みらい(新人医療事務)
先輩、この「静脈圧迫処置初回加算」って加算、初めて見ました。これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
これは処置そのものではなくて、「静脈圧迫処置(慢性静脈不全に対するもの)」という処置に対して、初回の実施時だけ上乗せできる加算です。区分番号はJ001-10。静脈圧迫処置本体が200点で、初回に限り「静脈圧迫処置初回加算」として150点を所定点数に加算する、という構造になっています。令和8年度(2026年度)の医科点数表に基づく整理です。
みらい(新人医療事務)
「初回だけ」なんですね。2回目以降はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
2回目以降は静脈圧迫処置の本体点数200点のみで、加算150点は算定できません。あくまで「初めて処置を行った月」だけに限られる加算です。この構成をまず図で確認しておきましょう。

静脈圧迫処置そのものはどんな処置ですか
みらい(新人医療事務)
そもそも「静脈圧迫処置」ってどんな処置なんですか?対象になる患者さんのイメージがまだつかめません。
あおい(元・医療事務)
一次資料(留意事項通知)では、対象患者はかなり具体的に定義されています。まず、2週間以上持続していて、他の治療法では治癒・改善しない下肢の難治性潰瘍を持つ患者であること。その上で、慢性静脈不全と診断されていることが条件です。
対象患者の判定基準(留意事項通知より)
- 難治性潰瘍の持続期間: 2週間以上、他の治療法によっては治癒又は改善しないもの
- 慢性静脈不全の診断根拠(いずれか): 下肢静脈超音波検査で表在静脈0.5秒・深部静脈1秒を超える逆流所見、または深部静脈の有意な閉塞所見
- 動脈性静脈性混合性潰瘍が疑われる場合: 足関節上腕血圧比(ABI)検査0.5以上であること
- これら以外の原因が否定されていること
みらい(新人医療事務)
検査の数値まで細かく決まっているんですね。算定できる回数にも制限はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。月に1回に限り、3月を限度として算定します。ただし、初回の潰瘍の大きさが100平方センチメートルを超える場合は、限度が6月まで延長されます。この回数制限は本体の処置(200点)に対するもので、初回加算(150点)自体はあくまで「最初の1回」にだけ乗る、という位置づけです。
実施者にはどんな要件がありますか
みらい(新人医療事務)
誰でもこの処置を担当できるわけではないんですよね?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。留意事項通知では「専任の医師が直接行うもの又は専任の医師の指導の下、専任の看護師が行うものについて算定する」とされています。そして、その医師または看護師は、関連学会が主催する所定の研修会を受講していることが条件です。
みらい(新人医療事務)
「所定の研修会」って具体的にはどんな研修なんですか?
あおい(元・医療事務)
過去の疑義解釈(令和2年度)では、日本静脈学会による「弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター講習会」及び「弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター講習会・静脈圧迫処置追加講習会」が該当するという回答が示されています。これは令和2年度時点の疑義解釈なので、現在も同じ研修が該当するかは、関連学会・地方厚生局への確認が必要な点として留意してください。
実施者要件は3値で確認を
実施者要件(専任医師/専任看護師・研修受講)を満たしているかどうかは、自院の人員体制によって「算定候補」「要確認」「対象外の可能性」のいずれかに分かれます。研修修了の記録が院内に残っているか、対象の医師・看護師が専任配置になっているかを、まず人事・研修記録から確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
施設基準の看護師配置についても、もう少し詳しく知りたいです。
あおい(元・医療事務)
届出様式の施設基準チェック表では、静脈圧迫処置(慢性静脈不全に対するもの)の看護師要件として「血管外科、心臓血管外科、皮膚科、形成外科又は循環器内科を専ら担当する専任の常勤看護師」という記載があります。医師が直接行う場合はこの限りではありませんが、看護師が実施する体制を取る場合は、この診療科要件も併せて確認しておく必要があります。
施設基準・届出は必要ですか
みらい(新人医療事務)
この加算、届出は必要なんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
はい、届出が必要です。告示の注1では「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において行われる場合に限り算定する」と明記されています。つまり、施設基準を満たした上で、地方厚生局への届出が受理されていることが算定の前提です。
施設基準・届出のチェックポイント
- 施設基準に適合していることが前提条件(告示 注1)
- 地方厚生局長等への届出が受理されていること
- 実施者(専任医師または専任医師の指導下の専任看護師)が所定の研修を受講していること
- 看護師が実施する場合は、血管外科等を専ら担当する専任の常勤看護師であること
みらい(新人医療事務)
届出をしないまま処置だけ行ってしまったら、どうなりますか?
あおい(元・医療事務)
「届出をしていないので算定不可です」と一律には言い切れませんが、施設基準に適合した届出が受理されていない状態での算定は、審査で問題になる可能性が高いです。届出の有無・受理状況は、必ず自院の届出台帳や地方厚生局への提出控えで確認してください。院内で「届出済みのはず」という思い込みだけで進めるのは避けたいところです。
レセプト記載で気をつけることはありますか
みらい(新人医療事務)
算定するときに、レセプトの書き方で注意することはありますか?
あおい(元・医療事務)
あります。留意事項通知では、関連学会が定める指針等を遵守することに加えて、診療報酬明細書の摘要欄への記載事項が具体的に定められています。
摘要欄への記載事項(留意事項通知より)
- 難治性潰瘍の所見(潰瘍の持続期間、部位、深達度及び面積を含む)
- これまでの治療経過
- 慢性静脈不全と診断した根拠(下肢静脈超音波検査等の所見)
- 静脈圧迫処置を必要とする医学的理由
- 指導内容
みらい(新人医療事務)
結構な項目数ですね…。初回加算を算定するときも、これを全部書くんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、静脈圧迫処置自体を算定する際に必要な記載事項なので、初回加算を上乗せする月も同様に記載が必要になります。特に初回は「治療経過」の欄に初回である旨を記載しておくと、審査側にも状況が伝わりやすくなります。この記載が漏れていると、要件を満たしていても算定候補として認められにくくなる可能性があるので、記録のフォーマットを院内で用意しておくと安心です。
みらい(新人医療事務)
自院で確認する順番を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。フローにまとめてみました。

自院で確認する順番
- 対象患者かどうかを確認する(難治性潰瘍の持続期間・慢性静脈不全の診断基準)
- 実施者要件を確認する(専任医師、または専任医師の指導下の専任看護師・所定研修の受講記録)
- 施設基準の届出状況を地方厚生局への届出控えで確認する
- レセプト摘要欄の記載事項(潰瘍所見・治療経過・診断根拠・医学的理由・指導内容)を記録する体制を整える
- 上記がすべて確認できた段階で、初回加算150点の算定候補として院内で判断する
似たような加算と混同しないために
みらい(新人医療事務)
名前が似ている加算と間違えたりしないか、少し心配です。
あおい(元・医療事務)
大事な視点です。「静脈圧迫処置初回加算」は、あくまでJ001-10「静脈圧迫処置(慢性静脈不全に対するもの)」という処置専用の初回加算で、他の処置区分の「初回加算」とは対象も算定要件もまったく別物です。加算名だけで判断せず、必ず区分番号(J001-10)とセットで確認するようにしてください。
みらい(新人医療事務)
他にも似たテーマの加算ってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトでは、難治性の皮膚潰瘍に関連する加算として重症皮膚潰瘍管理加算も収録しています。こちらは区分A226の入院基本料等加算で、静脈圧迫処置とは算定要件も対象領域も異なりますが、皮膚潰瘍のケアに関わる加算を横断的に把握したい場合の参考にしてください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、令和8年度の改定で新しくできたものなんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、新設ではありません。令和2年度の疑義解釈資料の中で、すでに区分番号「J001-10」静脈圧迫処置として言及されており、その施設基準の研修要件について質疑応答が行われています。つまり、少なくとも令和2年度時点でJ001-10という区分自体は存在していました。
改定の時系列(確認できた範囲)
- 令和2年度: 疑義解釈でJ001-10「静脈圧迫処置」の施設基準(研修要件)についての質疑が確認できる
- 令和8年度(2026年度): 告示・留意事項通知でJ001-10「静脈圧迫処置(慢性静脈不全に対するもの)」200点、注2「静脈圧迫処置初回加算」150点が確認できる
あおい(元・医療事務)
ただし、当サイトが収録している一次資料の範囲では、前回改定(令和6年度)時点の点数・算定要件との直接比較はできておらず、令和8年度改定での変更の有無は確認されていません。点数や算定要件が今回の改定で変わったかどうかを正確に知りたい場合は、「令和8年度診療報酬改定の概要」や「個別改定項目について」など、厚生労働省が公表している改定資料で確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
わかりました。「変わっていないはず」と決めつけずに、資料で確認するようにします。
あおい(元・医療事務)
その姿勢が大切です。特に施設基準や研修要件のような細かい部分は、点数が変わっていなくても運用ルールだけ更新されていることがあります。届出更新のタイミングなどで、あわせて確認しておくと安心です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や実施者の研修受講状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。実施者要件・施設基準の充足・レセプト摘要欄の記載事項を必ず自院で確認してください。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省公式資料を根拠としています。詳細な施設基準・届出手続きは、必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号・地方厚生局公開版) https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/000433602.pdf
- 令和8年度診療報酬改定に伴う施設基準の届出等について(地方厚生局) https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/000483720.pdf
- 疑義解釈資料の送付について(その1) 医科 問146(令和2年度・研修要件に関する質疑応答) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21053.html