みらい(新人医療事務)
あおいさん、レセプトのチェックをしていたら「往診往復時間加算」という見慣れない項目を見つけたんです。往診料に何か時間で加算がつくということですか?
あおい(元・医療事務)
そうですね。これは往診料(C000)のなかでも、かなり限定的な場面で使う特例区分です。最寄りの医療機関から片道16キロメートルを超えるような、いわゆる「へき地」に該当する地域への往診で、往診のために医療機関を出発してから帰院するまでの時間に応じて加算する仕組みです。令和8年度(2026年度)時点で、30分ごとに300点という計算方法になっています。
みらい(新人医療事務)
「へき地だから」というだけで算定候補になるわけではないんですか?
あおい(元・医療事務)
そこがポイントです。単に遠い患家というだけでなく、地方厚生(支)局長が厚生労働大臣の承認を得て指定した地域(いわゆる「2号地域」)に該当する必要があります。しかも冬期の積雪で車両の通行ができない、道路事情が悪く徒歩によらざるを得ない、といった特殊な事情が一般的に存在する地域であることが前提です。都市部や普通の郊外の往診には基本的に当てはまらない区分だと考えてください。
みらい(新人医療事務)
なるほど、かなり限定的なんですね。それでも一度、うちの往診の実態と照らし合わせてみたいです。
あおい(元・医療事務)
いいと思います。対象地域・点数の考え方・届出の扱いを順番に整理していきましょう。
往診往復時間加算とは(対象地域と場面)
みらい(新人医療事務)
まず、この加算が想定している場面を教えてください。
あおい(元・医療事務)
往診料には、保険医療機関の所在地と患家の所在地の距離が16キロメートルを超える往診は、原則として算定できないというルールがあります。往診を必要とする絶対的な理由がある場合に限って例外的に認められる、という建て付けです。
みらい(新人医療事務)
16キロメートルというのは結構な距離ですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし、それとは別に「1号地域」「2号地域」という、もう一段特例的な地域区分があります。1号地域は、医療機関のない島など、海路によるほかは往診が難しい地域です。2号地域は、1号地域以外で、最寄りの医療機関からの往診距離が片道16キロメートルを超える地域を指します。どちらも地方厚生(支)局長が厚生労働大臣の承認を得て指定します。
みらい(新人医療事務)
往診往復時間加算は、このうちどちらに関係するんですか?
あおい(元・医療事務)
2号地域に対する往診の場合の計算方法にあたります。1号地域には、海路の距離に応じた加算や、島に滞在した時間に応じた加算という別の仕組みがあり、この加算とは対象・計算方法が異なります。1号地域側の加算は、また別の機会に整理しますね。
みらい(新人医療事務)
2号地域だと認められるための「特殊な事情」って、具体的にはどんなものですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知では、冬期積雪の期間に通常の車両の運行ができず往診に相当な時間を要する事情、または道路事情がきわめて悪く相当の路程を徒歩によらなければならず往診に相当な時間を要する事情、といった内容が挙げられています。こうした事情が一般的に存在する地域として、地方厚生(支)局長が指定した地域であることが前提です。

点数の考え方(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数の計算方法を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
テーブルにまとめますね。
| 項目 | 内容(令和8年度) |
|---|---|
| 往診料(基本点数) | 720点 |
| 往診料の「注1」から「注5」まで、「注8」から「注10」までの加算 | 該当する場合に合算(緊急往診加算・夜間休日往診加算・深夜往診加算・在宅ターミナルケア加算・看取り加算・死亡診断加算・往診時医療情報連携加算・介護保険施設等連携往診加算など) |
| 2号地域に対する往診時間の加算 | 往診のため保険医が医療機関を出発してから帰院するまでの時間について、30分またはその端数を増すごとに300点 |
| 対象地域 | 地方厚生(支)局長が指定した「2号地域」(最寄りの医療機関から片道16キロメートルを超える地域) |
みらい(新人医療事務)
「30分の端数」というのは、たとえば往復の時間が50分だったらどう数えるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の文言どおりに読むと、30分またはその端数を増すごとに300点なので、50分であれば30分を1単位、残りの20分を端数として2単位目とみなし、300点×2=600点という計算になります。実際の計算にあたっては、この文言に沿って自院で確認しながら進めることをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
この300点というのは、往診料720点にそのまま上乗せするイメージですか?
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項通知では、往診料の項に定める算定方法に準じて算定した点数(720点に「注1」から「注5」まで及び「注8」から「注10」までによる点数を加算した点数)に、さらにこの往診時間による点数を加算する、という構成になっています。つまり、通常の往診料の加算(緊急往診加算などが該当すれば)を合算したうえで、そこに往復時間ぶんの点数を上乗せする形です。
1号地域との違いに注意
1号地域(島など、海路によるほかは往診が難しい地域)には、海路の距離に応じた加算や、滞在時間に応じた加算という別の仕組みがあります。往診往復時間加算に相当する2号地域の計算方法(30分ごとに300点)とは対象地域も点数の考え方も異なるため、混同しないよう注意が必要です。
地域指定と届出の確認ポイント
みらい(新人医療事務)
この加算を算定候補にするには、どこから確認を始めればいいですか?
あおい(元・医療事務)
まず確認したいのは、実際に往診している患家の地域が、地方厚生(支)局長によって「2号地域」として指定されているかどうかです。この地域指定は、自院が届け出て得るものではなく、地方厚生(支)局が地域単位で行っているものです。つまり、施設基準を満たして届出をする、という一般的な加算の仕組みとは性質が異なります。
みらい(新人医療事務)
自院で「届出」をするタイプの加算ではないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし、自院が担当している患家がその指定地域に含まれているかどうかは、自院側で把握・確認しておく必要があります。当サイトが収録している一次資料の範囲では、指定地域の具体的な地名リストまでは確認できていないため、該当する可能性がある地域で往診をしている場合は、地方厚生(支)局に確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
施設基準についてはどうですか?
あおい(元・医療事務)
この2号地域の往診時間による加算そのものに、独自の施設基準(人員配置や設備などの要件)があるとは、当サイトが収録している一次資料の範囲では確認できていません。ただし、往診料本体や、往診料の各種加算(緊急往診加算など)には、それぞれ在宅療養支援診療所・病院であることなどの要件が関わってくる場合があるため、あわせて確認しておくと安心です。
地域指定は自己判断できない
2号地域に該当するかどうかは、道路事情や積雪の状況などをふまえて地方厚生(支)局長が指定するものであり、自院や医療事務担当者の判断だけで決められるものではありません。該当しそうな場合は、必ず地方厚生(支)局へ確認したうえで算定候補として扱ってください。
算定タイミング・時間の数え方の注意
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで、他に気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
往診時間の起点と終点にも決まりがあります。留意事項通知では、往診のため保険医が当該保険医療機関を出発してから帰院するまでの時間、とされています。単純な患家での診療時間だけでなく、移動にかかった時間全体を指している点は押さえておきたいところです。
みらい(新人医療事務)
往診料の「注2」にある診療時間の加算とは別物ということですね。
あおい(元・医療事務)
はい、別の規定です。「注2」の診療時間は、実際に診療に当たっている時間を指すもので、交通機関の都合などで患家に滞在・宿泊した時間は算入しないとされています。一方、2号地域の往診時間による加算は、移動を含めた出発から帰院までの往診全体の時間を対象にしている点が異なります。混同しないよう、それぞれ別の項目として記録・確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
通常の緊急往診加算や夜間・休日往診加算などと、同じ往診で一緒に算定できることもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の算定方法の記載を見るかぎり、往診料に「注1」から「注5」まで、「注8」から「注10」までの加算を合算した点数に、この往診時間分の点数を加算する形になっているので、該当する要件を満たしていれば、他の加算とあわせて算定候補になり得ます。ただし、それぞれの加算ごとに個別の算定要件があるので、この記事だけで全部を判断せず、該当しそうな加算はひとつずつ確認していくのが確実です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から、この加算に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定の概要(個別改定項目について)」のうち、在宅医療分野の見直し項目を確認すると、往診時医療情報連携加算の算定可能な範囲の拡大や、在宅療養支援診療所・病院の要件への業務継続計画(BCP)の追加などが挙げられています。一方で、2号地域に対する往診時間による加算(この記事で扱っている区分)についての見直しは、当サイトが確認した個別改定項目の記載範囲では見当たりませんでした。
みらい(新人医療事務)
つまり、この部分は基本的にそのままということですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の告示・留意事項通知に記載されている算定方法(30分ごとに300点)自体は、当サイトが収録している一次資料の範囲では変更が確認されていません。ただし、改定の全項目を横断的に調べ切れているわけではないので、実際の請求にあたっては、最新の告示・通知や審査支払機関の案内もあわせて確認することをおすすめします。
改定差分の確認範囲
今回確認したのは、厚生労働省が公表している令和8年度の告示・留意事項通知、および個別改定項目についての在宅医療分野の記載です。往診往復時間加算に相当する区分(2号地域の往診時間による加算)そのものを名指しした見直し記載は確認できていません(確認日: 2026年8月)。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
最後に、自院で確認する順番を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
ステップにしますね。
自院で確認する順番
- 対象の往診が、保険医療機関から患家まで片道16キロメートルを超えているかを確認する
- その地域が、地方厚生(支)局長の指定する「2号地域」に該当するかを地方厚生(支)局に確認する(不明な場合は問い合わせる)
- 該当する場合、往診のため医療機関を出発してから帰院するまでの時間を記録する
- 30分単位(端数切り上げ)で往診時間を区切り、1単位あたり300点として計算する
- 往診料本体(720点)と、該当する他の加算(緊急往診加算など)をあわせて、算定候補として整理する

よくある取り漏れ・誤解
みらい(新人医療事務)
逆に、よくある思い違いや取り漏れにはどんなものがありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかありますね。
よくある取り漏れ・誤解
遠方だから自動的に対象になると考える: 片道16キロメートルを超えているだけでは、2号地域の往診時間による加算の対象にはなりません。地方厚生(支)局長による地域指定と、冬期積雪や道路事情などの特殊な事情が前提です。
診療時間と往診時間を混同する: 「注2」の診療時間加算(実際に診療している時間)と、2号地域の往診時間(出発から帰院までの移動を含む時間)は別の規定です。それぞれ別の基準で記録しておく必要があります。
1号地域の加算と取り違える: 島などの1号地域には、海路距離や滞在時間に応じた別の加算があります。往診往復時間加算(2号地域向け)とは対象地域・計算方法が異なるため、地域の性質を確認したうえで整理することをおすすめします。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後によくある質問をまとめてもらえますか。
あおい(元・医療事務)
いいですね。何個か想定してみましょう。
みらい(新人医療事務)
都市部のクリニックでも、患家が遠方なら算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
単に距離が離れているというだけでは対象になりません。地方厚生(支)局長が指定する2号地域に該当するかどうかがまず前提になるので、都市部近郊のクリニックで該当するケースは限定的だと考えられます。心当たりがある場合は、地方厚生(支)局へ確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
往診の途中で渋滞に巻き込まれて時間がかかった場合も、往診時間に含めていいんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の文言では、保険医が医療機関を出発してから帰院するまでの時間、とされているので、移動にかかった時間全体が対象になると読めます。ただし、実際の記録や請求の扱いについては、審査支払機関の判断が関わる部分でもあるため、自院だけで判断せず確認しながら進めるのが確実です。
みらい(新人医療事務)
前回改定(令和6年度)の時点でも、この加算はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
往診料における1号地域・2号地域の特例的な算定方法自体は、以前からある仕組みです。ただし、当サイトが今回確認した一次資料の範囲では、前回改定(令和6年度)時点の記載までさかのぼって照合できていないため、点数や要件が完全に同一だったかどうかは断定できません。令和8年度時点の記載としてご確認ください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちの往診がこの加算の対象になりそうか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。患家までの距離や地域の状況を整理しながら、確認すべきポイントを一緒に整理できます。あわせて、往診料の他の加算(夜間往診加算、休日往診加算、往診時医療情報連携加算、介護保険施設等連携往診加算)も対象になっていないか、確認しておくと取り漏れを防げます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。