みらい(新人医療事務)
先輩、レセプト点検をしていたら「ストーマ合併症加算」という項目を初めて見ました。ストーマ処置の加算みたいですが、うちの外科外来でも算定候補になるものでしょうか?
あおい(元・医療事務)
いい着眼点ですね。ストーマ合併症加算は、J043-3ストーマ処置の「注4」に規定されている加算です。令和8年度(2026年度)の医科点数表では65点となっています。ただし誰にでも算定できるものではなく、対象患者と施設基準の両方を満たす必要があります。今日は一緒に整理していきましょう。
みらい(新人医療事務)
お願いします!まず、そもそもどんな場面で発生する加算なんですか?
ストーマ合併症加算とは何か
みらい(新人医療事務)
「ストーマ処置」自体は普段からよく見る項目ですが、そこに「合併症加算」がつくのは珍しい気がします。
あおい(元・医療事務)
ストーマ処置(J043-3)は、消化器ストーマまたは尿路ストーマをもつ患者に対する日常的な処置に対して算定するものです。これに加えて、ストーマそのものに合併症が生じている患者に対して、より手間のかかる処置を行った場合に上乗せされるのが「ストーマ合併症加算」です。厚生労働省の告示(診療報酬の算定方法の一部を改正する件・令和8年厚生労働省告示第69号)では、次のように定められています。
みらい(新人医療事務)
具体的にはどんな文章なんですか?
あおい(元・医療事務)
「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、ストーマ合併症を有する患者に対してストーマ処置を行った場合は、ストーマ合併症加算として、65点を加算する。」という条文です。ポイントは「施設基準に適合し、届け出た保険医療機関」であることと、「ストーマ合併症を有する患者」に対して行うことの2つです。
みらい(新人医療事務)
施設基準への届出が前提なんですね。うちがまだ届出をしていなければ、算定候補にはならないということですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。届出をしていない状態で算定してしまうと、後で査定や返戻の対象になり得ます。届出済みであれば算定候補になり得ますが、まずは自院の届出状況を確認するところから始めましょう。
点数と算定の仕組み(令和8年度)

みらい(新人医療事務)
点数の全体像を整理してもらえますか?ベースのストーマ処置と合併症加算の関係がまだつかめていません。
あおい(元・医療事務)
表にすると分かりやすいですよ。
| 区分 | 内容 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| J043-3(基本) | ストーマを1個もつ患者 | 70点 |
| J043-3(基本) | ストーマを2個以上もつ患者 | 120点 |
| 注3 | 乳幼児加算(6歳未満) | 55点 |
| 注4 | ストーマ合併症加算 | 65点 |
みらい(新人医療事務)
合併症加算は、基本の処置料に上乗せする形なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。ストーマ処置の基本点数(70点または120点)に、要件を満たす場合だけ65点が加わるイメージです。乳幼児加算は6歳未満の患者に対する別建ての注加算で、合併症加算とは適用場面が異なります。この記事では、あくまで合併症加算に絞って要件を見ていきますね。
みらい(新人医療事務)
わかりました。次は対象になる患者の条件を教えてください。
対象になる患者・医療機関
みらい(新人医療事務)
「ストーマ合併症を有する患者」とありましたが、どんな状態を指すんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知(診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について・令和8年3月5日保医発0305第6号)に、対象となる合併症が具体的に列挙されています。「『注4』に規定する加算は、以下のストーマ合併症のいずれかを有し、かつ、ストーマ合併症の重症度分類グレード2以上の患者である場合に算定する。」とした上で、次の7つが挙げられています。
みらい(新人医療事務)
7つも種類があるんですね。
あおい(元・医療事務)
ア 傍ストーマヘルニア、イ ストーマ脱出、ウ ストーマ腫瘤、エ ストーマ部瘻孔、オ ストーマ静脈瘤、カ ストーマ周囲肉芽腫、キ ストーマ周囲難治性潰瘍等、の7分類です。単に合併症の種類に当てはまるだけでなく、重症度分類でグレード2以上と判断されていることも条件になっています。
みらい(新人医療事務)
グレード判定は医師が行うものですよね。事務としては何を確認すればいいでしょうか?
あおい(元・医療事務)
診療録やカルテ記載にグレード評価の根拠が残っているかどうかを確認するのが実務上のポイントです。合併症の種類と重症度の判断そのものは医師の診療行為の範囲になりますので、事務側で断定はできません。記載が不明確な場合は、算定前に医師へ確認する運用にしておくと安心です。
みらい(新人医療事務)
対象医療機関についても教えてください。
あおい(元・医療事務)
施設基準に適合し届け出た保険医療機関であれば、診療所・病院のどちらも対象になり得ます。ただし入院患者には算定できません。告示の「注1」に「入院中の患者以外の患者に対して算定する。」と明記されているため、対象は外来患者に限られます。
対象患者の判断について
合併症の種類および重症度分類グレードの判定は医師の診療行為であり、AIやシステムが自動的に判定するものではありません。事務側で算定候補と判断する際は、必ず診療録の記載を医師とともに確認してください。
施設基準
みらい(新人医療事務)
届出が必要とのことでしたが、施設基準の中身はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の施設基準通知(基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて/特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて・令和8年3月5日保医発0305第8号)の「第57の2の4の2 ストーマ合併症加算」に、施設基準として次の2点が定められています。
みらい(新人医療事務)
2点だけなんですね。意外とシンプルです。
あおい(元・医療事務)
「(1) 関係学会から示されている指針等に基づき、当該処置が適切に実施されていること。」「(2) 排泄ケア関連領域における適切な研修を修了した常勤の看護師が配置されていること。」の2つです。届出様式は「様式49の10」を用いる、とも記載されています。
みらい(新人医療事務)
「関係学会から示されている指針」というのは具体的に何を指すんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
施設基準通知の文言では「関係学会から示されている指針等に基づき、当該処置が適切に実施されていること」とされているのみで、具体的な学会名や指針の文書名までは通知本文に記載されていません。自院の処置体制がどの学会・団体の指針に基づいているかは、院内の看護部門・医師と確認し、根拠を整理しておくとよいでしょう。
みらい(新人医療事務)
「適切な研修」の方はどうですか?
あおい(元・医療事務)
こちらは令和6年3月28日付疑義解釈(その1・問211)で具体例が示されています。「①日本看護協会の認定看護師教育課程『皮膚・排泄ケア』」「②日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会『ストーマリハビリテーション講習会』」のいずれかを修了した常勤看護師が該当するとされています。ただし研修の該当範囲は今後の疑義解釈で追加される可能性もあるため、届出前に最新の情報を確認することをおすすめします。
施設基準チェックのポイント
指針への準拠: 関係学会から示されている指針等に基づいた処置体制になっているかを確認する 研修修了看護師の配置: 排泄ケア関連領域の研修(皮膚・排泄ケア認定看護師教育課程等)を修了した常勤看護師が実際に配置されているかを確認する 届出様式: 様式49の10を用いて地方厚生局へ届け出ているかを確認する
届出の流れ
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たしていそうな場合、次に何をすればいいですか?
あおい(元・医療事務)
大まかな流れは、次のとおりです。

自院で確認する順番
- 対象患者の要件(消化器・尿路ストーマ、合併症の種類、重症度分類グレード2以上)を医師とともに確認する
- 施設基準の2要件(関係学会の指針に基づく処置、排泄ケア研修修了の常勤看護師の配置)を満たしているか確認する
- 様式49の10を用いて地方厚生局長等へ施設基準の届出を行う
- 届出受理後、要件を満たす外来患者にストーマ処置を実施した場合に算定候補とする
みらい(新人医療事務)
届出が受理されるまでは算定できない、という理解で合っていますか?
あおい(元・医療事務)
はい。施設基準の届出は、受理された時点から算定の対象になるのが基本的な考え方です。届出の詳しい手続き(提出先・添付書類等)は、地方厚生局のウェブサイトや自院が加入する審査支払機関の案内で最新の様式を確認してください。
算定時の注意点(併算定・回数制限)
みらい(新人医療事務)
算定するときに気をつけたいポイントはありますか?
あおい(元・医療事務)
大きく2つあります。1つ目は入院患者には算定できないこと。告示の「注1」で外来患者に限定されています。2つ目は、在宅寝たきり患者処置指導管理料(C109)を算定している患者との関係です。
みらい(新人医療事務)
C109とは併算定できないんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に「『C109』に掲げる在宅寝たきり患者処置指導管理料を算定している患者(これに係る薬剤料又は特定保険医療材料料のみを算定している者を含み、入院中の患者を除く。)については、ストーマ処置の費用は算定できない。」とあります。ストーマ処置そのものが算定できないため、その上に乗る合併症加算も算定対象外になります。
みらい(新人医療事務)
なるほど、土台になるストーマ処置が算定できないと、合併症加算も成立しないわけですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。回数制限については、告示・留意事項通知の範囲では「1日につき」の算定である旨が示されているのみで、月何回までといった明確な上限の記載は確認できていません。運用上の疑問がある場合は、審査支払機関に個別に確認することをおすすめします。
併算定・回数の確認について
本記事で示した併算定不可のケース(在宅寝たきり患者処置指導管理料C109)以外の組み合わせについては、一次資料の範囲では確認できていません。レセプト作成時に判断に迷う場合は、必ず審査支払機関または地方厚生局に個別確認してください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、以前からあったものなんですか?
あおい(元・医療事務)
ストーマ合併症加算は、前回改定(令和6年度)で新設された加算です。令和6年度改定直後の疑義解釈(令和6年3月28日・その1)で、施設基準の研修要件について早速質問が出ていることからも、令和6年度に新しく設けられた加算であることが分かります。
みらい(新人医療事務)
令和8年度改定では何か変わりましたか?
あおい(元・医療事務)
点数(65点)、対象となる合併症の7分類、施設基準の2要件(指針に基づく処置、研修修了看護師の配置)については、今回確認した令和8年3月5日付の告示・留意事項通知・施設基準通知の範囲では変更は確認されていません。令和6年度に新設された内容が、そのまま令和8年度に引き継がれている状態です。
改定前後の整理(令和6年度→令和8年度)
令和6年度改定: ストーマ合併症加算を新設(65点、施設基準の届出制) 令和8年度改定: 点数・対象合併症・施設基準ともに変更は確認されていません(令和8年3月5日時点の一次資料ベース)
自院で確認したいチェックリスト
みらい(新人医療事務)
ここまでの内容を、自院の状況と照らし合わせるにはどうすればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認していくとスムーズです。
自院で確認する順番
- 外来でストーマ処置を行っている患者の中に、合併症(傍ストーマヘルニア・ストーマ脱出等の7分類のいずれか)を有する方がいないか、診療録で確認する
- 該当する患者について、重症度分類グレード2以上と医師が判断しているかを確認する
- 排泄ケア関連領域の研修を修了した常勤看護師が院内に配置されているかを確認する
- 関係学会の指針に沿った処置体制になっているかを確認する
- 上記が整っていれば、様式49の10で地方厚生局長等への届出を検討する
みらい(新人医療事務)
看護師の配置状況の確認は、事務だけでは難しそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。看護部門や院内の研修受講履歴の管理部署と連携して確認するのが現実的です。体制面の判断は医療機関側で行っていただく必要があります。
よくある取り漏れ
見落としやすいポイント
入院患者への算定: 告示の注1により入院中の患者には算定できません。入院・外来の混同に注意してください C109算定患者への重複算定: 在宅寝たきり患者処置指導管理料を算定している患者には、ストーマ処置自体が算定できず、合併症加算も対象外です 届出前の算定: 施設基準の届出が受理される前に算定してしまうケースは査定・返戻の原因になります。届出状況を必ず先に確認してください
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか質問してもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。
みらい(新人医療事務)
診療所でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
施設基準に適合し届け出ていれば、診療所・病院を問わず算定候補になり得ます。医療機関の種別よりも、施設基準(指針に基づく処置、研修修了の常勤看護師の配置)を満たしているかどうかが判断のポイントです。
みらい(新人医療事務)
施設基準の「適切な研修」は、先ほどの2つ以外にも認められますか?
あおい(元・医療事務)
令和6年3月28日付疑義解釈(その1・問211)時点では「日本看護協会の認定看護師教育課程『皮膚・排泄ケア』」と「日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会『ストーマリハビリテーション講習会』」の2つが例示されていますが、これ以外の研修が今後追加で認められる可能性もあります。届出前に最新の疑義解釈・通知を確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
訪問診療でストーマ処置を行った場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
告示の注1では「入院中の患者以外の患者に対して算定する」とされており、外来患者以外(在宅患者を含む入院外の患者)への適用について、本記事で確認した資料の範囲では詳細な線引きは確認できていません。在宅医療での取扱いに疑問がある場合は、審査支払機関に個別に確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。