みらい(新人医療事務)
先生、病理の検体で「4種類以上抗体使用加算」っていうのを見かけたんですけど、これって何の加算なんですか?免疫染色って言葉もよく分からなくて…。
あおい(元・医療事務)
これは病理診断のところで出てくる加算ですね。正式には「N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製」という検査項目の「注2」に定められている加算で、令和8年度は1,200点です。確定診断のために、ひとつの臓器の標本に対して4種類以上の抗体を使って免疫染色をした場合に、所定点数へ上乗せされる仕組みです。
みらい(新人医療事務)
「4種類以上」ってところがポイントなんですね。3種類だとダメなんですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。留意事項通知には「これらの疾患が疑われる患者であっても3種類以下の抗体で免疫染色を行った場合は、当該加算は算定できない」とはっきり書かれています。3種類までは対象外で、4種類以上を使って初めて確認できる加算候補になります。
この加算は何のための加算か
みらい(新人医療事務)
まず、この加算がどんな場面で使われるのか教えてください。
あおい(元・医療事務)
N002免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製という検査には、「1 エストロジェンレセプター」から「9 その他(1臓器につき)」まで項目が並んでいます。今回の加算は、この「9」のその他区分について、確定診断のために4種類以上の抗体を使った免疫染色が必要になった場合に、所定点数へ上乗せする仕組みです。診断が難しい腫瘍などで、複数の抗体を組み合わせて調べないと確定診断にたどり着けないケースを想定した加算になります。
みらい(新人医療事務)
なるほど、単純に「たくさん検査したから加算」というより、「確定診断のためにどうしても複数の抗体が必要だった」という状況を評価するイメージですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。対象になる疾患も限定されていて、幅広い病理検査すべてに使えるわけではありません。次で具体的に見ていきましょう。
対象医療機関・対象患者/場面
みらい(新人医療事務)
対象になる患者さんはどんな方なんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、「注2」の対象患者を次のように限定しています。原発不明癌、原発性脳腫瘍、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、肺悪性腫瘍(腺癌、扁平上皮癌)、消化管間質腫瘍(GIST)、慢性腎炎、内分泌腫瘍、軟部腫瘍、皮膚の血管炎、水疱症(天疱瘡、類天疱瘡等)、悪性黒色腫、筋ジストロフィー又は筋炎が疑われる患者、です。これらの疾患が疑われていて、かつ確定診断のために4種類以上の抗体を使った免疫染色が必要だった場合が対象になります。
みらい(新人医療事務)
けっこう疾患が細かく決まっているんですね。この一覧にない疾患だと、4種類以上抗体を使っても対象外になるということですか?
あおい(元・医療事務)
公式資料に列挙されている疾患名が対象の目安になります。一覧にない疾患のケースは、そのまま加算候補にできるとは言い切れないので、個別に確認が必要です。対象医療機関については、N002免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製を実施している医療機関であれば病院・診療所を問わず候補になり得ますが、実際に院内で病理標本作製を行っているか、外部委託しているかによって整理の仕方が変わってくるので、その点も確認事項のひとつです。
対象疾患の確認ポイント
原発不明癌・原発性脳腫瘍: 確定診断が難しく複数抗体での鑑別が必要になりやすい疾患です。 悪性リンパ腫・悪性中皮腫: 病型分類のために免疫染色を重ねるケースが想定されています。 肺悪性腫瘍(腺癌・扁平上皮癌)・GIST・内分泌腫瘍・軟部腫瘍・悪性黒色腫: いずれも組織型の鑑別に複数抗体を要する代表例です。 慢性腎炎・皮膚の血管炎・水疱症(天疱瘡、類天疱瘡等)・筋ジストロフィー又は筋炎: 腫瘍以外でも対象疾患に含まれている点に注意が必要です。

点数・コード
みらい(新人医療事務)
点数を表で整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数表を表にまとめると、こうなります。
| 区分 | 内容 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| N002「9」 | その他(1臓器につき) | 400点 |
| 注2加算 | 4種類以上抗体使用加算(確定診断のために4種類以上の抗体を用いた免疫染色が必要な場合) | 1,200点 |
みらい(新人医療事務)
400点の検査に、さらに1,200点が上乗せされるということですね。ちなみにこの「注2」って、他の注とは別物なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、別の加算です。N002には「注1」もあって、こちらは 標本作製同一月実施加算 という名称で、「1 エストロジェンレセプター」と「2 プロジェステロンレセプター」を同一月に実施した場合に180点を加算するという、まったく別の仕組みです。名称が似ていて混同しやすいので、「注1」と「注2」は別の加算という点は押さえておくとよいと思います。病理診断まわりでは他にも 悪性腫瘍病理組織標本加算 のように、悪性腫瘍の診断に関連する加算がいくつかあるので、あわせて確認しておくと整理しやすいと思います。
点数区分の混同に注意
N002には「注1」(エストロジェンレセプター・プロジェステロンレセプター同一月実施の180点加算)と「注2」(今回の4種類以上抗体使用加算・1,200点)があります。どちらも同じN002に属する加算ですが、対象になる項目・要件はまったく異なるため、レセプト記載の際は取り違えないよう確認してください。
施設基準
みらい(新人医療事務)
この加算を取るために、特別な施設基準を届け出る必要はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
今回確認した告示・留意事項通知の範囲では、この加算専用の施設基準や体制要件を求める記載は見当たりません。N002免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製という検査自体を実施できる体制、つまり病理組織標本を作製し、免疫染色を行える環境があることが前提になります。
みらい(新人医療事務)
特別な届出がいらないなら、条件さえ満たせば誰でも算定候補になるということですか?
あおい(元・医療事務)
そこは慎重に考えたいところです。施設基準の届出が不要でも、算定要件(対象疾患・4種類以上の抗体を用いたこと・除外項目に該当しないこと)を満たしているかどうかは別の確認が必要です。院内で病理診断を完結できる体制か、外部の病理診断機関に委託しているかによっても、実務上の確認の仕方が変わってきますので、自院の体制を踏まえて確認してみてください。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出がいらないとして、他に届出に関する注意点はありますか?
あおい(元・医療事務)
この加算に固有の届出様式は、今回確認した公式資料の中では見当たりませんでした。ただし、病理診断に関する体制(病理診断科の有無や外部委託の状況など)によって、関連する別の加算(病理診断管理加算など)の届出状況が影響してくる場合もあります。今回の加算単独というより、自院の病理診断まわりの届出状況を一度整理しておくと安心です。
自院で確認する順番
自院で確認する順番(令和8年度)
- 対象疾患が疑われる患者か(原発不明癌、原発性脳腫瘍、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、肺悪性腫瘍(腺癌、扁平上皮癌)、消化管間質腫瘍(GIST)、慢性腎炎、内分泌腫瘍、軟部腫瘍、皮膚の血管炎、水疱症(天疱瘡、類天疱瘡等)、悪性黒色腫、筋ジストロフィー又は筋炎)かを確認する
- 確定診断のために実際に4種類以上の抗体を用いた免疫染色を行ったかをカルテ・病理報告書で確認する
- D004-2悪性腫瘍組織検査の一部区分やD006-24肺癌関連遺伝子多項目同時検査、N005-2ALK融合遺伝子標本作製など、既に算定している除外項目がないか確認する
- 上記が整理できたら、算定候補として院内のレセプト担当・医事課で最終確認する

算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定するときに気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず回数ですが、N002自体が「1臓器につき1回のみ算定」という基本ルールを持っているので、今回の「その他」区分・注2加算もこの枠の中で考える必要があります。それから、併算定できない項目が留意事項通知に明記されています。
みらい(新人医療事務)
どんな項目と一緒に算定できないんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には「次に掲げるいずれかの項目を既に算定している場合には、当該加算は算定できない」として、D004-2悪性腫瘍組織検査の「1」悪性腫瘍遺伝子検査のうち肺癌のEGFR遺伝子検査・ROS1融合遺伝子検査・ALK融合遺伝子検査・BRAF遺伝子検査(次世代シーケンシングを除く)・METex14遺伝子検査(次世代シーケンシングを除く)に関する区分、同じくBRAF遺伝子検査(次世代シーケンシング)等の処理が複雑なものの区分、D006-24肺癌関連遺伝子多項目同時検査、N005-2ALK融合遺伝子標本作製、が挙げられています。これらを既に算定している場合は、今回の加算は算定できません。
みらい(新人医療事務)
遺伝子検査系とバッティングしやすいんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。特に肺癌関連の遺伝子検査を実施しているケースでは、この除外項目に当たらないかどうかを毎回確認する習慣をつけておくと安心です。
除外項目との重複算定に注意
D004-2悪性腫瘍組織検査(肺癌のEGFR遺伝子検査等を含む区分)、D006-24肺癌関連遺伝子多項目同時検査、N005-2ALK融合遺伝子標本作製を既に算定している場合、4種類以上抗体使用加算は算定できません。レセプト作成時に既算定項目との重複がないか必ず確認してください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、今回の改定で何か変わったんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
今回当サイトが確認した公式資料(告示・留意事項通知)の範囲では、前回改定(令和6年度)からの4種類以上抗体使用加算そのものの点数・対象疾患・除外項目に関する変更は確認されていません(確認日: 2026年8月)。N002免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製という項目自体は継続して設けられている検査区分で、今回の注2加算も同じ枠組みで存在しています。
みらい(新人医療事務)
変更がないなら、これまで通りの理解で大丈夫そうですね。
あおい(元・医療事務)
基本的な仕組みは変わっていないと考えてよいと思いますが、改定のたびに細かい要件が見直されることもあるので、実際に算定する際は最新の告示・通知を都度確認する姿勢を持っておくと安心です。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな見落としってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつか挙げられます。
よくある取り漏れ
対象疾患の見落とし: 対象疾患一覧(原発不明癌、悪性リンパ腫、GIST等)に含まれているのに、病理報告書の記載だけで判断してしまい加算候補として拾えていないケース。 抗体の種類数の記録不足: 実際には4種類以上の抗体を使っているのに、カルテ・病理報告書に使用した抗体の種類数が明確に記載されておらず、後から確認できないケース。 除外項目との重複チェック漏れ: D006-24肺癌関連遺伝子多項目同時検査やN005-2ALK融合遺伝子標本作製など、既算定項目との重複確認を省略してしまうケース。
みらい(新人医療事務)
カルテへの記載が大事なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。何種類の抗体を、どの疾患の確定診断のために使ったのかが分かるように記録しておくことが、後からの確認や査定対応にもつながります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。対象疾患の該当状況や使用した抗体の種類数、既算定項目の有無を入力すると、確認すべきポイントが見えてきます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。