みらい(新人医療事務)
先輩、カルテで「人工呼吸器使用加算」という言葉を見かけたんですが、これって普段のクリニックでも算定候補になるものですか?
あおい(元・医療事務)
良い質問ですね。結論から言うと、これは外来やクリニックで使う加算ではなく、病院の「特殊疾患病棟入院料(A309)」を算定している入院患者さんが人工呼吸器を使用しているときに、1日につき加算するものなんです。令和8年度(2026年度)の診療報酬でも、この位置づけは変わっていません。
みらい(新人医療事務)
特殊疾患病棟...うちの診療所にはない病棟です。ということは対象外かもしれないですか?
あおい(元・医療事務)
そうですね。人工呼吸器使用加算は、特殊疾患病棟入院料を届け出ている病院の入院患者さんが対象になる加算候補です。クリニックや外来、在宅の場面では、この加算そのものは対象外の可能性が高いです。ただし在宅や外来で人工呼吸器に関連する費用を算定したい場合は、別の区分の加算になりますので、後ほど整理しますね。
人工呼吸器使用加算とはどんな加算か
みらい(新人医療事務)
そもそも「人工呼吸器使用加算」って、どういう場面でつく加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示(令和8年度医科点数表)では、区分A309「特殊疾患病棟入院料」の注2に、次のように定められています。
告示の該当条文(令和8年度)
「当該病棟に入院している患者が人工呼吸器を使用している場合は、1日につき600点を所定点数に加算する。」
あおい(元・医療事務)
つまり、特殊疾患病棟に入院している患者さんが人工呼吸器を使用している日について、基本点数に600点を上乗せできる、という仕組みです。
みらい(新人医療事務)
「特殊疾患病棟」って、具体的にはどんな患者さんが入院する病棟なんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、重度の肢体不自由児(者)や脊髄損傷等の重度の障害者、重度の意識障害者(脳卒中の後遺症を含む)、筋ジストロフィー患者、神経難病患者などが主に入院する病棟とされています。長期療養が必要な患者さんが対象なので、一般病棟とはかなり性格が違いますね。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
対象になるのは病院だけですか?
あおい(元・医療事務)
はい。人工呼吸器使用加算は、特殊疾患病棟入院料を算定している病棟の入院患者さんが対象で、病院の入院医療に限られる加算候補です。外来診療や在宅医療の場面では、この加算自体は対象外の可能性が高いです。
みらい(新人医療事務)
在宅で人工呼吸器を使っている患者さんには、別の加算があるということですね?
あおい(元・医療事務)
そうです。在宅医療の分野には在宅人工呼吸指導管理料や、機器のレンタル費用に相当する人工呼吸器加算という別の区分があります。名前が似ているので混同しやすいのですが、条文の主語(どの区分の加算か)がまったく違うので、注意して区別してくださいね。
似た名前の加算との混同に注意
「人工呼吸器使用加算(A309特殊疾患病棟入院料の注2)」と、在宅医療の「人工呼吸器加算(C164)」は、名称が似ていますが条文上まったく別の区分です。対象医療機関・対象患者・点数のいずれも異なるため、算定時は区分番号(A309か、C164か)から確認が必要です。
点数・コードを確認する
みらい(新人医療事務)
点数はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表の内容を、表にまとめてみますね。
| 区分 | 項目 | 点数 | 算定単位 |
|---|---|---|---|
| A309 注1 | 特殊疾患病棟入院料1 | 2,172点 | 1日につき |
| A309 注1 | 特殊疾患病棟入院料2 | 1,776点 | 1日につき |
| A309 注2 | 人工呼吸器使用加算 | 600点 | 1日につき(加算) |
| A309 注3 | 重症児(者)受入連携加算(参考) | 2,000点 | 入院初日のみ(加算) |
みらい(新人医療事務)
人工呼吸器使用加算は、入院基本料にあたる点数にプラスする形なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。特殊疾患病棟入院料1または2の所定点数に、人工呼吸器を使用している日だけ600点を上乗せする、という構成です。画像でも整理しておきますね。

算定できる人工呼吸器の種類と条件
みらい(新人医療事務)
「人工呼吸器を使用している場合」って、機器の種類は問わないんですか?
あおい(元・医療事務)
告示の条文自体は「人工呼吸器を使用している場合」とだけ書かれていますが、留意事項通知でもう少し具体的な運用が示されています。
留意事項通知の該当条文(令和8年度)
「特殊疾患病棟入院料を算定している患者に対して、1日5時間を超えて体外式陰圧人工呼吸器を使用した場合は、「注2」の加算を算定できる。」
みらい(新人医療事務)
体外式陰圧人工呼吸器の場合は、1日5時間を超える使用が条件になっているんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。侵襲的な人工呼吸器(気管切開や気管挿管を介したもの)を使用している場合の運用まではこの一次資料の範囲では確認できていないので、機種や使用時間の要件は、個別のケースごとに留意事項通知の原文と照らし合わせて確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
酸素や窒素を使った場合の費用はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には、「「注2」に掲げる加算を算定する際に使用した酸素及び窒素の費用は、「酸素及び窒素の価格」に定めるところによる」とあります。つまり人工呼吸器使用加算とは別建てで、酸素・窒素の価格に応じた算定になる、という整理です。
施設基準・届出はどうなっているか
みらい(新人医療事務)
施設基準はどう確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
人工呼吸器使用加算そのものに固有の施設基準は、確認できた一次資料の範囲では見当たりませんでした。ただし、この加算の前提となる特殊疾患病棟入院料(A309)には、施設基準の届出が必要です。厚生労働省の施設基準通知には、次のような要件が示されています。
特殊疾患病棟入院料の施設基準(抜粋・令和8年度)
「当該病棟に専任の医師が常勤していること」「当該病棟において、日勤時間帯以外の時間帯にあっては看護要員が常時2人以上配置されており、そのうち1名以上は看護職員であること」「当該病棟に係る病棟床面積は、患者1人につき内法による測定で、16平方メートル以上であること」
みらい(新人医療事務)
専任医師の常勤や、夜間の看護配置、病棟の床面積まで見られているんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。加えてデータ提出加算の届出も条件に含まれています。これらはA309全体の施設基準なので、人工呼吸器使用加算だけを単独で届け出る制度ではなさそうです。ただし、実際の運用や解釈は保険医療機関ごとに確認が必要な部分もあるので、届出済みの特殊疾患病棟であっても、疑問点があれば地方厚生局や審査支払機関に確認しておくと安心です。
届出状況の確認について
人工呼吸器使用加算は、特殊疾患病棟入院料(A309)の届出病棟であることが前提になっている加算候補です。自院がA309の届出を行っているか、施設基準を満たし続けているかは、必ず自院の届出台帳・地方厚生局への届出内容で確認してください。
算定タイミング・記録の注意点
みらい(新人医療事務)
算定するときに気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかポイントがあります。まず人工呼吸器使用加算は「1日につき」の加算なので、患者さんが人工呼吸器を使用した日ごとに算定を検討する形になります。そして、特殊疾患病棟は医療上特に必要な場合を除いて他病棟への患者の移動が想定されていない病棟なので、記録の面でも特有の注意が必要です。
診療報酬明細書への記載
留意事項通知では、特殊疾患病棟は「医療上特に必要がある場合に限り他の病棟への患者の移動は認められるが、その医療上の必要性について診療報酬明細書の摘要欄に詳細に記載する」とされています。人工呼吸器の使用状況についても、診療録等に記録を残しておくことが確認の基本になります。
みらい(新人医療事務)
併算定で気をつけることは何かありますか?
あおい(元・医療事務)
特殊疾患病棟入院料を算定する日に使用した投薬の薬剤料は、入院料に含まれていて別に算定できない、という規定もあります。人工呼吸器使用加算とは別の論点ですが、同じA309の枠組みの中の話としてあわせて確認しておくとよいと思います。個別の併算定可否は、レセプトの内容ごとに審査支払機関の判断が関わる部分なので、迷ったときは確認するようにしてくださいね。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から、この加算に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
今回確認できた一次資料(令和8年度の告示・留意事項通知)の範囲では、人工呼吸器使用加算そのものの点数(600点)や算定要件について、新設や変更を示す記載は見当たりませんでした。特殊疾患病棟入院料の他の注(重症児者受入連携加算など)には経過措置に関する記載もありますが、人工呼吸器使用加算の部分は同じ枠組みで運用されているとみられます。
改定差分の確認結果(2026年8月確認・厚労省一次情報ベース)
人工呼吸器使用加算(A309注2)について、前回改定からの主な変更は確認されていません。点数・算定要件とも、確認した一次資料の範囲では令和8年度も同様の記載です。
あおい(元・医療事務)
ただし、特殊疾患病棟入院料本体の医療区分の取り扱いなど、周辺の規定は改定のたびに経過措置が更新されています。関連する条文全体は、必ず最新の一次資料でご確認ください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちの病院で確認するとしたら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
こんな流れで確認していくと整理しやすいと思います。
自院で確認する順番
- 自院の病棟が特殊疾患病棟入院料(A309)の施設基準に適合し、地方厚生局長等に届け出た病棟かどうかを確認する
- 当該病棟に入院している患者さんが、人工呼吸器を使用しているかどうかを確認する
- 体外式陰圧人工呼吸器を使用している場合は、1日5時間を超える使用かどうかを確認する
- 人工呼吸器の使用状況を診療録等に記録し、算定日ごとに整理する
- 届出状況・算定要件を踏まえて、算定候補になるかを整理する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
取り漏れが起きやすいポイントはありますか?
あおい(元・医療事務)
名前が似ている加算との混同が一番多いパターンだと思います。
よくある取り漏れ①
「人工呼吸器使用加算(A309特殊疾患病棟入院料)」と「人工呼吸器加算(C164・在宅医療の機器加算)」を混同し、対象外の患者や区分で算定してしまうケースです。区分番号(AかCか)を必ず確認しましょう。
よくある取り漏れ②
人工呼吸器の使用日を診療録に明確に記録していないと、後から算定根拠を示せなくなることがあります。使用開始日・使用時間(体外式陰圧人工呼吸器の場合は5時間超かどうか)を日々記録しておくことが大切です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
クリニックでも人工呼吸器を使う患者さんがいますが、この加算は関係ありますか?
あおい(元・医療事務)
人工呼吸器使用加算は、特殊疾患病棟入院料(A309)を算定している病院の入院患者さんが対象の加算候補です。クリニックでの外来診療は対象外の可能性が高いです。在宅で人工呼吸器を使用している患者さんについては、在宅人工呼吸指導管理料など別の区分をご確認ください。
みらい(新人医療事務)
人工呼吸器使用加算は毎日算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
条文上は「1日につき600点」となっているので、人工呼吸器を使用している日であれば、その日ごとに算定を検討できる加算候補です。ただし実際の算定可否は、患者さんの状態や記録の内容によって変わってきますので、自院での確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
特殊疾患病棟入院料自体の届出をしていない病院でも算定できますか?
あおい(元・医療事務)
人工呼吸器使用加算は特殊疾患病棟入院料の注2として定められているので、特殊疾患病棟入院料の届出をしていない病棟では対象外の可能性が高いです。まずは特殊疾患病棟入院料の届出状況を確認することが出発点になります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。