みらい(新人医療事務)
先輩、療養病棟に転院してきた患者さんの入院料を計算していたら「急性期患者支援療養病床初期加算」っていう欄があるんですけど、これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
それは療養病棟入院基本料(A101)の注6に規定されている加算ですよ。急性期の病院で治療を終えて状態が落ち着いた患者さんを、療養病棟が受け入れたときに算定候補になる加算です。令和8年度(2026年度)の点数表でも同じ仕組みで規定されています。
みらい(新人医療事務)
「急性期の後方支援」みたいなイメージですか?
あおい(元・医療事務)
そうですね。急性期医療を担う病院の一般病棟から療養病棟へ患者さんを移すことで、急性期病院側は次の重症患者を受け入れやすくなります。その後方支援の役割を療養病棟側が担った場合に評価する加算、という位置づけです。ただし算定候補になるかどうかは、転院・転棟の経緯や元の病棟の種類によって細かく条件が決まっているので、順番に確認していきましょう。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
まず、どんな病棟のどんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
対象になるのは区分番号A101 療養病棟入院基本料を算定している病棟、つまり病院の療養病棟に入院している患者さんです。その中でも、次の2パターンのどちらかに当てはまる患者さんが対象になります。
みらい(新人医療事務)
2パターン、詳しく教えてください。
あおい(元・医療事務)
1つ目は、急性期医療を担う「他の」保険医療機関の一般病棟から転院してきた患者さんです。2つ目は、自院の一般病棟から療養病棟に転棟した患者さんですが、この場合は自院自体が急性期医療を担う保険医療機関であることが条件になります。
みらい(新人医療事務)
「急性期医療を担う病院の一般病棟」って、具体的にはどういう病棟を指すんですか? ここが一番あいまいそうです。
あおい(元・医療事務)
そこは公式資料に具体的な列挙があります。急性期病院一般入院基本料、急性期一般入院基本料、7対1入院基本料もしくは10対1入院基本料(特定機能病院入院基本料の一般病棟に限る、または専門病院入院基本料に限る)、地域一般入院基本料、13対1入院基本料(専門病院入院基本料に限る)のいずれかを算定している病棟、とされています。転院・転棟元の病棟がこのどれかに該当するかを、まず確認する必要があります。
| 転院・転棟元の入院基本料 | 急性期患者支援療養病床初期加算の対象になりうるか |
|---|---|
| 急性期一般入院基本料 | 対象になりうる(要件を満たす場合) |
| 7対1入院基本料 | 対象になりうる |
| 10対1入院基本料(特定機能病院・専門病院に限る) | 対象になりうる |
| 地域一般入院基本料 | 対象になりうる(注意点あり・後述) |
| 13対1入院基本料(専門病院入院基本料に限る) | 対象になりうる(注意点あり・後述) |
| 上記以外の一般病棟・療養病棟 | 資料の記載範囲では対象に含まれていません |

みらい(新人医療事務)
なるほど、元の病棟の種類がポイントなんですね。転院してきた理由とかは関係ないんですか?
あおい(元・医療事務)
転院・転棟の理由そのものより、「元の病棟が急性期医療を担う病棟に該当するか」「転院・転棟した日から起算していつまでか」が算定候補かどうかを分ける軸になります。次は点数と日数の限度を見ていきましょう。
点数・算定日数の限度
みらい(新人医療事務)
点数はいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
急性期患者支援療養病床初期加算は、1日につき300点です。転院または転棟した日から起算して14日を限度に算定候補になります。15日目以降は対象外になる、という理解です。
みらい(新人医療事務)
300点、14日限度ですね。あ、さっき別の記事で「在宅患者支援療養病床初期加算」っていう似た名前の加算も見た気がするんですが、同じものですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、それは別の加算です。名前が似ているので混同しやすいところですが、注6にはこの2つが並べて規定されています。急性期患者支援療養病床初期加算は急性期病院の一般病棟からの転院・転棟が対象で300点、在宅患者支援療養病床初期加算は自宅や介護老人保健施設、介護医療院、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム等からの入院が対象で350点です。どちらも14日を限度としますが、対象患者の起点が異なります。
| 加算名 | 対象患者の起点 | 点数(1日につき) | 限度日数 |
|---|---|---|---|
| 急性期患者支援療養病床初期加算(本記事) | 急性期医療を担う病院の一般病棟からの転院・転棟 | 300点 | 転院・転棟日から14日 |
| 在宅患者支援療養病床初期加算(別加算) | 自宅・介護老人保健施設・介護医療院・特別養護老人ホーム・軽費老人ホーム・有料老人ホーム等からの入院 | 350点 | 入院日から14日 |
みらい(新人医療事務)
点数も対象も違うから、レセプトを見るときはどっちの加算かちゃんと確認しないとダメですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。カルテ上で「どこから」入院・転棟してきた患者さんかを確認するのが、この2つを取り違えない一番の近道です。
施設基準・届出の考え方
みらい(新人医療事務)
この加算、届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
この加算自体を単独で地方厚生局に届け出る、という性質の加算ではありません。療養病棟入院基本料(A101)を算定している病棟であれば、要件を満たす患者さんについて算定候補になる仕組みです。
みらい(新人医療事務)
じゃあ届出は一切気にしなくていいんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは注意が必要です。公式資料には「地域一般入院基本料又は13対1入院基本料を算定する保険医療機関にあっては、区分番号A205 救急医療管理加算の届出を行っている場合に限るものとする」という条件が明記されています。つまり、転院・転棟元の病棟が地域一般入院基本料または13対1入院基本料(専門病院入院基本料)を算定している場合は、その病院がA205救急医療管理加算の届出を行っているかどうかが、算定候補になるかを左右します。
届出の要確認ポイント
転院・転棟元が地域一般入院基本料または13対1入院基本料(専門病院入院基本料)を算定している場合、その保険医療機関がA205救急医療管理加算の届出を行っているかどうかを確認する必要があります。届出状況は自院・相手先医療機関の届出書類で確認してください。
みらい(新人医療事務)
転院元の病院の届出状況まで見る必要があるんですね、それは知らなかったです。
あおい(元・医療事務)
転院を受け入れる側の療養病棟としては見落としやすいポイントなので、地域連携の窓口や紹介状の内容と合わせて確認しておくと安心です。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定できるタイミングと、注意しないといけないルールを教えてください。
あおい(元・医療事務)
まず日数ですが、転院または転棟した日から起算して14日を限度とします。次に、特別入院基本料を算定している場合は、この加算自体が算定候補になりません。公式資料にも「特別入院基本料を算定する場合は、当該加算は算定できない」と明記されています。
算定回数の制限
一般病棟と療養病棟が同一病院に併存する場合で、当該一般病棟から療養病棟に転棟した患者については、1回の転棟に限り算定候補になります。同じ患者が繰り返し転棟しても、その都度算定候補になるわけではない点に注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
1回だけなんですね。同じ患者さんが行ったり来たりしても毎回は取れないと。
あおい(元・医療事務)
そういうことです。また、この加算の目的そのものについても公式資料に説明があります。急性期医療の後方病床を確保することで、急性期医療と在宅での療養を支えることを目的として、療養病棟が持つ機能を評価したもの、とされています。転院・入院・転棟した日から起算して14日を限度に算定できる、という点数表の規定と合わせて理解しておくとよいと思います。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったところってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している厚生労働省の一次資料(令和8年度点数表・留意事項通知)の範囲では、急性期患者支援療養病床初期加算の点数(300点)・限度日数(14日)・対象患者の考え方について、前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません(確認日: 2026年7月時点)。
みらい(新人医療事務)
じゃあ長い間ずっと同じ仕組みなんですね。
あおい(元・医療事務)
少なくとも当サイトが確認できる範囲ではそうです。ただし改定のたびに疑義解釈や取扱いの追加が出ることもあるので、算定候補と判断した後も、最新の告示・通知を都度確認する姿勢は大切です。
改定差分は毎回確認する
点数や日数が変わっていなくても、施設基準や対象範囲の解釈が疑義解釈で補足されることがあります。「前回と同じはず」と思い込まず、算定の都度、最新の一次資料を確認する習慣をつけましょう。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、自院で確認するときはどんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
自院で確認するときは、次の順番で見ていくと分かりやすいです。
自院で確認する順番
- 患者さんが療養病棟入院基本料(A101)を算定する病棟に入院・転棟しているか確認する
- 転院・転棟元が急性期医療を担う病院の一般病棟(急性期一般入院基本料・7対1・10対1・地域一般・13対1専門病院等)に該当するか確認する
- 転院・転棟元が地域一般入院基本料または13対1入院基本料の場合、その病院がA205救急医療管理加算を届け出ているか確認する
- 転院・転棟した日から起算して14日以内かどうかを確認する
- 特別入院基本料を算定していないか、同一病院内での転棟が2回目以降でないかを確認する

みらい(新人医療事務)
この順番で見ていけば、自分でもある程度は判断できそうです。
あおい(元・医療事務)
はい。ただし最終的な判断には、紹介状や転院時の入院基本料の種類、相手先医療機関の届出状況など、書類での裏付けが必要になります。自院だけで完結しない確認項目がある点は覚えておいてください。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなパターンがありますか?
転院元の入院基本料を確認していない
紹介状に「一般病棟から転院」とだけ書かれていても、その病棟が急性期医療を担う病棟の要件(急性期一般・7対1・10対1等)に該当するかまでは確認されないまま算定漏れになるケースが考えられます。転院時のサマリーや紹介状で入院基本料の種類を確認することが大切です。
在宅患者支援療養病床初期加算と混同する
自宅や介護施設からの入院患者に急性期患者支援療養病床初期加算(300点)を誤って適用したり、逆に急性期病院からの転院患者に在宅患者支援療養病床初期加算(350点)を適用したりする取り違えが起こりやすいところです。対象患者の「起点」を必ず確認しましょう。
みらい(新人医療事務)
どちらも「確認不足」が原因になりそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。転院・転棟の経緯を示す書類を残しておくことが、算定候補かどうかを判断する土台になります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか質問してもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。
みらい(新人医療事務)
有床診療所でも同じ加算が算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
有床診療所には「有床診療所急性期患者支援療養病床初期加算」という別の加算区分が用意されています。本記事で扱っている急性期患者支援療養病床初期加算は、区分番号A101 療養病棟入院基本料(病院の療養病棟)を対象としたものです。診療所の場合は名称・限度日数(21日)が異なるため、別加算として確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出書は必要ないんですか?
あおい(元・医療事務)
この加算自体を単独で届け出る施設基準はありません。ただし、転院・転棟元が地域一般入院基本料または13対1入院基本料を算定している場合は、その病院のA205救急医療管理加算の届出状況を確認する必要がある点は先ほどお伝えしたとおりです。
みらい(新人医療事務)
15日目以降は本当に何も算定できないんですか?
あおい(元・医療事務)
この加算としては算定候補になりません。療養病棟入院基本料そのものは引き続き算定しますが、初期加算の部分は転院・転棟日から14日を過ぎると対象外になる、という理解です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。療養病棟入院基本料の基本的な仕組みは 療養病棟入院基本料(A101) の記事でも確認できますので、あわせて参考にしてください。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。