みらい(新人医療事務)
院長から「卵子調整加算って算定できないか確認して」って言われたんですけど、そもそも何の加算なのかよくわかっていなくて…。教えてもらえますか?
あおい(元・医療事務)
いいですよ。卵子調整加算は、体外受精・顕微授精を行う不妊治療の中で使われる加算です。令和8年度(2026年度)の診療報酬では、K917体外受精・顕微授精管理料の「注2」にあたる加算として1,000点が設定されています。名前だけだと分かりにくいですが、実際は「顕微授精のときに、受精の成功率を上げるための処置を行った場合」に算定する加算なんです。
みらい(新人医療事務)
体外受精・顕微授精管理料の一部なんですね。うちは体外受精も顕微授精もやっている不妊治療のクリニックなんですけど、これだけで判断していいものですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、まずは何の加算なのか、対象や条件を一つずつ確認していきましょう。算定候補になるかどうかは、実施している処置の内容や記録の残し方によって変わってきますよ。
卵子調整加算とはどんな加算か
みらい(新人医療事務)
そもそも「卵子活性化処理」ってどういうことをするんですか?
あおい(元・医療事務)
顕微授精は、卵子に精子を直接注入して受精させる方法です。ただ、患者さんによっては顕微授精を行っても受精しにくいケースがあります。そうしたときに、受精卵の作成の成功率を上げることを目的に卵子を活性化させる処理を追加で行うことがあり、これが卵子調整加算の対象になっています。厚生労働省の点数表には次のように書かれています。
点数表の記載(一次資料)
「2について、受精卵作成の成功率を向上させることを目的として卵子活性化処理を実施した場合は、卵子調整加算として、1,000点を所定点数に加算する。」(K917体外受精・顕微授精管理料 注2、令和8年度医科点数表)
みらい(新人医療事務)
「2について」というのがポイントなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。K917の「1」は体外受精、「2」は顕微授精を指しています。つまり卵子調整加算は顕微授精を実施した場合に対する加算で、体外受精のみを行った場合には対象になりません。ここを取り違えると算定候補の判断を誤ってしまうので、最初に確認しておきたいポイントです。

対象医療機関・対象患者/場面
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関、どんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
卵子調整加算はK917体外受精・顕微授精管理料に対する加算ですから、まずK917を算定できる医療機関であることが前提です。K917自体は、不妊症の患者さんまたはそのパートナーが次のいずれかに該当する場合に、治療計画に沿って体外受精または顕微授精と必要な医学管理を行ったときに算定します。
K917の対象患者(一次資料の要約)
卵管性不妊/男性不妊(閉塞性無精子症等)/機能性不妊/人工授精等の一般不妊治療が無効であった場合、のいずれかに該当すること。
あおい(元・医療事務)
そのうえで卵子調整加算は、留意事項通知でさらに次のように条件が定められています。
卵子調整加算の算定条件(一次資料の原文)
「注2」の卵子調整加算は、顕微授精における受精障害の既往があること等により、医師が必要と認めた場合であって、受精卵作成の成功率を向上させることを目的として実施した場合に算定する。その際、実施した医学的な理由を診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
みらい(新人医療事務)
「受精障害の既往があること等」という部分は、必ずしも既往がなくても医師が必要と判断すれば対象になり得るということですか?
あおい(元・医療事務)
条文の「等」がそのニュアンスを含んでいますが、最終的には主治医が医学的に必要と判断し、その理由を記録に残せるかどうかがポイントです。自院で算定候補にできそうか迷う場合は、この条文をそのまま診療録の記載方針に落とし込んで、医師と事務側で認識を揃えておくと安心です。
点数の整理
みらい(新人医療事務)
点数を一度整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
K917の基本点数と卵子調整加算の関係を表にするとこうなります。
| 区分 | 点数(令和8年度) | 備考 |
|---|---|---|
| 体外受精(K917の1) | 3,200点 | 卵子調整加算の対象外 |
| 顕微授精 1個の場合(K917の2イ) | 3,800点 | 卵子調整加算の対象 |
| 顕微授精 2〜5個の場合(K917の2ロ) | 5,800点 | 卵子調整加算の対象 |
| 顕微授精 6〜9個の場合(K917の2ハ) | 9,000点 | 卵子調整加算の対象 |
| 顕微授精 10個以上の場合(K917の2ニ) | 11,800点 | 卵子調整加算の対象 |
| 卵子調整加算 | +1,000点 | 顕微授精実施時、卵子活性化処理を行った場合のみ |
みらい(新人医療事務)
体外受精と顕微授精を同時に実施した場合は、また別の計算になるんでしたっけ?
あおい(元・医療事務)
はい、その場合はK917の注1が別に定められていて、体外受精の所定点数の50%と顕微授精の所定点数を合算して算定します。卵子調整加算はあくまで顕微授精部分に対する加算なので、体外受精分には乗りません。この点も摘要欄の記載と合わせて、レセプト担当の方と共有しておくとよいと思います。
施設基準・届出は必要か
みらい(新人医療事務)
卵子調整加算そのものに、施設基準や届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
卵子調整加算自体には、当サイトが確認できる範囲で独自の届出や施設基準は設けられていません。ただし、土台となるK917体外受精・顕微授精管理料には施設基準が設定されています。留意事項の中では次のように書かれています。
K917の届出に関する記載(一次資料の要約)
K917からK917-5までに掲げる手術等については、別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす場合に限り、地方厚生局長等に届け出ることを要しない。
あおい(元・医療事務)
つまり「届出書類の提出は不要」という扱いですが、「施設基準を満たしていること」自体は前提になっています。届出の手続きがないからといって基準を満たさなくてよいわけではない、という点は確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
届出が不要だからチェックしなくていい、というわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。自院がK917を算定できる体制にあるかどうかは、届出の有無ではなく施設基準の充足状況で判断する必要があります。ここは個別の届出状況によって変わるところなので、断定はできません。自院の体制について確認が必要です。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングや、他の加算との組み合わせで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、K917には卵子調整加算のほかに「新鮮精子加算」という別の加算(注3)もありますが、これは当日採取した精子を凍結せずに使用した場合の加算で、卵子調整加算とは別の条件です。両方の条件を満たせば、それぞれ別に算定候補になり得ます。
通則加算との関係(一次資料の記載)
体外受精・顕微授精管理料について、「通則8」及び「通則10」から「通則12」までの加算は適用できない、と留意事項通知に記載されています。
あおい(元・医療事務)
また、摘要欄への記載も重要です。レセプトの記載要領では、卵子調整加算を算定する際に「実施した医学的な理由」を摘要欄コード(830100603・830100604)で記載することが求められています。診療録の記載と摘要欄の記載が食い違っていると、審査で確認を求められる可能性があります。
みらい(新人医療事務)
記載を忘れると、せっかく処置をしても算定候補として整わないということですね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。処置の実施だけでなく、記録の残し方まで含めて確認しておく必要があります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、卵子調整加算に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
ここは正直にお伝えしておきたいのですが、当サイトが現時点で確認できている一次資料は令和8年度の医科点数表・留意事項通知が中心で、令和6年度時点の同項目を直接比較できる一次資料までは確認できていません。そのため「点数や算定要件が変わったかどうか」を確定的にはお伝えできません。
改定差分の確認範囲について
卵子調整加算(1,000点、K917注2)の令和6年度からの変更有無は、当サイトが保有する一次資料の範囲では確認できていません。正確な改定履歴は、厚生労働省が公表する個別改定項目の資料でご確認ください。
みらい(新人医療事務)
「変わっていない」と決めつけずに、「確認できていない」とはっきり書いてくれるのは助かります。
あおい(元・医療事務)
そこは特に慎重にしたい部分です。点数据え置きに見えても施設基準や記載要件だけ変わっている改定もあるので、確認できていないことを確認できていないと伝えるようにしています。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの場合はどう確認していけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
順番に並べると、こんな流れになります。
自院で確認する順番
- K917体外受精・顕微授精管理料を算定できる体制(施設基準を満たしているか)を確認する
- 実施したのが体外受精のみか、顕微授精を含むかを確認する(体外受精のみは対象外)
- 顕微授精において、受精障害の既往等により医師が卵子活性化処理を必要と判断したかを確認する
- 実施した医学的な理由が診療録に記載されているかを確認する
- 診療報酬明細書の摘要欄に、実施した医学的な理由が記載されているかを確認する

みらい(新人医療事務)
この順番で見ていけば、うちが算定候補になりそうか整理できそうです。
あおい(元・医療事務)
はい。届出の有無だけで判断せず、施設基準・処置内容・記録の3点を順に見ていくのがポイントです。
よくある取り漏れ
取り漏れが起きやすいポイント
顕微授精に伴って卵子活性化処理を実施していても、診療録に「実施した医学的な理由」を書かないまま摘要欄記載も省略してしまい、後から算定候補だったことに気づくケースがあります。処置と同時に記録を残す運用にしておくと取り漏れを防ぎやすくなります。
体外受精のみとの混同に注意
体外受精のみを実施した周期では卵子調整加算の対象にならないため、顕微授精を実施した周期かどうかをレセプト作成時に必ず区別する必要があります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか質問してもいいですか?
あおい(元・医療事務)
どうぞ。
みらい(新人医療事務)
卵子調整加算は、顕微授精をすれば自動的に算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、自動的にはなりません。顕微授精における受精障害の既往等により、医師が卵子活性化処理を必要と判断し、実際に処置を行った場合に限られます。単に顕微授精を実施しただけでは対象になりません。
みらい(新人医療事務)
体外受精と顕微授精を同じ周期で両方行った場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
その場合はK917注1の合算計算(体外受精の50%相当+顕微授精の所定点数)がベースになり、卵子調整加算は顕微授精部分について条件を満たしていれば加算候補になります。体外受精部分には加算されません。
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定でこの加算はどうだったんですか?
あおい(元・医療事務)
令和6年度(2024年度)時点の一次資料までは今回確認できていないため、当サイトとしては変更の有無を断定できません。前回改定との比較が必要な場合は、厚生労働省が公表している個別改定項目の資料を直接確認していただくのが確実です。
みらい(新人医療事務)
届出をしていなくても算定候補になり得るんですか?
あおい(元・医療事務)
K917自体は、施設基準を満たす場合に限り地方厚生局長等への届出を要しないという扱いです。届出書類が不要でも施設基準を満たしていることが前提になるので、届出の有無だけでなく施設基準の充足状況を確認する必要があります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する 体外受精・顕微授精管理料 のページも合わせて確認しておくと、全体像がつかみやすいと思います。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。