みらい(新人医療事務)
先輩、レセプトを見ていたら「初回加算」って書かれた行があったんですけど、これって何の加算なんですか? 名前だけだと何にでも付きそうで、ちょっと不安になっちゃって。
あおい(元・医療事務)
いい着眼点ですね。ここでいう「初回加算」は、区分番号J003「局所陰圧閉鎖処置(入院)」という処置に付く注1加算のことです。入院中の患者さんに、局所陰圧閉鎖処置用の材料を初めて貼り付けたときに限って、所定点数に上乗せする加算なんですよ。
みらい(新人医療事務)
局所陰圧閉鎖処置というのは、いわゆる陰圧閉鎖療法(NPWT)のことですよね? 傷を陰圧で吸引しながら治していく処置。
あおい(元・医療事務)
そうです。褥瘡や難治性の創傷などに対して、専用の材料と陰圧維持管理装置を使って行う処置ですね。今日は、この「初回加算」に絞って、点数・対象・算定のタイミング・注意点を整理していきましょう。令和8年度(2026年度)の医科点数表がベースになります。
この加算は何のための加算?
みらい(新人医療事務)
そもそも、なんで「初回」だけ加算が付くんですか?
あおい(元・医療事務)
局所陰圧閉鎖処置(入院)を新しく開始するときは、創傷の評価や材料のセッティング、陰圧維持管理装置の準備など、通常の処置日よりも手間がかかります。その初回の負担に対応する加算、という位置づけです。厚生労働省の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)では、区分番号J003局所陰圧閉鎖処置(入院)の注1として、「注1 初回の貼付に限り、1にあっては1,690点を、2にあっては2,650点を、3にあっては3,300点を、初回加算として、それぞれ所定点数に加算する。」と定められています。
みらい(新人医療事務)
「初回の貼付に限り」ってはっきり書いてあるんですね。つまり2回目以降は付かないってことですか?
あおい(元・医療事務)
その通りです。局所陰圧閉鎖処置(入院)用の材料を、その入院で初めて貼り付けた日にだけ算定できる加算で、継続して処置を行う2日目以降には算定できません。
対象になるのはどんな場面?
みらい(新人医療事務)
具体的にどういう患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、まず大前提として「(1) 入院中の患者に対して処置を行った場合に限り算定できる。」と整理されています。つまり、外来ではなく入院中の患者さんが対象です。外来で行う局所陰圧閉鎖処置は区分番号J003-2「局所陰圧閉鎖処置(入院外)」という別の処置になり、そちらにも同額の初回加算(1,690点/2,650点/3,300点)がありますが、区分自体が別物なので、今回はあくまで「入院」の処置に付く加算として整理しますね。
みらい(新人医療事務)
入院患者さんなら誰でも対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
断定はできません。あくまで「局所陰圧閉鎖処置(入院)用材料を初めて貼付した患者さん」が対象候補で、実際に算定できるかどうかは、創傷の状態や算定要件を満たしているかを自院で確認する必要があります。
入院前に外来で算定していた場合の注意
留意事項通知には次の除外規定があります。「(6) 「注1」に規定する加算は、入院前に「J003-2」局所陰圧閉鎖処置(入院外)を算定していた患者が、引き続き入院中に局所陰圧閉鎖処置(入院)を行った場合は算定できない。」外来から入院へ切り替わったケースでは、初回加算が算定候補にならない可能性があるため、必ず確認が必要です。
点数はいくら? 区分ごとの一覧
みらい(新人医療事務)
点数、さっきの1,690点とか2,650点とか、区分によって違うんですよね? ちょっと整理したいです。
あおい(元・医療事務)
局所陰圧閉鎖処置用材料で被覆する創傷面の広さによって、基本点数と初回加算がそれぞれ3段階に分かれています。表にまとめますね。
| 区分 | 創傷面の広さ | 基本点数(1日につき) | 初回加算(初回の貼付のみ) |
|---|---|---|---|
| 1 | 100平方センチメートル未満 | 1,040点 | 1,690点 |
| 2 | 100平方センチメートル以上200平方センチメートル未満 | 1,060点 | 2,650点 |
| 3 | 200平方センチメートル以上 | 1,375点 | 3,300点 |

みらい(新人医療事務)
初回加算だけで見ると、基本点数よりも高いんですね。びっくりしました。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。初回にかかる評価や準備の手間を反映した点数設定になっています。なお、留意事項通知では「(2) 「1」から「3」までに示す範囲は、局所陰圧閉鎖処置用材料で被覆すべき創傷面の広さをいう。」「(3) 部位数にかかわらず、1日につき、所定点数により算定する。」とも示されています。複数箇所に処置を行っても、部位ごとに加算するのではなく、1日につき所定点数(と初回加算)を算定するという整理です。
施設基準・届出は必要?
みらい(新人医療事務)
この初回加算って、施設基準の届出が必要な種類の加算ですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、この初回加算に特有の施設基準や個別の届出は確認されていません。区分番号J003局所陰圧閉鎖処置(入院)自体を算定できる保険医療機関であれば、初回加算も算定候補になり得る、という位置づけです。
みらい(新人医療事務)
じゃあ届出は一切気にしなくていいんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは慎重にお願いします。「施設基準に特有の届出は確認されていない」というのは、あくまで当サイトが収録している資料の範囲での整理です。局所陰圧閉鎖処置用材料(特定保険医療材料)の使用要件や、陰圧維持管理装置の取扱いなど、周辺の要件は別にありますので、最終的には自院の届出状況と公式資料で確認してください。
算定のタイミング・回数・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定のタイミングで、他にも気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、局所陰圧閉鎖処置(入院)を算定する場合の併算定の整理です。留意事項通知には「(4) 局所陰圧閉鎖処置(入院)を算定する場合は、「J001-4」重度褥瘡処置及び「J053」皮膚科軟膏処置は併せて算定できない。「J000」創傷処置、「J000-2」下肢創傷処置又は「J001」熱傷処置は併せて算定できるが、当該処置が対象とする創傷を重複して算定できない。」と書かれています。
みらい(新人医療事務)
併算定できるものとできないものがはっきり分かれているんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。それから、初回加算とあわせて注2・注3の加算も押さえておきたいところです。「注2 初回の貼付に限り、持続洗浄を併せて実施した場合は、持続洗浄加算として、500点を所定点数に加算する。」「注3 新生児、3歳未満の乳幼児(新生児を除く。)又は3歳以上6歳未満の幼児に対して行った場合は、新生児局所陰圧閉鎖加算、乳幼児局所陰圧閉鎖加算又は幼児局所陰圧閉鎖加算として、それぞれ所定点数の100分の300、100分の100又は100分の50に相当する点数を所定点数に加算する。」という規定もあります。
みらい(新人医療事務)
注3の年齢加算は、初回加算に上乗せしてさらに加算できるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは注意が必要です。留意事項通知には「(12) 「注3」の加算における所定点数とは、「注1」及び「注2」の加算を含まない点数である。」と書かれています。つまり、注3の年齢加算(100分の300など)は、基本点数に対する割合であって、初回加算(注1)や持続洗浄加算(注2)を含んだ金額に対する割合ではない、ということです。ここは計算を誤りやすいポイントなので、レセプト担当の方は特に確認が必要です。
記録の取り漏れに注意
留意事項通知には記載義務も定められています。「(11) 初回加算を算定した日、陰圧維持管理装置として使用した機器及び本処置の医学的必要性を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。」摘要欄への記載が漏れていると、初回加算そのものが算定候補から外れてしまう可能性があります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この初回加算、前の改定から何か変わったりしたんですか?
あおい(元・医療事務)
前回改定(令和6年度)からの本加算の点数・算定要件に関する変更点は、当サイトが収録している一次資料の範囲では確認されていません(確認日: 2026年7月)。今回ご紹介した1,690点・2,650点・3,300点という金額、および算定要件は、令和8年度(2026年度)の告示・留意事項通知に基づく内容です。
みらい(新人医療事務)
「変更なし」と言い切るんじゃなくて、「確認できていない」という書き方なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。一次資料で確認できた範囲を正確にお伝えするようにしています。もし前回改定からの経緯が気になる場合は、自院で厚生労働省の告示・通知の原文を確認していただくのが確実です。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、自院で初回加算が算定候補になるか確認するには、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
だいたいこんな流れで確認するとわかりやすいですよ。
自院で確認する順番
- 入院中の患者さんに対する処置かどうかを確認する(外来の局所陰圧閉鎖処置(入院外)は対象外)
- 局所陰圧閉鎖処置用材料を、その入院で初めて貼付する日かどうかを確認する
- 入院前に外来で局所陰圧閉鎖処置(入院外)を算定していないかを確認する(算定していた場合は初回加算が算定候補にならない可能性)
- 創傷面の広さで区分1〜3のどれに該当するかを確認し、対応する初回加算の点数を確認する
- 摘要欄への記載事項(算定日・使用機器・医学的必要性)を漏れなく記録する

みらい(新人医療事務)
この順番で見ていけば、見落としが減りそうですね。
あおい(元・医療事務)
はい。特に3番目の「入院前の外来算定の有無」は見落としがちなポイントなので、忘れずにチェックしてください。
よくある取り漏れ・注意ポイント
持続洗浄加算との混同
初回加算(1,690点/2,650点/3,300点)と、持続洗浄加算(500点、注2)は別の加算です。どちらも「初回の貼付に限り」算定できる点は共通していますが、算定要件(持続洗浄を実施したかどうか)が異なるため、混同しないよう注意してください。
部位数の数え間違い
複数箇所に局所陰圧閉鎖処置を行っても、初回加算は部位ごとではなく1日につき所定点数として算定します。部位数に応じて加算を重複算定しないよう、レセプト作成時に確認してください。
紛らわしい加算に注意
みらい(新人医療事務)
名前が似ている加算で、間違えやすいものってありますか?
あおい(元・医療事務)
はい、切開創局所陰圧閉鎖処置機器加算という加算があります。こちらは区分番号K939-9の手術の加算で、手術後の縫合創に対して感染リスク低減目的のみで承認された医療機器を使用した場合の加算です。今回ご紹介したJ003局所陰圧閉鎖処置(入院)の初回加算とは、区分番号も対象となる場面もまったく異なります。名前に「局所陰圧閉鎖」と入っているために混同しやすいので、どちらの処置に対する加算なのか、まず区分番号から確認するのがおすすめです。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、みんなが気になりそうなことを聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。どうぞ。
みらい(新人医療事務)
同じ入院で、途中から創傷面の広さの区分が変わったら、初回加算はもう一度算定できますか?
あおい(元・医療事務)
初回加算は「初回の貼付に限り」という要件なので、区分が変わったからといって再度算定できるとは限りません。実際にどう扱うかは、診療内容と算定要件を踏まえて自院で確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
陰圧維持管理装置が単回使用の機器の場合も、初回加算の考え方は同じですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には、陰圧維持管理装置に単回使用の機器を使う場合の算定回数に関する定めもあります。装置の種類によって取扱いが変わる部分があるので、使用する機器の種類も含めて確認しておくと安心です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。