みらい(新人医療事務)
検査のレセプトを見ていたら「微小栓子シグナル加算」という名前が出てきました。150点とありますが、これはどんな検査に対する加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
良いところに気づきましたね。これは超音波検査の区分(区分番号D215 超音波検査)の中の「4 ドプラ法」の「ロ 脳動脈血流速度連続測定」という検査に対する注加算です。この検査を実施した際に、微小栓子シグナル(HITS/MES)の検出を行った場合に、150点を所定点数に加算します。令和8年度の医科点数表に基づく整理です。
みらい(新人医療事務)
HITS/MESってはじめて聞きました。何かの略ですか?
あおい(元・医療事務)
はい、微小栓子シグナル(High Intensity Transient Signals/Micro Embolic Signals)のことです。厚生労働省の告示(区分番号D215 注7)では次のように書かれています。
告示の条文(区分番号D215 注7)
「4のロについて、微小栓子シグナル(HITS/MES)の検出を行った場合は、微小栓子シグナル加算として、150点を所定点数に加算する。」
あおい(元・医療事務)
このとおり、対象になるのは「4のロ」、つまり脳動脈血流速度連続測定を実施した場合に限られます。区分番号D215の中の他の検査(血管内超音波法や胎児心エコー法など)に対する加算ではありませんので、まずこの点を押さえておくと整理しやすくなります。
みらい(新人医療事務)
「4のロ」というのは、具体的にどんな検査なんですか?
あおい(元・医療事務)
区分番号D215の「4 ドプラ法(1日につき)」には、イ・ロ・ハの3つの項目があります。表にすると次のとおりです。
| 区分 | 検査名 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| 4のイ | 胎児心音観察、末梢血管血行動態検査 | 20点 |
| 4のロ | 脳動脈血流速度連続測定 | 150点 |
| 4のハ | 脳動脈血流速度マッピング法 | 400点 |
| 4のロの注7加算 | 微小栓子シグナル加算 | 150点 |
あおい(元・医療事務)
つまり、4のロ(脳動脈血流速度連続測定)自体の点数が150点、それに加えて微小栓子シグナルの検出を行った場合に、注7として150点が上乗せされる、という構造です。要件を満たせば、両方合わせて300点になる場合がある、という整理になります。

みらい(新人医療事務)
「脳動脈血流速度連続測定」って、名前だけだと何をする検査かイメージしにくいです。
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知(区分番号D215に関する実施上の留意事項)では、この検査についてこう説明されています。
留意事項通知の条文(区分番号D215)
「『4』の『ロ』の脳動脈血流速度連続測定とは、経頭蓋骨的に連続波又はパルスドプラを用いて、ソノグラムを記録して血流の分析を行う場合をいう。」
あおい(元・医療事務)
つまり、頭蓋骨の外から超音波(連続波またはパルスドプラ)を当てて、脳の血管の血流を記録・分析する検査です。臨床の現場では「経頭蓋ドプラ検査」と呼ばれることが多い検査ですね。
みらい(新人医療事務)
「経頭蓋」という言葉、うちのクリニックで扱っている「経頭蓋磁気刺激療法」と名前が似ていて、正直ちょっと混同しそうです…。
あおい(元・医療事務)
そこは注意したいポイントです。区分番号I000-2の経頭蓋磁気刺激療法は、抗うつ剤治療で十分な効果が認められない成人のうつ病患者に対する治療(磁気刺激装置による治療)であり、区分番号もI000番台(処置・治療系)に属します。今回の微小栓子シグナル加算はあくまで区分番号D215(検査系・超音波検査)の中の「4のロ」に対する注加算であり、うつ病の治療とはまったく別の区分・別の目的の項目です。名前に「経頭蓋」という言葉が共通して含まれるだけで、区分番号も対象も別物だと整理しておくと、混同を防げます。
みらい(新人医療事務)
なるほど、区分番号からして別物なんですね。うちは診療所ですが、対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集している一次資料の範囲では、この加算は診療所・病院のどちらも対象になっており、外来・入院のいずれの場面でも算定候補になり得ます。ただし在宅の場面については、収集した資料の範囲では対象として明記されていません。実際にこの検査・加算を算定できるかどうかは、自院での検査実施体制(超音波診断装置・実施医師の判断など)を踏まえたうえで、確認が必要です。
施設基準・届出は必要?
みらい(新人医療事務)
150点の加算というと、施設基準の届出が必要になりそうなイメージがあります。
あおい(元・医療事務)
そこも大事な確認ポイントです。今回収集した告示の条文(区分番号D215 注7)を見る限り、微小栓子シグナル加算そのものについて、個別の施設基準への適合や地方厚生局への届出を条件とする記載は確認できていません。
届出の要否は自院で確認を
微小栓子シグナル加算(注7)自体に、告示上の個別施設基準・届出要件は今回確認できていません。ただし、これは「届出が一切不要」と断定できるという意味ではなく、当サイトが収集した一次資料の範囲内での確認結果です。区分番号D215超音波検査の他の項目(胎児心エコー法など)には施設基準の届出を条件とするものも含まれるため、自院が実施している検査項目全体の届出状況は、必ず自院の届出書類や地方厚生局への確認で最終確認してください。
みらい(新人医療事務)
届出が要らないなら、検査さえすれば誰でも算定候補になるということですか?
あおい(元・医療事務)
そこは慎重に言いたいところです。「届出が明記されていない」ことと「無条件で算定候補になる」ことは同じではありません。あくまで算定候補になるかどうかは、実際に4のロ(脳動脈血流速度連続測定)を実施し、かつ微小栓子シグナル(HITS/MES)の検出を行ったという事実が診療録・検査記録に残っているかどうかで判断されるものです。要確認の項目として扱うのが安全です。
併算定の注意点
みらい(新人医療事務)
同じドプラ法の中に「ハ 脳動脈血流速度マッピング法」もありましたよね。両方いっしょに行った場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは告示にはっきり書かれている、見落としやすいポイントです。
告示の条文(区分番号D215 注4)
「ドプラ法について、ロ及びハを併せて行った場合は、主たるものの所定点数のみにより算定する。」
あおい(元・医療事務)
つまり、4のロ(脳動脈血流速度連続測定)と4のハ(脳動脈血流速度マッピング法)を同じ患者に対して併せて行った場合、両方の点数を合算することはできず、主たる方の所定点数のみで算定する、という決まりです。微小栓子シグナル加算(注7)はあくまで「4のロ」に対する加算なので、主たるものがハと判断された場合に注7加算がどう扱われるかも含めて、レセプト作成の際には自院で確認しておく必要があります。
みらい(新人医療事務)
1日に何回も測定した場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
区分番号D215の「4 ドプラ法」は「1日につき」の点数として整理されている項目です。1日の中で複数回検査を実施したとしても、この区分の点数構造自体が回数ではなく1日単位で設計されているという前提を踏まえて、自院のレセプトコンピュータの設定や算定実績を確認しておくと安心です。
改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、この加算に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集している一次資料(告示・留意事項通知)の範囲では、微小栓子シグナル加算(注7・150点)および区分番号D215「4のロ 脳動脈血流速度連続測定」(150点)について、前回改定(令和6年度)からの点数・算定要件の変更は確認されていません。令和8年度改定でも同じ条文構成が維持されている、という整理になります。
前回→今回の整理(確認範囲内)
令和6年度(2024年度)改定時点: 区分番号D215「4のロ 脳動脈血流速度連続測定」150点+注7微小栓子シグナル加算150点という構成。 令和8年度(2026年度)改定: 収集した一次資料の範囲では同一の構成・点数を確認。変更点は見当たりません。
あおい(元・医療事務)
ただし、これはあくまで当サイトが収集・確認できた資料の範囲での整理です。疑義解釈や訂正通知で細かな運用が補足されている可能性もあるため、最新の告示・通知は自院でも定期的にご確認ください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちのクリニックで算定候補になるか確認したいのですが、何から見ればいいですか?
あおい(元・医療事務)
順番でいうと、こういう流れになります。
自院で確認する順番
区分番号D215「4のロ 脳動脈血流速度連続測定」を実際に実施しているか確認する 実施した検査の中で、微小栓子シグナル(HITS/MES)の検出を行ったかどうかを診療録・検査記録で確認する 同日に「4のハ 脳動脈血流速度マッピング法」も併せて実施していないか(併せて実施した場合は主たるものの点数のみで算定)を確認する 施設基準の届出書類(自院の届出台帳)を確認し、関連する届出状況に漏れがないかを確認する 上記が整理できたら、レセプトコンピュータのマスタ設定と実際の算定実績を突き合わせる

みらい(新人医療事務)
意外と、検査記録に「HITS」「MES」という言葉が残っているかどうかがカギになりそうですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。加算の算定根拠は、あくまで「微小栓子シグナルの検出を行った」という事実の記録です。検査を実施しただけでは注7の加算候補にはならず、検出の有無・記録の有無を検査担当の技師や医師と共有しておくことが取り漏れ防止につながります。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなパターンがありますか?
取り漏れ例1: 検査記録にHITS/MESの記載がない
脳動脈血流速度連続測定(4のロ)を実施していても、検査記録・診療録にHITS/MESの検出結果が明記されていないと、注7加算の算定根拠が確認できません。検査実施時点で記録様式に検出有無の記載欄を設けておくと、後から見返しやすくなります。
取り漏れ例2: 4のハとの併算定調整を見落とす
同日に脳動脈血流速度マッピング法(4のハ)も実施した場合、告示上は主たるものの点数のみで算定する決まりがあります。この調整を見落として両方の点数を別々に計上してしまうと、後日の返戻・査定の原因になり得ます。レセプトチェックの段階で、同日の4のロ・4のハの重複実施がないかを確認する運用にしておくと安心です。
関連する加算
みらい(新人医療事務)
似たような「微小」とつく検査の加算、他にもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
区分は異なりますが、冠微小循環評価加算という加算もあります。これは区分番号D206心臓カテーテル法による諸検査の注加算で、ガイドワイヤを用いた冠動脈の微小循環を評価した場合の加算です。対象になる検査も臓器も別物ですが、どちらも「検査加算」のカテゴリで、注加算として150点が設定されている点は共通しています。区分番号を混同しないよう、こちらも合わせて確認しておくと理解が深まります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後によくある疑問点も聞いておきたいです。この検査自体(脳動脈血流速度連続測定)の点数と、微小栓子シグナル加算の点数は別々に算定するんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、区分番号D215「4のロ 脳動脈血流速度連続測定」自体の点数(150点)と、注7の微小栓子シグナル加算(150点)は、それぞれ別の項目として所定点数に加算する構造です。検出を行わなかった場合は、4のロの150点のみが算定候補になります。
みらい(新人医療事務)
経頭蓋磁気刺激療法(うつ病の治療)とは全く別の加算ということでいいんですよね?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。経頭蓋磁気刺激療法(区分番号I000-2)はうつ病患者に対する治療で、抗うつ剤治療の経験があって十分な効果が認められない成人のうつ病患者に用いた場合に限り算定できる、別区分の項目です。今回の微小栓子シグナル加算(区分番号D215 注7)とは検査・治療の区分自体が異なりますので、レセプト上でも混同しないようご注意ください。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出がいらないなら、届出台帳を確認しなくても大丈夫ですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そうとは言い切れません。微小栓子シグナル加算そのものに個別の届出要件は今回確認できていませんが、同じ区分番号D215の中には届出を条件とする項目(胎児心エコー法診断加算など)も含まれています。自院がD215のどの項目を届け出ているかを台帳で確認しておくことは、引き続きお勧めします。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省の公式資料(告示)を根拠としています。詳細な算定要件・併算定調整・施設基準の最新情報は、必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(区分番号D215 超音波検査・令和8年度医科点数表) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 区分番号D215に関する実施上の留意事項通知(脳動脈血流速度連続測定の定義部分。当サイトの収録範囲では参照URLが確認できなかったため、告示本文と合わせて自院で最新版をご確認ください)
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。