みらい(新人医療事務)
あおいさん、レセプトのチェックをしていて「院内製剤加算」っていう10点の加算を見つけたんですけど、これって何のための加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
院内製剤加算は、調剤技術基本料の「注3」で定められている加算です。入院中の患者さんに投薬を行う際、薬価基準に収載されている医薬品に溶媒や基剤などの賦形剤を加えて、元の医薬品とは異なる剤形にして調剤した場合に、所定点数へ10点を加算できるものです。令和8年度(2026年度)の医科点数表でもこの内容で規定されています。
みらい(新人医療事務)
「異なる剤形にする」ってどういうことですか?錠剤を粉にする、みたいなことでしょうか?
あおい(元・医療事務)
そうですね。たとえば錠剤を砕いて散剤にする、カプセルを外して中身を取り出す、といった調剤上の工夫が該当し得ます。ただし後で説明しますが、単に形を変えただけでは算定できないケースも細かく決められているので、自院のケースがどこに当てはまるかは一つずつ確認が必要です。
院内製剤加算の対象になる医療機関・患者
みらい(新人医療事務)
うちは診療所なんですが、対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
院内製剤加算は調剤技術基本料の加算ですので、診療所・病院のどちらでも算定候補になり得ます。ただし対象となるのは「入院中の患者」に投薬した場合に限られる点に注意してください。一次資料では次のように整理されています。
対象の整理(令和8年度)
- 医療機関: 診療所・病院のどちらも対象になり得ます(当サイトの整理では、外来・在宅は対象外の可能性が高く、自院の状況で確認が必要です)
- 患者: 調剤技術基本料の「1 入院中の患者に投薬を行った場合」に該当する患者
- 行為: 薬価基準収載医薬品に賦形剤を加え、異なる剤形にして院内製剤の上調剤した場合
みらい(新人医療事務)
「その他の患者」、つまり入院中ではない患者への投薬は対象外になりそうですね。
あおい(元・医療事務)
一次資料の該当条文を見てみましょう。「1において、調剤を院内製剤の上行った場合は、院内製剤加算として10点を所定点数に加算する。」(F500 調剤技術基本料 注3)とあります。「1において」とあるとおり、院内製剤加算は「1 入院中の患者に投薬を行った場合(42点)」に対する加算です。「2 その他の患者に投薬を行った場合(14点)」には、この加算の規定は及んでいません。外来患者への調剤で同様の工夫をした場合に算定候補となるかは、この条文の範囲では確認できないため、自院で確認が必要な点として扱ってください。
点数の内訳(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
はい、告示の該当箇所をそのまま並べるとこうなります。
| 区分 | 点数 | 算定対象 |
|---|---|---|
| F500 調剤技術基本料 1 | 42点 | 入院中の患者に投薬を行った場合 |
| F500 調剤技術基本料 2 | 14点 | その他の患者に投薬を行った場合(院内製剤加算の対象外) |
| 注3 院内製剤加算 | +10点 | 1の算定に際し、院内製剤の上調剤した場合に所定点数へ加算 |

みらい(新人医療事務)
つまり入院中の患者さんで条件を満たせば、42点+10点で52点になる、という理解でいいですか?
あおい(元・医療事務)
条件を満たす場合の算定候補としてはその整理になります。ただし後述する除外ケースに当てはまると院内製剤加算の10点は算定できませんし、そもそも調剤技術基本料自体が算定できない月もありますので、点数だけを見て決めつけないようにしてください。
施設基準・届出は必要か
みらい(新人医療事務)
この加算、届出が必要なんですか?施設基準はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、院内製剤加算そのものについて施設基準や地方厚生局への届出を求める記載は確認できていません。調剤技術基本料の算定要件を満たした上で、実際の調剤内容が院内製剤に該当するかどうかで算定候補になるかが決まる加算、という整理です。
届出不要と決めつけない
届出に関する記載が一次資料に見当たらないことは、「届出が一切不要」であることを保証するものではありません。地方厚生局への確認事項や自院の運用ルールと照らし合わせ、念のため確認しておくことをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
施設基準がいらないなら、条件さえ満たせばどの医療機関でも算定候補になりそうですね。
あおい(元・医療事務)
そう単純にも言い切れません。院内製剤加算は調剤技術基本料の「注3」に基づく加算のため、同一月内に処方箋の交付がある場合や、薬剤管理指導料(B008)・在宅患者訪問薬剤管理指導料(C008)を算定している患者など、調剤技術基本料そのものが算定できない状況では、その上に乗る院内製剤加算も算定候補にはなりません。
算定できないケースをきちんと確認する(除外規定)
みらい(新人医療事務)
さっき「除外ケースがある」っておっしゃっていましたが、具体的にどんな場合ですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に細かく列挙されています。まず基本の除外規定を条文のまま見てみましょう。留意事項通知には、「注3」に規定する院内製剤加算は、薬価基準に収載されている医薬品に溶媒、基剤等の賦形剤を加え、当該医薬品とは異なる剤形の医薬品を院内製剤の上調剤した場合に、次の場合を除き算定できる、と書かれています(F500 調剤技術基本料 留意事項通知 (4)ア)。この「次の場合」として、以下の4つのケースが除外として挙げられています。
| 除外ケース | 内容 |
|---|---|
| (イ) | 調剤した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合 |
| (ロ) | 散剤を調剤した場合 |
| (ハ) | 液剤を調剤する場合であって、薬事承認の内容が用時溶解して使用することとなっている医薬品を交付時に溶解した場合 |
| (ニ) | 1種類のみの医薬品を水に溶解して液剤とする場合(安定剤、溶解補助剤、懸濁剤等製剤技術上必要と認められる添加剤を使用した場合及び調剤技術上、ろ過、加温、滅菌行為をなす必要があって、これらの行為を行った場合を除く。) |
みらい(新人医療事務)
散剤にすること自体はよくありそうなのに、それが除外になっているのは意外です。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。この一覧に当てはまる調剤は、剤形が変わっていても院内製剤加算の対象外の可能性が高いという整理になります。自院の調剤記録がどのケースに該当するかを、レセプト担当と薬剤師で確認しておくと安心です。
剤形が変わらなくても算定候補になるケース
みらい(新人医療事務)
逆に、剤形が変わらなくても算定できる場合もあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、これも留意事項通知に明記されています。「上記アにかかわらず、剤形が変わらない場合であっても、次に該当する場合には、院内製剤加算が算定できる。ただし、調剤した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合を除く。」(F500 調剤技術基本料 留意事項通知 (4)イ)とされています。
| ケース | 内容 |
|---|---|
| (イ) | 同一剤形の2種類以上の既製剤(賦形剤、矯味矯臭剤等を除く。)を混合した場合(散剤及び顆粒剤を除く。) |
| (ロ) | 安定剤、溶解補助剤、懸濁剤等製剤技術上必要と認められる添加剤を加えて調剤した場合 |
| (ハ) | 調剤技術上、ろ過、加温、滅菌行為をなす必要があって、これらの行為を行った場合 |
あおい(元・医療事務)
さらに条文には、剤形の変更有無にかかわらない共通の除外規定もあります。「ア、イにかかわらず調剤した医薬品を、原料とした医薬品の承認内容と異なる用法・用量あるいは効能・効果で用いる場合は院内製剤加算は算定できない。」(F500 調剤技術基本料 留意事項通知 (4)ウ)と定められています。
みらい(新人医療事務)
承認された使い方と違う使い方をする調剤は、そもそも対象外なんですね。
あおい(元・医療事務)
その整理になります。剤形が変わったかどうかだけでなく、薬事承認の範囲内の使い方かどうかも確認するポイントです。
併算定・算定回数の注意点
みらい(新人医療事務)
同じ月に他の加算や指導料と一緒に算定できますか?
あおい(元・医療事務)
院内製剤加算の土台となる調剤技術基本料には、次のような回数制限・併算定に関する条文があります。「同一の患者につき同一月内に調剤技術基本料を算定すべき投薬を2回以上行った場合においては、調剤技術基本料は月1回に限り算定する。」(F500 調剤技術基本料 注2)、また「区分番号B008に掲げる薬剤管理指導料又は区分番号C008に掲げる在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については、算定しない。」(F500 調剤技術基本料 注4)とも定められています。
調剤技術基本料が算定できない月は院内製剤加算も対象外の可能性
院内製剤加算は調剤技術基本料の「注3」加算のため、調剤技術基本料自体が算定できない状況(同一月に処方箋の交付がある場合、薬剤管理指導料(B008)または在宅患者訪問薬剤管理指導料(C008)を算定している場合など)では、院内製剤加算も算定候補にならない可能性があります。同一月の算定状況を必ず確認してください。
あおい(元・医療事務)
同一医療機関での処方箋交付についても、留意事項通知に次の記載があります。「同一医療機関において同一月内に処方箋の交付がある場合は、調剤技術基本料は算定できない。」(F500 調剤技術基本料 留意事項通知 (2))とされています。
みらい(新人医療事務)
併算定の確認は、月単位でしっかり見ないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。院内製剤加算だけを見るのではなく、土台の調剤技術基本料が成立しているかを先にチェックする、という順番が大切です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わった点はありますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、院内製剤加算の点数(10点)や算定要件・除外規定について、前回改定からの変更は確認されていません(確認日: 2026年7月・厚労省一次情報ベース)。ただし、この確認は当サイトが収録している資料の範囲にとどまりますので、より詳細な経緯を知りたい場合は厚労省の個別改定項目資料もあわせて確認することをおすすめします。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちのケースが対象になるかどうか、どう確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認していくと整理しやすいです。
自院で確認する順番
- 対象の調剤が「入院中の患者」への投薬かどうかを確認する
- 調剤技術基本料そのものが算定できる状況か確認する(同一月内の処方箋交付の有無、薬剤管理指導料B008・在宅患者訪問薬剤管理指導料C008の算定状況)
- 調剤内容が「薬価基準収載医薬品に賦形剤を加え異なる剤形にした調剤」に該当するか確認する
- 除外ケース(同一規格品の存在・散剤・液剤の溶解など)に当てはまらないか確認する
- 剤形が変わらない場合は、混合・添加剤使用・ろ過等の技術的行為に該当するか確認する
- 承認された用法・用量、効能・効果の範囲内の調剤かを確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でよく見落とされそうなポイントはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。
よくある取り漏れ・確認漏れ
- 外来患者の調剤に適用してしまう: 院内製剤加算は「入院中の患者」への投薬が前提です。外来での同様の調剤には、この条文の範囲では算定候補になりません。
- 散剤への変更を院内製剤加算として計上してしまう: 散剤を調剤した場合は除外ケースに明記されています。剤形変更=加算対象、と単純に判断しないことが大切です。
- 薬剤管理指導料との重複算定に気づかない: 同一月にB008・C008を算定している患者では、調剤技術基本料自体が算定できないため、院内製剤加算も対象外の可能性があります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
薬剤の供給不足で、やむを得ず錠剤を砕いて調剤するようなケースもニュースで見た記憶があるんですが、そういう場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
過去の疑義解釈では、そうした事例が取り上げられたことがあります。たとえば令和4年度の疑義解釈では、小児用の解熱鎮痛薬等の供給が限定されている状況で、入院中の患者に対して錠剤を粉砕し賦形剤を加えて調剤した場合について、「錠剤を粉砕し乳糖などで賦形して散剤にするなどの取組についても考慮することとされていることから、当該事例において院内製剤加算を算定して差し支えない。」(疑義解釈資料の送付について(その39)令和4年度 医科 問1)と回答されています。また令和6年度の疑義解釈でも、オセルタミビルリン酸塩のドライシロップ製剤が不足した状況について、「オセルタミビルリン酸塩カプセルを脱カプセルし、賦形剤を加えるなどの調剤上の工夫を行った上での調剤を検討いただきたいこと。」とされているなか、やむをえず当該対応を実施した場合には、院内製剤加算を算定して差し支えない、という回答が出されています(疑義解釈資料の送付について(その18)令和6年度 医科 問1)。
みらい(新人医療事務)
つまり、供給不足のようなやむを得ない事情がある場合は、算定できる可能性が高い、ということですね。
あおい(元・医療事務)
これらはあくまで当時の医薬品供給状況を前提にした個別の疑義解釈であり、自院の状況にそのまま当てはまるとは限りません。同様の事情がある場合は、最新の疑義解釈・通知を確認しながら判断することをおすすめします。
公式資料の根拠
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚労省公式資料を根拠としています。詳細な条文・除外規定は必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号・医科点数表 F500 調剤技術基本料) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 疑義解釈資料の送付について(F500 調剤技術基本料 院内製剤加算に関する質疑応答) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21053.html
- 診療報酬改定に関する厚生労働省の情報(改定関連通知の一覧・入口ページ) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。調剤の内容や算定状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。