みらい(新人医療事務)
あおいさん、マスターの一覧に「麻酔医師加算」という項目があったんですけど、これって前に教えてもらった「麻酔加算」(医療観察法の指定医療機関向けのもの)と同じ加算のことですか?
あおい(元・医療事務)
似ていますが、別物です。今回の麻酔医師加算は、通常の医科診療報酬点数表にある区分番号I000「精神科電気痙攣療法」の注3に規定されている加算で、医療観察法のような特別な指定を受けていない、一般の保険医療機関でも算定候補になり得るものです。令和8年度(2026年度)の一次資料をもとに、順番に確認していきましょう。
みらい(新人医療事務)
「精神科電気痙攣療法」というと、電気けいれん療法(ECT)のことですよね?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。区分番号I000の精神科電気痙攣療法を、麻酔に従事する医師が担当した場合に、基本点数に900点を上乗せできる仕組みが麻酔医師加算です。
この加算は何のための加算ですか
みらい(新人医療事務)
まず、区分番号I000そのものがどんな点数構成になっているのか教えてください。
あおい(元・医療事務)
一次資料(医科診療報酬点数表 別表第一、令和8年度)には、次のように定められています。「I000 精神科電気痙攣療法 1 声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔を行った場合 2,800点 2 1以外の場合 150点」。全身麻酔を伴う場合は2,800点、それ以外の場合は150点という2区分です。
みらい(新人医療事務)
麻酔医師加算の900点は、どちらの区分に上乗せされるんですか?
あおい(元・医療事務)
「1」の全身麻酔を伴う場合だけです。一次資料には続けて「注3 1については、麻酔に従事する医師(麻酔科につき医療法第6条の6第1項に規定する厚生労働大臣の許可を受けた者に限る。)が麻酔を行った場合は、900点を所定点数に加算する。」と定められています。「1について」と明記されているので、150点の区分(2)には適用されません。
みらい(新人医療事務)
「厚生労働大臣の許可を受けた者」というのは、具体的にどういう医師のことですか?
あおい(元・医療事務)
医療法第6条の6第1項に基づいて、麻酔科を標榜することについて厚生労働大臣の許可を受けた医師のことです。一般に「麻酔科標榜医」と呼ばれます。麻酔を実際に担当した医師がこの許可を受けた人であれば、900点が算定候補になります。

対象になる医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
この加算は、どんな医療機関でも算定候補になり得るんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料(医科診療報酬点数表に関する事項、令和8年度)には「精神科電気痙攣療法とは、100ボルト前後の電流を頭部に短時間通電することを反復し、各種の精神症状の改善を図る療法をいい、精神科を標榜する保険医療機関において、精神科を担当する医師が行った場合に限り、1日1回に限り算定する。」とあります。精神科を標榜する保険医療機関で、精神科を担当する医師が実施した場合に限られます。
みらい(新人医療事務)
さっき話に出た医療観察法の「麻酔加算」との違いは、ここですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。医療観察法の対象になるのは、裁判所の決定により指定医療機関での医療を受けることになった対象者に限られますが、今回の麻酔医師加算は通常の精神科診療の枠組みで、精神疾患のある患者さん一般が対象になり得ます。一次資料の通則には「この部において、精神疾患とは、ICD-10(国際疾病分類)の第5章『精神および行動の障害』に該当する疾病並びに第6章に規定する『アルツハイマー病』、『てんかん』及び『睡眠障害』に該当する疾病をいう。」と定義されています。
みらい(新人医療事務)
入院と外来、どちらでも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の範囲では、入院・外来の別を明示的に区分する記載は見当たりませんでした。ただし全身麻酔を伴う処置であることから、実務上は入院管理下で実施されるケースが多いと考えられます。自院の実施体制と合わせて確認が必要です。
点数・コード
みらい(新人医療事務)
点数を表にして整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の該当箇所をそのまま表にすると、次のとおりです。
| 区分 | 内容 | 点数 |
|---|---|---|
| I000「1」 | 声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔を行った場合 | 2,800点 |
| I000「2」 | 1以外の場合 | 150点 |
| 麻酔医師加算(注3) | 「1」について、麻酔に従事する医師(麻酔科標榜許可医)が麻酔を行った場合 | +900点 |
みらい(新人医療事務)
「麻酔医師加算」という名前は、正式な区分名なんですか?
あおい(元・医療事務)
告示・留意事項通知の条文上は「注3に規定する加算」と表記されており、「麻酔医師加算」という名称そのものは条文中には出てきません。当サイトでは、社会保険診療報酬支払基金の医科診療行為マスターに登録されている名称(麻酔医師加算(厚生労働大臣の許可を受けた麻酔に従事する医師が麻酔を行った場合))をもとに、この注加算をご案内しています。
みらい(新人医療事務)
注2に「第11部に規定する麻酔に要する費用」とありますが、これは何の話ですか?
あおい(元・医療事務)
全身麻酔そのものにかかる麻酔料(医科点数表 第11部 麻酔)は、区分「1」の所定点数2,800点に含まれていて、別途の算定対象にはならないという意味です。一次資料には「2 1については、第11部に規定する麻酔に要する費用(薬剤料及び特定保険医療材料料を除く。)は所定点数に含まれるものとする。」とあります。薬剤料や特定保険医療材料料だけは、この所定点数とは別に算定の対象になります。
施設基準・届出
みらい(新人医療事務)
この900点の加算を算定するには、施設基準の届出が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料(医科診療報酬点数表に関する事項)の範囲では、麻酔医師加算そのものに対応する個別の施設基準や、地方厚生局長等への届出を求める記載は見当たりませんでした。代わりに定められているのは、記録に関する要件です。
みらい(新人医療事務)
記録の要件というと?
あおい(元・医療事務)
一次資料には「『注3』に規定する加算は、麻酔科標榜医により、質の高い麻酔が提供されることを評価するものである。当該加算を算定する場合には、当該麻酔科標榜医の氏名、麻酔前後の診察及び麻酔の内容を診療録に記載する。なお、麻酔前後の診察について記載された麻酔記録又は麻酔中の麻酔記録の診療録への添付により診療録への記載に代えることができる。」と定められています。届出の有無よりも、診療録への記載(または麻酔記録の添付)が算定の前提になっている点に注意してください。
みらい(新人医療事務)
医療機関そのものが「麻酔科」を標榜している必要はありますか?
あおい(元・医療事務)
そこは疑義解釈でも明確に説明されています。厚生労働省の疑義解釈資料(医科 問174)には「質問: 精神科電気痙攣療法の注3に規定する加算について、当該保険医療機関が麻酔科を標榜している必要があるのか。回答: 麻酔に従事する医師であればよく、当該保険医療機関は麻酔科を標榜している必要はない。」とあります。医療機関単位ではなく、実際に麻酔を担当した医師個人が麻酔科標榜の許可を受けているかどうかが問われます。
届出不要=要件不要ではない
施設基準の届出が見当たらないことは、算定要件が無いことを意味しません。麻酔担当医師の資格要件と診療録の記載要件は、届出の有無にかかわらず毎回満たす必要があります。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定できる回数に制限はありますか?
あおい(元・医療事務)
あります。一次資料には「注1 1日に1回に限り算定する。」とあり、精神科電気痙攣療法そのものが1日1回までです。麻酔医師加算も、この区分「1」を算定する回数の範囲内で上乗せされる仕組みです。
みらい(新人医療事務)
気道確保をせずに全身麻酔をした場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料には「声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔を伴った精神科電気痙攣療法を実施する場合は、当該麻酔に要する費用は所定点数に含まれ、別に算定できない。(中略)また、声門上器具又は気管挿管による気道確保が適切でないと判断した場合に、声門上器具又は気管挿管を使用せずに閉鎖式・半閉鎖式等の全身麻酔を実施した場合は、『1』の点数を算定する。」とあります。気道確保の方法にかかわらず、閉鎖式・半閉鎖式等の全身麻酔を実施した場合は区分「1」(2,800点)で算定し、麻酔医師加算の対象にもなり得ます。
みらい(新人医療事務)
併算定で注意することはありますか?
あおい(元・医療事務)
一次資料には、区分「1」を算定する場合、第11部麻酔の費用(薬剤料・特定保険医療材料料を除く)は所定点数に含まれ、別途算定できないと明記されています。麻酔科の通常の麻酔料と重複して請求しないよう、レセプト作成時に確認しておくとよいでしょう。
取り漏れやすいポイント
区分「2」(150点・全身麻酔を伴わない場合)で算定した回については、麻酔医師加算の対象外です。全身麻酔(区分「1」)で算定した回のうち、麻酔担当医師の資格要件と診療録記載を満たしている回だけを、上乗せの候補として拾い出すことが取り漏れ・過剰算定どちらの防止にもつながります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の令和6年度改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できた一次資料(医科診療報酬点数表、医科診療報酬点数表に関する事項、疑義解釈資料)の範囲では、麻酔医師加算(I000注3)の点数(900点)・算定要件・記録要件について、前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません(確認日: 2026年8月)。区分「1」の対象となる麻酔方法の表現(気道確保の方法に関する記載)についても、令和8年度時点の一次資料で確認できる内容は、疑義解釈(医科 問174・平成30年度)の解釈と矛盾なくつながっています。
前回→今回の整理
令和6年度改定・令和8年度改定のいずれの一次資料でも、麻酔医師加算の900点という金額そのものに変更は確認されていません。改定のたびに、点数据え置きでも算定要件や記録要件だけが変わるケースがあるため、実施のたびに最新の一次資料を確認する運用をおすすめします。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
自院で算定候補かどうか確認するには、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のような順番で確認するとよいでしょう。
自院で確認する順番
- 精神科を標榜する保険医療機関で、精神科を担当する医師が精神科電気痙攣療法(I000)を実施したか確認する
- 声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔(区分「1」・2,800点)で算定するケースかを確認する
- 麻酔を担当した医師が、医療法第6条の6第1項の許可を受けた麻酔科標榜医であるかを確認する
- 麻酔科標榜医の氏名・麻酔前後の診察・麻酔の内容を診療録に記載(または麻酔記録を添付)しているかを確認する
- 1日1回の算定回数制限と、第11部麻酔の費用の重複算定がないかを確認する

自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。麻酔の実施方法や担当医師の資格、診療録の記載状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する加算として、同じ第8部精神科専門療法の児童思春期精神科専門管理加算や通院・在宅精神療法(20歳未満)加算もあわせて確認しておくとよいでしょう。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。