みらい(新人医療事務)
心臓血管外科の先生から「大網充填術加算って算定候補になるか確認しておいて」って言われたんですけど、正直これまで見たことがない加算で…どんなものなんですか?
あおい(元・医療事務)
「大網充填術加算」ですね。令和8年度の医科点数表では、区分番号K560「大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む。)」の注2に定められている加算で、17,130点です。名前のとおり、大動脈瘤の手術のときに「大網」という組織を使った処置を併せて行った場合に上乗せされる加算なんですよ。
みらい(新人医療事務)
「大網」って、お腹の中にある脂肪の膜みたいなやつですよね? それを手術でどう使うんですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。大網は血流が豊富で感染に強い組織なので、大動脈の手術部位を覆うようにして感染対策や創部の保護に使うことがあります。この加算は、感染性大動脈瘤の患者さんに対してK560大動脈瘤切除術と一緒に「有茎大網充填術」という術式を行った場合に算定候補になる、という位置づけです。
この加算はどんな加算?
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関や患者さんの範囲を教えてください。
あおい(元・医療事務)
当サイトの整理では、対象は病院かつ入院に限られていて、診療所やクリニック、外来、在宅では対象になっていません。大動脈瘤切除術そのものが入院で行う大がかりな心臓血管外科手術ですから、これは実態に沿った区分ですね。
みらい(新人医療事務)
どういう患者さんに対して行う手術なんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知(令和8年度)には、次のように記載されています。「『注2』に規定する大網充填術加算は、感染性大動脈瘤の患者に対して本手術と有茎大網充填術を併せて行った場合に算定する。」つまり、通常の大動脈瘤ではなく「感染性大動脈瘤」の患者さんに対して、K560の手術と有茎大網充填術を併せて行った場合に算定候補になる、という条件がはっきり書かれています。
みらい(新人医療事務)
「感染性」という言葉がポイントなんですね。すべての大動脈瘤切除術に大網充填術を足せば算定候補になるわけではない、と。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。感染性大動脈瘤ではないケースで大網を使う処置を行ったとしても、この注2の加算条件には当てはまらない可能性があります。手術記録・診療録に「感染性大動脈瘤」と診断された経緯が残っているかを確認することが大切です。

点数の整理(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
K560本体の点数と、この加算の点数を一覧で見たいです。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表(告示)を見ると、こうなります。K560は大動脈瘤の部位によって点数が細かく分かれていて、代表的なものを抜粋するとこの通りです。
| 区分番号 | 項目 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| K560-1 | 上行大動脈(その他のもの) | 100,200点 |
| K560-4 | 下行大動脈 | 89,250点 |
| K560-5 | 胸腹部大動脈 | 249,750点 |
| K560-6 | 腹部大動脈(分枝血管の再建を伴うもの) | 59,080点 |
| K560-7 | 腹部大動脈(その他のもの) | 52,000点 |
| 大網充填術加算(注2) | 有茎大網充填術を併せて行った場合 | 17,130点 |
みらい(新人医療事務)
つまり、大動脈瘤切除術の点数に、この17,130点が上乗せされるイメージですか?
あおい(元・医療事務)
はい、その理解で合っています。手術本体(K560)の点数に、感染性大動脈瘤の患者さんに対して有茎大網充填術を併せて行った場合だけ、大網充填術加算の17,130点が加算される、という構造です。
みらい(新人医療事務)
K560にはほかにも「心臓弁再置換術加算」という注1の加算もあるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。過去に心臓弁手術を行った患者さんに対して弁手術を行った場合の加算で、こちらは大網充填術加算とは条件も点数の考え方も別枠です。同じ告示の注書きの中に並んでいるので、注1と注2を混同しないよう区別して確認してください。
施設基準・届出は必要?
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出とか、事前に地方厚生局に何か出しておく必要ってありますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトの整理では、大網充填術加算は施設基準の届出・届出要否ともに「不要」として扱っています。当サイトが確認した公式資料の範囲でも、告示の注2には算定条件として「有茎大網充填術を併せて行った場合」「感染性大動脈瘤の患者に対して」という2点が定められているだけで、別段の施設基準や届出様式を求める記載は見当たりませんでした。
施設基準・届出は要確認
この加算そのものには施設基準の届出は不要という整理ですが、K560大動脈瘤切除術という手術自体は心臓血管外科の高度な手術であり、手術の実施に関わる別の施設基準(例えば手術医療機関としての基準等)が存在する可能性があります。この記事は大網充填術加算そのものの範囲での整理であり、術式本体側の施設基準・届出状況については自院で個別に確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
施設基準がいらないなら、条件さえ満たせばどの病院でも算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
届出が不要というだけで、感染性大動脈瘤の診断・有茎大網充填術の実施という条件そのものは満たす必要があります。届出不要=誰でも算定できる、ではない点に注意してください。
算定タイミング・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
一番大事なのは、術式の記録が「K560大動脈瘤切除術+有茎大網充填術」の組み合わせで、かつ患者さんの診断が「感染性大動脈瘤」になっているかどうかです。この3点がそろって初めて算定候補になる、という整理です。
みらい(新人医療事務)
有茎大網充填術だけを単独で行った場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
大網充填術加算はあくまでK560大動脈瘤切除術の「注2」として定められている加算なので、K560の手術と併せて行うことが前提です。有茎大網充填術が単独の術式として別区分で評価されるケースがあるかどうかは、今回確認した一次資料の範囲では明確な記載を確認できていません。個別のケースは自院で医科点数表全体を確認することをおすすめします。
感染性大動脈瘤の診断根拠を残す
留意事項通知は「感染性大動脈瘤の患者に対して」算定する加算と定めています。診療録・手術記録に、感染性大動脈瘤と判断した根拠(画像所見、血液培養結果、術中所見など)が残っているかを確認しておくと、算定候補としての説明がしやすくなります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、この加算って何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した公式資料(令和8年度の医科点数表・告示、留意事項通知)の範囲では、大網充填術加算の点数(17,130点)や算定条件を含め、前回改定(令和6年度)からの明確な変更点は確認されていません(確認日: 2026年7月・厚生労働省告示・留意事項通知ベース)。なお、当サイトは今のところ令和6年度時点の一次資料そのものは保有していないため、この整理はあくまで「令和8年度資料の中に変更を示す記載が見当たらない」という範囲での確認です。改定前後の詳細な比較が必要な場合は、厚生労働省の個別改定項目に関する資料も併せてご確認ください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちの病院で確認するとしたら、どういう順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
だいたいこの順番で確認するとスムーズですよ。
自院で確認する順番
- 実施した手術がK560大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む。)に該当するか、手術記録で確認する
- 患者さんの診断が「感染性大動脈瘤」であるか、診療録・術前検査所見で確認する
- 手術中に有茎大網充填術を併せて実施したか、手術記録・術式記載で確認する
- レセプトの記載・請求区分がK560本体+大網充填術加算(注2・17,130点)の組み合わせで整合しているか確認する
- 心臓弁再置換術加算(注1)など、K560に定められた他の加算と混同していないか確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな見落としってどんなパターンがありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかパターンがあります。
取り漏れやすいポイント
「感染性」の診断根拠の確認不足: 大動脈瘤切除術と有茎大網充填術を併せて行っていても、診療録上で「感染性大動脈瘤」と明確に診断されているかを見落とし、算定候補としての条件確認が不十分になるケース。 注1と注2の混同: 同じK560の注書きにある「心臓弁再置換術加算」(注1)と「大網充填術加算」(注2)を取り違え、条件を混同してしまうケース。 術式記載の曖昧さ: 手術記録に「大網を使用」とだけ記載され、「有茎」であるかどうかや充填術としての実施内容が明確に記載されておらず、後から確認しづらくなるケース。
みらい(新人医療事務)
心臓血管外科の手術は記録も複雑だから、区分番号と条件をセットで確認するのが大事なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。加算名だけで判断せず、必ず告示・留意事項通知の原文にある条件(感染性大動脈瘤・有茎大網充填術の併施)と照合することをおすすめします。同じ心臓血管外科領域の手術加算では、心拍動下冠動脈、大動脈バイパス移植術用機器加算のように術式区分ごとに条件が細かく分かれているものもあるので、あわせて確認しておくと取り漏れ防止につながります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
感染性大動脈瘤ではない、通常の大動脈瘤の手術で大網を使う処置をした場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には「感染性大動脈瘤の患者に対して」算定する加算と明記されているため、感染性大動脈瘤でないケースでは、この注2の算定条件には当てはまらないと考えられます。診断・術式の記録を踏まえて、自院で確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
有茎大網充填術を行ったこと自体は、どこで確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
手術記録や術式記載、麻酔記録などに術式の詳細が残っているはずなので、そこで確認するのが確実です。診療録上の記載が曖昧な場合は、執刀医・手術室スタッフに直接確認することをおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。手術の内容や診断の状況を入力すると、確認すべきポイントがはっきりしてきます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。