みらい(新人医療事務)
「褥瘡ハイリスク患者ケア加算」って名前は聞いたことがあるんですけど、うちの病棟でも算定候補になるんでしょうか?点数も1種類じゃないって聞いて混乱してます。
あおい(元・医療事務)
いい質問ですね。褥瘡ハイリスク患者ケア加算は令和8年度の点数表で「A236」に区分される入院基本料等加算です。専従の褥瘡管理者を配置して、重点的な褥瘡ケアが必要な患者に総合的な褥瘡対策を継続して行った場合に、入院期間中1回に限り算定する加算です。点数は通常500点と、特定の地域の病院向けの250点の2区分があります。ただし届出が必要な加算なので、自院の届出状況を確認したうえで「算定候補になるか」を見ていく必要があります。
みらい(新人医療事務)
病院じゃないとダメなんですか?うちは診療所なんですけど…
あおい(元・医療事務)
この加算は入院基本料等加算(A章)に位置づけられていて、施設基準に適合し地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者について算定するものです。当サイトが収録している一次資料の範囲では、対象は病院への入院患者を前提としており、外来や在宅で算定する仕組みは確認できていません。診療所は無床であれば対象外の可能性が高いですが、有床診療所の入院患者について完全に対象外と言い切れるかは、自院の届出区分と公式資料・審査支払機関で確認が必要です。
点数と算定単位(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数が2つあるって、どういうことですか?
あおい(元・医療事務)
表にすると分かりやすいですよ。
| 区分 | 点数 | 対象病院のイメージ |
|---|---|---|
| 通常(注1) | 500点 | 上記以外の一般的な届出病院 |
| 特定地域(注2) | 250点 | 別表第六の二に掲げる地域に所在する保険医療機関の一般病棟(特定機能病院・許可病床数400床以上の病院・DPC対象病院、および一般病棟入院基本料の届出で急性期病院A一般入院料等のみを届け出ている病院を除く) |

あおい(元・医療事務)
留意事項通知には「『注2』に規定する点数は、基本診療料の施設基準等別表第六の二に掲げる地域に所在する保険医療機関(特定機能病院、許可病床数が400床以上の病院、DPC対象病院及び一般病棟入院基本料に係る届出において急性期病院A一般入院料、急性期病院B一般入院料(看護・多職種協働加算に係る届出を行っているものに限る。)、急性期一般入院料1又は急性期一般入院料4(看護・多職種協働加算に係る届出を行っているものに限る。)のみを届け出ている病院を除く。)の一般病棟において、算定可能である」と書かれています。つまり、地域や病床規模によって算定できる点数区分が変わるということですね。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、うちの病院がどちらの区分に当たるかは自分たちで確認しないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。特定機能病院や400床以上の病院、DPC対象病院、急性期の高い入院料のみを届け出ている病院は250点区分の対象になりません。この線引きは病床数や届出区分によって変わるので、算定候補かどうかは自院の届出内容を照らし合わせて確認が必要です。
点数区分の思い込みに注意
「うちは病院だから500点」と決めつけず、許可病床数・届出中の入院料区分を必ず確認しましょう。250点区分に該当する病院が500点で請求してしまうと、後で確認が必要になる可能性があります。
対象患者はどう決まるのか
みらい(新人医療事務)
対象になる患者さんって、具体的にはどんな方ですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では「褥瘡予防・管理が難しく重点的な褥瘡ケアが必要な患者とは、ベッド上安静であって、次に掲げるものをいう」として、次のように列挙されています。
対象患者(ベッド上安静+いずれかに該当)
ショック状態: のもの 重度の末梢循環不全: のもの 麻薬等の鎮痛・鎮静剤の持続使用: が必要であるもの 6時間以上の全身麻酔下手術: を受けたもの 特殊体位による手術: を受けたもの 強度の下痢が続く状態: であるもの 極度の皮膚の脆弱: (低出生体重児、GVHD、黄疸等)であるもの 医療関連機器の長期・持続的使用: 皮膚に密着させる医療関連機器の長期かつ持続的な使用が必要であるもの 褥瘡の危険因子+既発症: 病的骨突出、皮膚湿潤、浮腫等の危険因子があって既に褥瘡を有するもの
あおい(元・医療事務)
この9項目のどれかに該当し、かつベッド上安静であることが前提です。「褥瘡になりやすそうな患者さん全員」ではなく、この列挙に当てはまるかどうかを個別に確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
入院してすぐの患者さんでも対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年3月23日付の疑義解釈(事務連絡)で、「重点的な褥瘡ケアが必要な患者に対し、適切な褥瘡予防・治療のための予防治療計画に基づく総合的な褥瘡対策を継続して実施した場合、入院からの日数にかかわらず算定可能か」という問いに対し、「算定要件を満たしていれば、入院からの日数にかかわらず褥瘡ハイリスク患者ケア加算を算定可能である」と回答されています。日数の制限自体は無いようですが、算定できるのは入院期間中1回に限られます。
施設基準を確認する
みらい(新人医療事務)
施設基準はどんな内容なんですか?結構ハードルが高そうな印象があります。
あおい(元・医療事務)
施設基準は複数の項目があるので、順番に見ていきましょう。まず一番の柱は褥瘡管理者の配置です。
褥瘡管理者の要件
経験・研修: 当該保険医療機関内に、褥瘡ハイリスク患者のケアに従事した経験を5年以上有する看護師等であって、褥瘡等の創傷ケアに係る適切な研修を修了した者を褥瘡管理者として専従で配置していること 研修の内容ア: 国又は医療関係団体等が主催する研修であって、褥瘡管理者として業務を実施する上で必要な褥瘡等の創傷ケア知識・技術が習得できる600時間以上の研修(修了証の交付があるもの)又は指定研修機関において行われる褥瘡等の創傷ケアに係る研修 研修の内容イ: 講義及び演習等により、褥瘡予防管理のためのリスクアセスメント並びにケアに関する知識・技術の習得、コンサルテーション方法、質保証の方法等を具体例に基づいて実施する研修 注2(250点)の場合: 褥瘡ハイリスク患者のケアに従事した経験を5年以上有する看護師等であって、褥瘡等の創傷ケアに係る適切な研修(ア及びイによるもの。)を修了した者を褥瘡管理者として配置していること
あおい(元・医療事務)
ここで気をつけたいのは、注1(500点)は「専従で配置」と明記されているのに対し、注2(250点)の要件文には「専従で」の文言が見当たらず「配置していること」となっている点です。この違いを見落とすと、自院がどちらの点数区分・要件に当てはまるのかを取り違えるおそれがあります。実際の運用でどちらの扱いになるかは、地方厚生局への確認も含めて慎重に判断してください。
みらい(新人医療事務)
褥瘡管理者は他の業務もしていいんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準届出通知には例外規定があります。「褥瘡管理者は、その特性に鑑みて、褥瘡ハイリスク患者ケア加算を算定すべき患者の管理等に影響のない範囲において、オストミー・失禁のケアを行う場合及び介護保険施設等又は指定障害者支援施設等からの求めに応じ、当該介護保険施設等又は指定障害者支援施設等において褥瘡管理の専門性に基づく助言を行う場合には、専従の褥瘡管理者とみなすことができる。ただし、介護保険施設等又は指定障害者支援施設等に赴いて行う助言に携わる時間は、原則として月16時間以下であること」とされています。オストミー・失禁ケアや外部施設への助言(月16時間以下)は例外的に認められますが、それ以外の業務との兼任は基本的に想定されていないと読めます。
みらい(新人医療事務)
記録とかカンファレンスも必要なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。施設基準届出通知にはこう書かれています。
記録・体制に関する施設基準
リスクアセスメント票の作成: 別添6の別紙16の褥瘡リスクアセスメント票・褥瘡予防治療計画書を作成し、それに基づく重点的な褥瘡ケアの実施状況及び評価結果を記録していること 各種件数の記録: 褥瘡対策チームとの連携状況、院内研修の実績、褥瘡リスクアセスメント実施件数、褥瘡ハイリスク患者特定数、褥瘡予防治療計画件数及び褥瘡ハイリスク患者ケア実施件数を記録していること カンファレンスの頻度: 褥瘡対策に係るカンファレンスが週1回程度開催されており、褥瘡対策チームの構成員及び必要に応じて、当該患者の診療を担う医師、看護師等が参加していること 職員研修: 総合的な褥瘡管理対策に係る体制確保のための職員研修を計画的に実施していること 体制整備: 重点的な褥瘡ケアが必要な入院患者に対して、適切な褥瘡発生予防・治療のための予防治療計画の作成、継続的な褥瘡ケアの実施及び評価、褥瘡等の早期発見及び重症化防止のための総合的な褥瘡管理対策を行うにふさわしい体制が整備されていること
みらい(新人医療事務)
記録するものが多くて大変そうです…
あおい(元・医療事務)
実際、書類の準備は一定のボリュームがあります。だからこそ、届出前に「誰が」「何を」「どの頻度で」記録するのかを決めておくと運用がスムーズになりますよ。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
施設基準はわかりました。じゃあ届出ってどうすればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準届出通知には「褥瘡ハイリスク患者ケア加算の施設基準に係る届出は、別添7の様式37を用いること。なお、当該加算の届出については実績を要しない」と書かれています。届出の様式は様式37で、届出時点で実績(過去の算定件数など)を求められない点はポイントです。ただし届出済みであることが算定の前提ですので、届出が済んでいなければ算定候補にはなりません。
届出前の算定はできない
届出が受理される前の期間について、この加算を算定候補として扱うことはできません。施設基準を満たしていても、届出手続きが完了しているかどうかを必ず確認しましょう。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
情報が多いので、確認する順番を整理したいです。
あおい(元・医療事務)
では、自院でチェックする流れをまとめますね。

自院で確認する順番
対象患者の該当有無を確認する: ベッド上安静で、ショック状態・重度の末梢循環不全・特殊体位による手術後など9項目のいずれかに該当する入院患者がいるかを確認します。 褥瘡管理者の配置を確認する: 経験5年以上の看護師等で、指定の研修(600時間以上の研修または指定研修機関の研修+リスクアセスメント研修)を修了した者を専従で配置できているかを確認します。 記録・カンファレンス体制を確認する: 褥瘡リスクアセスメント票・予防治療計画書の作成、週1回程度のカンファレンス、各種件数の記録体制が整っているかを確認します。 施設基準の届出(様式37)を確認する: 届出が受理されているか、地方厚生局への提出状況を確認します。実績要件は不要とされています。 点数区分(500点/250点)を確認する: 自院の許可病床数・届出中の入院料区分から、通常区分と特定地域区分のどちらに当てはまるかを確認します。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でよくある見落としってどんなことですか?
あおい(元・医療事務)
いくつか典型的なパターンがあります。
よくある取り漏れ
専従要件の見落とし: 褥瘡管理者が他部署の業務を兼任していて、実際には専従になっていないケース 入院日数での算定断念: 「入院から日が浅いから算定できない」と思い込んで見送ってしまうケース。疑義解釈では入院からの日数にかかわらず算定可能とされています 点数区分の取り違え: 自院の病床規模・入院料の届出状況を確認せず、通常区分(500点)で請求してしまうケース 記録の後付け: リスクアセスメント票や予防治療計画書を、ケア実施後にまとめて作成してしまい、記録として不十分になるケース
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲で確認したところ、褥瘡ハイリスク患者ケア加算そのものの点数・算定要件・施設基準について、前回改定(令和6年度)からの明確な変更点は確認されていません(確認日: 2026年8月)。令和8年3月には条文の字句を整える訂正通知(第2部通則の項番表記の修正など)が出ていますが、これは内容面の変更ではなく表記の訂正と読めるものでした。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、前回から算定できていた病院は、そのまま今回も算定候補になりそうですね。
あおい(元・医療事務)
そう読める材料はありますが、施設基準・届出の有効性は年度をまたいで自動的に引き継がれるとは限りません。前回改定時点の情報のまま判断せず、令和8年度時点の届出状況を改めて確認しておくと安心です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。似た名前の在宅版として在宅患者訪問褥瘡管理指導料もありますが、こちらは入院ではなく在宅医療における別の点数区分です。混同しないよう、対象が入院患者か在宅療養患者かを最初に確認してくださいね。同じ入院基本料等加算の仲間としては身体的拘束最小化推進体制加算もあります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。