みらい(新人医療事務)
あおいさん、病理の会計を見ていたら「標本作製同一月実施加算」っていう聞き慣れない加算があったんですけど、これって何のための加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
これは病理診断のN002「免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製」の中の、エストロジェンレセプターとプロジェステロンレセプターという2種類の染色を同じ月に実施したときに付く加算ですよ。乳がんの検査でよく出てくる項目です。
みらい(新人医療事務)
エストロジェンレセプターとプロジェステロンレセプター、ですか。難しい名前ですね…。
あおい(元・医療事務)
略してERとPgRと呼ばれることが多いです。どちらも乳がんの病理診断で、ホルモン受容体の有無を調べるために行う免疫染色ですね。この2つを同じ月に両方実施した場合に、180点の加算が付く仕組みになっています。令和8年度(2026年度)の医科点数表でもこの取り扱いが確認できます。
この加算はどんな場面で関係するか
みらい(新人医療事務)
具体的には、どんな医療機関で関係してくる加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
病理診断を行っている医療機関全般ですね。診療所・病院のどちらでも、外来・入院を問わず対象になり得ます。ただし在宅の場面では想定されていない加算です。病理組織標本を作製し、免疫染色によってERとPgRの両方を同一月に検査した場合が対象になります。
みらい(新人医療事務)
乳がんの検査以外でも関係することはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
ER・PgRの免疫染色自体は主に乳がんの病理診断で用いられる検査項目です。ですので、この加算が関係してくるのは基本的に乳がん関連の病理組織標本作製を行っている医療機関、ということになります。自院で該当する検査があるかどうかは、まず検査オーダーの記録から確認するのが確実です。
点数・コードを整理する
みらい(新人医療事務)
点数はどのくらいになるんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、N002免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製のうち、エストロジェンレセプターが720点、プロジェステロンレセプターが690点です。この2つを同一月に実施した場合、180点が主たる病理組織標本作製の所定点数に加算されます。
| 項目 | 点数(令和8年度) | 備考 |
|---|---|---|
| 1 エストロジェンレセプター | 720点 | N002の1 |
| 2 プロジェステロンレセプター | 690点 | N002の2 |
| 同一月実施加算 | +180点 | 主たる方の所定点数に加算 |

みらい(新人医療事務)
あれ、720点と690点を両方算定した上に180点を足す、という意味ではないんですか?
あおい(元・医療事務)
そこがこの加算の分かりにくいところなんです。厚生労働省の告示本体には「1及び2の病理組織標本作製を同一月に実施した場合は、180点を主たる病理組織標本作製の所定点数に加算する」とあります。さらに実施上の留意事項通知(令和8年3月5日 保医発0305第6号)には「いずれかの主たる病理組織標本作製の所定点数及び注に規定する加算のみを算定する」という記載もあります。
みらい(新人医療事務)
つまり、720点と690点を両方合算するのではなく…?
あおい(元・医療事務)
一般的な点数表の考え方では「主たる」というのは点数が高い方を指すことが多いです。この場合であれば720点のエストロジェンレセプターの方が主たる病理組織標本作製にあたると考えられ、そこに180点を加算する、という整理になります。ただし実際の算定順序やレセプト上の記載方法は、自院のレセプトコンピュータの設定や審査支払機関の取り扱いによって確認が必要な部分ですので、断定はできません。
算定順序は自院での確認が必要です
「主たる病理組織標本作製」の扱いは、告示・留意事項通知の文言をもとにした一般的な整理であり、個別のレセプト記載順序や算定額を保証するものではありません。実際の算定にあたっては、自院のレセプトシステムまたは審査支払機関にご確認ください。
施設基準・届出は必要か
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するのに、届出とか施設基準は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、この加算について特別な施設基準や届出は定められていません。N002免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製自体を実施できる体制が前提になりますが、この同一月実施加算そのものに個別の届出要件は確認されていません。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、届出をしていなくても算定候補になるということですか?
あおい(元・医療事務)
届出が不要な項目であっても、実際に算定候補になるかどうかは検査の実施内容や診療録の記載、算定要件を満たしているかで変わってきます。届出の要否と算定できるかどうかは別の話ですので、自院で実施した検査内容が要件に合っているかを個別に確認することをおすすめします。
算定タイミング・注意点
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで気を付けることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製そのものは、方法や試薬の種類にかかわらず1臓器につき1回のみの算定です。そして、N000病理組織標本作製・N001電子顕微鏡病理組織標本作製・N002免疫染色のいずれを算定した場合でも、他の2つの項目を合わせて算定できるとされています。
みらい(新人医療事務)
月に何回もできるものではない、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。厚生労働省の資料では、N000・N001・N002・N003による診断について、診断の別や回数にかかわらず月1回に限り算定するという規定も確認できます。同一月実施加算そのものも、あくまで「同一月にERとPgRを両方実施した場合」に限られる点に注意が必要です。
取り漏れが起きやすいポイント
同一月かどうかの確認: ERとPgRの検査日が月をまたいでいないか、検査実施日を診療録や検体提出記録で確認します。 主たる病理組織標本作製の扱い: 720点・690点のどちらを主たるものとして扱うか、レセプトシステムの設定を確認しておくと算定漏れ・誤算定を防ぎやすくなります。
改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の改定から何か変わったりしたんですか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、当サイトが収録している一次資料の範囲では、前回改定(令和6年度)時点のN002同一月実施加算に関する比較データを確認できていません。令和8年度(2026年度)改定時点での点数・取り扱いは、この記事で示した内容(720点・690点・180点加算)の通りです。
みらい(新人医療事務)
変わったかどうかは分からない、ということですね。
あおい(元・医療事務)
はい、そこは正確にお伝えしたいので、断定はしません。前回改定(令和6年度)からの変更点を明確にしたい場合は、厚生労働省が公表している改定前後の点数表を直接比較していただくか、自院で契約しているレセプトソフトのベンダーに確認していただくのが確実です。
改定確認のヒント
厚生労働省の告示・留意事項通知: 令和8年度診療報酬改定に関する告示・通知のページで、N002の項目を確認できます。 レセプトソフトの改定対応情報: ベンダーが配布する改定対応資料に、前回改定からの変更点がまとめられていることがあります。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
自院がこの加算の算定候補になるか、どんな順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で見ていくとわかりやすいです。
自院で確認する順番
- 病理組織標本作製でエストロジェンレセプター(1)とプロジェステロンレセプター(2)の免疫染色を実施しているか、検査オーダーと診療録を確認する
- その2つの検査が同一月に実施されているか、実施日を確認する
- 同一月実施であれば、主たる病理組織標本作製の所定点数に180点を加算できる候補として整理する
- レセプトシステム上の算定順序・記載方法を院内または審査支払機関で確認する

みらい(新人医療事務)
この順番で見ていけば、うちの病理検査でも該当するかどうか整理できそうです。
あおい(元・医療事務)
そうですね。特に検査実施日の記録がしっかり残っているかどうかがポイントになりますので、まずはそこから確認してみてください。
病理診断の他の加算との違い
みらい(新人医療事務)
病理診断の加算って他にもいろいろありますよね。この加算とはどう違うんですか?
あおい(元・医療事務)
病理診断加算にはいくつか種類があります。たとえば特殊染色を行った場合に付く「特殊染色加算」や、液状化検体を用いた場合に付く「液状化検体細胞診加算」などです。標本作製同一月実施加算は、その中でもN002免疫染色のER・PgRの組み合わせに限定された、範囲の狭い加算という位置づけです。
| 加算名 | 主な対象 | 届出 |
|---|---|---|
| 標本作製同一月実施加算 | N002のER・PgR同一月実施 | 一次資料の範囲では届出要件は確認されていません |
| 特殊染色加算 | N000等での特殊染色併施 | 加算ごとに一次資料での確認が必要です |
| 液状化検体細胞診加算 | 液状化検体を用いた細胞診 | 加算ごとに一次資料での確認が必要です |
みらい(新人医療事務)
似たような名前の加算と混同しないように気を付けないといけないですね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。加算名だけで判断せず、対象になっている検査項目(区分番号)まで確認する習慣をつけておくと、取り漏れや誤算定を防ぎやすくなります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
ERとPgRを同じ日に実施した場合と、月内で日をずらして実施した場合で扱いは変わりますか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の資料上、この加算は「同一月に実施した場合」という条件で規定されています。同一日である必要はなく、同じ月の中であれば要件を満たす候補になると考えられますが、最終的な判断は診療内容と一次資料の照合が必要です。
みらい(新人医療事務)
HER2タンパクなど、他の項目を一緒に実施した場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
同一月実施加算はエストロジェンレセプター(1)とプロジェステロンレセプター(2)の組み合わせに限定された規定です。HER2タンパクなど他の項目を併せて実施した場合の取り扱いは、それぞれの項目の規定を個別に確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
前回改定(令和6年度)の時点でもこの加算はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは先ほどお伝えした通り、当サイトが収録している一次資料の範囲では前回改定時点の内容を確認できていません。令和8年度(2026年度)時点の内容としてこの記事の内容をご確認いただき、改定前の状況が必要な場合は厚生労働省の資料や審査支払機関に直接確認することをおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や実施した検査内容を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。