みらい(新人医療事務)
心臓血管外科の先生から「K937って加算、うちの手術でも算定候補になるか確認してって言われたんですけど…正直、名前が長すぎて何の加算かピンと来ないんです」
あおい(元・医療事務)
正式名称は「心拍動下冠動脈、大動脈バイパス移植術用機器加算」ですね。令和8年度の医科点数表では区分番号K937として掲載されていて、30,000点の加算です。名前のとおり、心臓を止めずに(心拍動下で)冠動脈バイパス手術を行うときに使う専用機器の使用に対する加算なんですよ。
みらい(新人医療事務)
「心臓を止めずに」っていうのがポイントなんですね。人工心肺を使う普通のバイパス手術とは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。冠動脈バイパス移植術には大きく分けて「K552 冠動脈、大動脈バイパス移植術」(人工心肺を使用するタイプ)と「K552-2 冠動脈、大動脈バイパス移植術(人工心肺を使用しないもの)」の2種類があります。K937はこのうちK552-2、つまり人工心肺を使わないオフポンプ手術のときに、心臓が動いた状態のままグラフト(血管)を固定・安定させる専用機器を使った場合にだけ算定する加算です。
この加算はどんな加算?
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関とか患者さんの範囲を教えてください。
あおい(元・医療事務)
当サイトの整理では、対象は病院かつ入院に限られていて、診療所やクリニック、外来、在宅では対象になっていません。冠動脈バイパス移植術(人工心肺を使用しないもの)は入院で行う心臓血管外科の手術ですから、これは実態に沿った区分ですね。
みらい(新人医療事務)
手術そのものの点数とは別に、この30,000点が上乗せされるイメージですか?
あおい(元・医療事務)
はい、その理解で合っています。手術本体の点数(K552-2)に、機器を使った場合だけK937の30,000点が加算される、という構造です。厚生労働省の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)に基づく令和8年度の医科点数表には、次のように記載されています。「K937 心拍動下冠動脈、大動脈バイパス移植術用機器加算 30,000点 注 区分番号K552-2に掲げる手術に当たって、心拍動下冠動脈、大動脈バイパス移植術用機器を使用した場合に算定する。」
あおい(元・医療事務)
ポイントは「K552-2に掲げる手術に当たって」という条件がはっきり書かれていることです。つまり、K552(人工心肺を使用するタイプ)の手術では、この加算の対象にはならない、という整理になります。

点数の整理(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
本体の手術と加算、それぞれの点数を一覧で見たいです。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表(告示)から整理すると、こうなります。
| 区分番号 | 項目 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| K552 | 冠動脈、大動脈バイパス移植術(1吻合) | 75,160点 |
| K552 | 冠動脈、大動脈バイパス移植術(2〜3吻合) | 89,250点 |
| K552 | 冠動脈、大動脈バイパス移植術(4吻合以上) | 102,250点 |
| K552-2 | バイパス移植術(人工心肺不使用・1吻合) | 66,570点 |
| K552-2 | バイパス移植術(人工心肺不使用・2〜3吻合) | 91,350点 |
| K552-2 | バイパス移植術(人工心肺不使用・4吻合以上) | 104,350点 |
| K937 | 心拍動下冠動脈、大動脈バイパス移植術用機器加算 | 30,000点 |
みらい(新人医療事務)
K552とK552-2、どちらも「注 冠動脈形成術(血栓内膜摘除)を併せて行った場合は、10,000点を加算する」という注記があるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。これはK937とは別枠の加算なので、混同しないよう注意してください。あくまでK937はK552-2の術式区分に対する「機器使用」の加算で、術式そのものの追加手技(血栓内膜摘除)に対する加算とは性質が違います。
施設基準・届出は必要?
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出とか、事前に地方厚生局に何か出しておく必要ってありますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトの整理では、K937は施設基準の届出・届出要否ともに「不要」として扱っています。当サイトが保有する加算索引の整理でも「届出: 不要」と記載されています。
施設基準・届出は要確認
K937の告示条文(注書き)には、算定条件として「K552-2に掲げる手術に当たって機器を使用した場合」とだけ定められており、別段の施設基準や届出様式を求める記載は、当サイトが確認した公式資料の範囲では見当たりません。ただし、これは当サイトの整理であり、届出の要否や運用上の取り扱いは地方厚生局・審査支払機関への確認をおすすめします。
みらい(新人医療事務)
逆に、K552-2の手術自体(心臓血管外科の手術)には施設基準ってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは今回、当サイトが確認した一次資料の範囲では裏付けが取れていません。心臓血管外科の手術は特掲診療料の施設基準等(令和8年厚生労働省告示第71号)で個別に定められている可能性がありますが、K937そのものの記事としては範囲外なので、術式本体の施設基準は自院で個別に確認してください。
算定タイミング・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
一番大事なのは、術式区分がK552-2のまま完了しているかどうかです。留意事項通知(令和8年3月5日保医発0305第6号)には、こういう記載があります。「『K552-2』冠動脈、大動脈バイパス移植術(人工心肺を使用しないもの)を『K602』経皮的心肺補助法と併施した場合は、『K552』冠動脈、大動脈バイパス移植術により算定する。」
みらい(新人医療事務)
え、そうすると…人工心肺を使わないはずの手術でも、経皮的心肺補助法(K602)を併せて行うと、K552扱いになってしまうということですか?
あおい(元・医療事務)
資料上はそのように読めます。そしてK937はK552-2の手術に限定した加算ですから、術中にK602を併施してK552扱いに切り替わった場合は、K937の算定条件に当てはまらなくなる可能性が出てきます。
併算定・術式区分の変化に注意
術中の状況によって術式区分(K552とK552-2)が変わることがあり、その場合はK937の算定候補としての前提が崩れる可能性があります。最終的な区分と算定可否は、手術記録・診療録に基づき自院で個別に確認してください。
みらい(新人医療事務)
バイパス用の血管の採取料は別で算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
同じ留意事項通知に、K552・K552-2・K614(血管移植術、バイパス移植術)における「バイパス造成用自家血管の採取料については、当該所定点数に含まれ別に算定できない」という記載があります。つまり血管の採取そのものは手術本体の点数に含まれていて、別立てで請求するものではない、という整理です。K937自体はこの採取料とは別の話ですが、レセプト全体を見るときに一緒に確認しておくと取り漏れ・過剰請求のどちらも防ぎやすくなります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、この加算って何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した公式資料(令和8年度の医科点数表・告示)の範囲では、K937の点数(30,000点)を含め、前回改定(令和6年度)からの明確な変更点は確認されていません(確認日: 2026年7月・厚生労働省告示ベース)。なお、当サイトは今のところ令和6年度時点の一次資料そのものは保有していないため、この整理はあくまで「令和8年度資料の中に変更を示す記載が見当たらない」という範囲での確認です。改定前後の詳細な比較が必要な場合は、厚生労働省の個別改定項目に関する資料も併せてご確認ください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちの病院で確認するとしたら、どういう順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
だいたいこの順番で確認するとスムーズですよ。
自院で確認する順番
- 実施した手術がK552-2(冠動脈、大動脈バイパス移植術・人工心肺を使用しないもの)に該当するか、手術記録で確認する
- 手術中に心拍動下冠動脈、大動脈バイパス移植術用機器を実際に使用したか、使用記録・材料記録で確認する
- 術中にK602(経皮的心肺補助法)を併施しておらず、術式区分がK552に切り替わっていないか確認する
- レセプトの記載・請求区分がK552-2+K937の組み合わせで整合しているか確認する
- 施設基準や届出について、地方厚生局・審査支払機関の最新の取り扱いを確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな見落としってどんなパターンがありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかパターンがあります。
取り漏れやすいポイント
術式区分の混同: K552(人工心肺使用)とK552-2(人工心肺不使用)を同じ「バイパス移植術」としてひとくくりにしてしまい、K937がK552-2限定であることを見落とすケース。 K602併施時の見直し漏れ: 術中にK602(経皮的心肺補助法)を併施してK552扱いに変わったのに、当初の術式区分のままK937を算定候補として記録してしまうケース。 同種の別加算との混同: 術中グラフト血流測定に関する加算など、名称が似た別区分の加算と取り違えるケース。区分番号(K番号)を必ず確認しましょう。
みらい(新人医療事務)
心臓血管外科は他の科目に比べて加算の名前が長くて似ているものも多いから、区分番号でちゃんと確認するのが大事なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。加算名だけで判断せず、必ずK番号と告示・留意事項通知の原文で照合することをおすすめします。心臓血管外科領域の手術加算は、脊髄誘発電位測定等加算のように術中モニタリング・機器使用に着目した加算が他にもあるので、あわせて確認しておくと取り漏れ防止につながります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
K552(人工心肺を使用するタイプ)の手術でこの機器を使った場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
告示の条文では「K552-2に掲げる手術に当たって」使用した場合と明記されているため、K552の手術でこの機器を使用しても、K937の算定条件には当てはまらないと考えられます。個別のケースでは自院での確認をおすすめします。
みらい(新人医療事務)
機器を使ったこと自体は、どこで確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
手術記録や使用材料の記録、麻酔記録などに使用機器の記載が残っているはずなので、そこで確認するのが確実です。診療録上の記載が曖昧な場合は、執刀医・手術室スタッフに直接確認することをおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。術式区分や機器使用の状況を整理すると、確認すべきポイントがはっきりしてきます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。