台の点数から確認していきましょう。
精神科退院前訪問指導料と、この加算の関係
みらい(新人医療事務)
土台になる「精神科退院前訪問指導料」って、どんな点数なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表の告示にこう書かれています。「I011-2 精神科退院前訪問指導料 380点」「注1 入院中の患者の円滑な退院のため、患家等を訪問し、当該患者又はその家族等に対して、退院後の療養上の指導を行った場合に、当該入院中3回(入院期間が6月を超えると見込まれる患者にあっては、当該入院中6回)に限り算定する。」。これが土台です。
みらい(新人医療事務)
そして、その上に乗るのが今回の加算ですね?
あおい(元・医療事務)
はい。同じ告示の続きに「注2 保健師、看護師、作業療法士又は精神保健福祉士が共同して訪問指導を行った場合は、320点を所定点数に加算する。」とあります。これがこの加算の根拠条文で、320点が加算される仕組みです。
| 項目 | 点数 | 算定単位(令和8年度) |
|---|---|---|
| 精神科退院前訪問指導料(I011-2・注1) | 380点 | 入院中3回まで(6月超見込みは6回まで) |
| 共同訪問指導加算(I011-2・注2) | +320点 | 上記の訪問指導を複数職種で共同実施した場合 |
みらい(新人医療事務)
「複数職種で共同」というのがポイントなんですね。
あおい(元・医療事務)
そこが一番大事な条件です。次の章で詳しく見ていきましょう。

「共同」の意味を取り違えると算定候補から外れる
みらい(新人医療事務)
「複数職種で共同」って、具体的にはどういう状態を指すんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知にはっきり書かれています。「『注2』の加算は、患者の社会復帰に向けた調整等を行うに当たり、必要があって複数の職種が共同して指導を行った場合に算定するものであり、単一の職種の複数名による訪問の場合は対象としない。」。つまり、保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士のうち異なる職種が一緒に訪問することが条件で、同じ職種の看護師が2人で訪問しても、この加算の算定候補にはならないということです。
よくある取り漏れ
同職種2名での訪問: 「複数名で訪問した」ことと「複数職種で訪問した」ことは別物です。看護師2名の訪問は、この加算の対象にならない可能性があります。
訪問の必要性の記録漏れ: 留意事項には「患者の社会復帰に向けた調整等を行うに当たり、必要があって」共同訪問した場合と書かれています。なぜ複数職種での訪問が必要だったのか、その理由も記録に残しておくと確認がしやすくなります。
みらい(新人医療事務)
対象になる患者にも条件はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。土台の精神科退院前訪問指導料の要件として、留意事項通知にこう書かれています。「精神科退院前訪問指導料は、退院して患家に復帰又は精神障害者施設に入所する患者が算定の対象であり、医師又は看護師、作業療法士若しくは精神保健福祉士が配置されている施設に入所予定の患者は算定の対象としない。」。退院後に患家や精神障害者施設に戻る患者が対象で、医療・福祉職が配置された施設への入所が決まっている患者は対象外の可能性がある、ということですね。
記録・実施面での留意点
みらい(新人医療事務)
訪問した後にやることってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
記録が必要です。留意事項通知に「精神科退院前訪問指導を行った場合は、指導内容の要点を診療録等に記載する。」とあります。誰が、どんな内容を指導したか、診療録に残しておくことが求められています。
みらい(新人医療事務)
訪問先とのやり取りで気をつけることは?
あおい(元・医療事務)
2点あります。留意事項通知には「精神科退院前訪問指導に当たっては、当該保険医療機関における看護業務等に支障を来すことのないよう留意する。」「保険医療機関は、精神科退院前訪問指導の実施に当たっては、保健所等の実施する訪問指導事業等関連事業との連携に十分配慮する。」と書かれています。院内の看護業務に支障が出ないようにすることと、保健所等との連携に配慮することの2つが求められています。
自院で確認する順番
自院で精神科退院前訪問指導料(I011-2)を算定する入院患者がいるか確認する。 その訪問指導を、保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士のうち複数の異なる職種で共同して行ったか確認する(同一職種の複数名は対象外の可能性)。 併算定除外(後述)に該当しないか確認する。 指導内容の要点を診療録等に記載しているか確認する。 自院が算定候補になるかは、届出状況や記録の実態も含めて加算チェッカーで確認する。

併算定・除外に関する注意点
みらい(新人医療事務)
他の加算や点数とぶつかることはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。2つ確認しておきたい除外規定があります。まず1つ目、留意事項通知には「退院前訪問指導料を算定した場合は、精神科退院前訪問指導料は算定できない。」と書かれています。退院前訪問指導料(精神科の付かない一般科の点数、区分番号B007)を算定した場合は、精神科退院前訪問指導料(I011-2)、つまりこの加算の土台自体が算定できなくなる、という関係です。
みらい(新人医療事務)
もう1つは何ですか?
あおい(元・医療事務)
精神病棟入院基本料(A103)に関するものです。告示にこう書かれています。「精神保健福祉士配置加算を算定した場合は、区分番号A230-2に掲げる精神科地域移行実施加算、区分番号A246-2に掲げる精神科入退院支援加算、区分番号B005に掲げる退院時共同指導料2、区分番号B005-1-2に掲げる介護支援等連携指導料、区分番号I011に掲げる精神科退院指導料及び区分番号I011-2に掲げる精神科退院前訪問指導料は、算定しない。」。自院の病棟が精神保健福祉士配置加算を算定している場合、精神科退院前訪問指導料(I011-2)自体が算定できないため、その注2にあたるこの共同訪問指導加算も連動して算定候補から外れる可能性があります。
併算定除外は自院の算定状況とセットで確認
「退院前訪問指導料(B007)」との重複、「精神保健福祉士配置加算」を算定している病棟かどうかは、いずれもレセプト・算定システム側の設定と紐づく話です。この記事の内容だけで判断せず、自院の算定実績と突き合わせて確認することをおすすめします。
施設基準・届出について
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するのに、特別な届出や施設基準はいるんですか?
あおい(元・医療事務)
この記事で確認できた告示・留意事項通知の範囲では、この加算(および土台の精神科退院前訪問指導料)について、個別の施設基準の届出を求める記載は見当たりませんでした。ただし、これは「今回確認できた資料の範囲内」の話であり、自院が精神科を標榜する保険医療機関としての届出状況や、病棟の施設基準全体に問題がないかは別途の確認が必要です。
断定はできません
「施設基準の届出が不要」と言い切れるものではなく、「確認できた一次資料の範囲では、個別の届出要件の記載が見当たらない」という状態です。自院の実際の届出状況・算定システムの設定と合わせて、確認が必要です。
対象になりやすい場面・なりにくい場面
みらい(新人医療事務)
どんな場面だと算定候補になりやすいんですか?
あおい(元・医療事務)
精神科を標榜する病院・診療所に入院している精神疾患の患者さんが、退院に向けて患家や精神障害者施設への復帰を予定していて、保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士のうち複数の異なる職種が一緒に訪問して指導を行った、という場面が算定候補になりやすいケースです。
みらい(新人医療事務)
逆に対象になりにくいのは?
あおい(元・医療事務)
外来の患者さんへの訪問指導や、同一職種の複数名だけで行った訪問は、対象外の可能性が高いです。また、退院前訪問指導料自体を算定していない場合は、この加算だけを単独で算定することはできません。ただし、これも「絶対に対象外」と言い切るものではなく、実際の記録や算定状況によって変わりうるので、迷ったら個別に確認するのがおすすめです。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から、この加算に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
今回確認した告示・留意事項通知(令和8年度)の範囲では、この加算(共同訪問指導加算・320点)および土台となる精神科退院前訪問指導料(380点)について、前回改定(令和6年度)からの点数・算定要件の変更は確認されていません(確認日: 2026年8月・厚労省一次情報ベース)。ただし、これは今回参照した資料の範囲での確認結果であり、今後の正式な改定資料で追加の変更が示される可能性はあります。
改定差分の確認について
点数や算定要件が「変わっていない」ことも、資料で確認できて初めて言えることです。自院のレセプトシステムやマニュアルが古い年度のままになっていないか、令和8年度の一次資料と突き合わせておくと安心です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。