みらい(新人医療事務)
あおいさん、マスターの一覧を見ていたら「麻酔加算」っていう加算があったんですけど、これって普通のクリニックや病院でも算定候補になるものなんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
結論から言うと、対象はかなり限定的です。この麻酔加算は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(いわゆる医療観察法)に基づいて指定を受けた指定医療機関で行う「医療観察精神科電気痙攣療法」に上乗せする加算で、一般の保険医療機関は対象になりません。令和8年度(2026年度)の一次資料をもとに、順番に確認していきましょう。
みらい(新人医療事務)
「電気痙攣療法」というと、いわゆる電気けいれん療法(ECT)のことですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。医療観察法上の入院医療で、全身麻酔下でECTを行った場合の基本点数に、麻酔を担当した医師の要件を満たすことで上乗せされるのが、この麻酔加算です。
この加算は何のための加算ですか
みらい(新人医療事務)
まず、麻酔加算そのものがどういう仕組みなのか教えてください。
あおい(元・医療事務)
一次資料(平成17年厚生労働省告示第365号、最終改正: 令和8年3月31日厚生労働省告示第146号)には、次のように定められています。「注3 麻酔に従事する医師(麻酔科につき医療法(昭和23年法律第205号)第6条の6第1項に規定する厚生労働大臣の許可を受けた者に限る。)が麻酔を行った場合は、所定点数に900点を加算する。」つまり、麻酔を担当する医師が、医療法上「麻酔科」を標榜できる許可(いわゆる麻酔科標榜許可)を厚生労働大臣から受けている場合に、基本点数へ900点を上乗せできる仕組みです。
みらい(新人医療事務)
「所定点数」というのは、何の点数のことですか?
あおい(元・医療事務)
すぐ前の条文に定められている「1 医療観察精神科電気痙攣療法 2,800点」を指しています。一次資料には「注1 声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔を行った場合に限り、1日に1回を限度として算定する。」ともあります。医療観察法上の指定医療機関で、対象者に全身麻酔下でECTを行った場合の基本点数が2,800点で、麻酔加算はそこに900点を上乗せする仕組みです。

対象になる医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
やっぱり一般のクリニックは関係ないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。一次資料の冒頭には「一 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成十五年法律第百十号。以下「法」という。)第二条第三項に規定する指定医療機関に係る医療に要する費用の額は、別表」と定められていて、この点数表全体が医療観察法上の「指定医療機関」だけに適用されるものです。医療観察法の指定を受けていない一般の病院・クリニックは、そもそも対象外です。
みらい(新人医療事務)
指定医療機関の中でも、入院と通院で分かれているんでしたよね?
あおい(元・医療事務)
はい。この麻酔加算のもとになる「医療観察精神科電気痙攣療法」は、全身麻酔と気道確保を伴う処置なので、実務上は入院医療を担う指定入院医療機関で行われるのが基本と考えられます。ただし、この項目を「指定入院医療機関に限る」と明記した条文は、当サイトが確認できた一次資料の範囲では見当たりませんでした。自院がどちらの指定区分を受けているか、実施体制と合わせて確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
対象になる患者さんは、どんな人なんですか?
あおい(元・医療事務)
医療観察法に基づいて、裁判所の決定により指定医療機関での医療を受けることになった対象者(法律上「対象者」と呼ばれる方)です。一般の精神科入院患者に対する電気けいれん療法とは、算定の枠組みが別になります。一般の医科診療報酬点数表上の「精神科電気痙攣療法」(区分番号I000)とは異なる、医療観察法専用の点数表に基づく項目である点に注意してください。
点数・コード
みらい(新人医療事務)
具体的な点数を、表にして整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の該当箇所をそのまま表にすると、次のとおりです。
| 項目 | 点数(令和8年度) | 算定単位 |
|---|---|---|
| 医療観察精神科電気痙攣療法(基本点数) | 2,800点 | 声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔を行った場合に限り、1日に1回を限度 |
| 麻酔加算(本加算) | +900点 | 麻酔に従事する医師が医療法第6条の6第1項の許可を受けた者である場合に、基本点数に加算 |
みらい(新人医療事務)
コードはどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している医科診療行為マスターの範囲では、この麻酔加算の概念に対応する個別コードとして「188011070」が割り当てられています。ただし、この加算に関する告示・通知の条文そのものの中には、この数値コードは記載されていません。実際の請求にあたっては、レセプトコンピュータや医科診療行為マスターの該当コードで確認してください。
算定できるのは基本点数に上乗せする場合のみ
麻酔加算は単独では算定できません。医療観察精神科電気痙攣療法(2,800点)を、声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔で行った場合の基本点数に対して、麻酔担当医師の要件を満たすときに900点を上乗せする仕組みです。
施設基準
みらい(新人医療事務)
施設基準はどう定められていますか?
あおい(元・医療事務)
施設基準告示(平成17年厚生労働省告示第366号、最終改正: 令和8年3月31日厚生労働省告示第147号)を確認しましたが、「第三 基本診療料及び医療観察精神科専門療法の施設基準等」には「一 医療観察法病棟入院料の注1に規定する医療観察一般病棟入院料の施設基準」「三の二 退院実績評価加算の施設基準」「十のニ 医療観察二十四時間対応体制加算の施設基準」など複数の項目が個別に列挙されている一方、医療観察精神科電気痙攣療法や麻酔加算という項目名は見当たりませんでした。つまり、この加算には病棟単位・機関単位の個別の施設基準は定められていない、というのが一次資料から確認できる範囲の事実です。
みらい(新人医療事務)
施設基準が無いなら、誰でも算定できるということですか?
あおい(元・医療事務)
そこは違います。施設基準としての届出は不要でも、算定要件そのものは告示本体(365号)の注1から注3に定められています。全身麻酔の方法(気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔)と、麻酔を担当する医師の資格(医療法上の麻酔科標榜許可を受けた医師)という2つの条件を満たして初めて、麻酔加算が算定候補になります。
麻酔加算の算定条件(一次資料ベース)
麻酔方法: 声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔で電気痙攣療法を行った場合に限られます。 担当医師の資格: 麻酔を担当する医師が、医療法第6条の6第1項に規定する厚生労働大臣の許可(いわゆる麻酔科標榜許可)を受けた者である必要があります。
届出の要否
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要ないんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、必要ありません。届出手続きの通知(障精発0331第4号、令和8年3月31日)には、様式による届出が必要な項目として受理番号を付与するリストが定められています。そこには「医療観察一般病棟入院料」「医療観察看護師7対1配置加算」「退院実績評価加算」「医療観察薬剤管理指導料」「医療観察精神科身体合併症管理加算」など多数の項目が並んでいますが、医療観察精神科電気痙攣療法や麻酔加算はこのリストに含まれていません。つまり、麻酔加算は施設基準の事前届出を前提とせず、実施のたびに告示本体の要件を満たしているかどうかで算定候補になるかが決まる仕組みです。
みらい(新人医療事務)
届出が要らない分、逆に確認が甘くなりそうで心配です。
あおい(元・医療事務)
そうですね。届出が不要だからこそ、算定のたびに「気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔で行ったか」「担当医師が麻酔科標榜許可を受けているか」の2点を、診療録で確認できる形にしておくことが大事です。

令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前の改定(令和6年度)から、何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
医療観察法の診療報酬の体系全体は、令和8年6月1日から新しい告示・通知に切り替わっています。今回確認した費用算定告示(平成17年厚生労働省告示第365号)は令和8年3月31日厚生労働省告示第146号による改正が同年6月1日から適用され、施設基準告示(平成17年厚生労働省告示第366号)も同日付の令和8年厚生労働省告示第147号で改正されています。届出手続きの通知(障精発0331第4号)についても、一次資料には「『基本診療料及び医療観察精神科専門療法の施設基準及びその届出に関する手続の取扱いについて』(令和6年3月29日障精発0329第3号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長通知)は、令和8年5月31日限りで廃止する。」と明記されていて、令和6年度版の通知は令和8年度版に置き換えられています。ただし、麻酔加算そのものの900点という点数や、医療観察精神科電気痙攣療法の2,800点という基本点数が令和6年度から変更されたかどうかは、当サイトが確認できた一次資料の範囲では特定できていません。法令・通知の体系が令和8年度版に更新されている、という点は事実として押さえておいてください。
改定に伴う実務上のポイント
令和8年6月1日以降の算定・届出は、令和8年3月31日付の告示・通知(令和8年厚生労働省告示第146号・第147号、障精発0331第4号)が根拠になります。院内の参照資料が旧年度(令和6年度)の通知のままになっていないか、事務局で確認しておくと安心です。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちの施設が算定候補かどうか、どんな順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
おおまかには次のステップで確認するとわかりやすいです。
自院で確認する順番
- 自院が医療観察法上の指定医療機関(指定入院医療機関・指定通院医療機関)としての指定を受けているかを確認する。指定を受けていない一般の病院・クリニックはこの時点で対象外の可能性が高いです。
- 対象者に対して、声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔でECTを実施したかを診療録で確認する。
- 麻酔を担当した医師が、医療法第6条の6第1項に規定する厚生労働大臣の許可(麻酔科標榜許可)を受けた医師であるかを確認する。
- 医療観察精神科電気痙攣療法の基本点数(2,800点)と麻酔加算(900点)を、1日1回の算定上限内で計上する。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
取り漏れやすいポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
麻酔加算には施設基準の届出が無いため、「基本点数(2,800点)だけを算定して、麻酔加算(900点)の上乗せを忘れる」ケースや、逆に「麻酔担当医師が標榜許可を受けていないのに加算してしまう」ケースが起こりやすいところです。また、一般の医科点数表の「精神科電気痙攣療法」(区分番号I000)と混同して、通常の届出・算定ルールで処理してしまう取り違えにも注意が必要です。
取り漏れ・誤りが起きやすい場面
加算の計上漏れ: 麻酔担当医師の要件を満たしているのに、基本点数だけで算定してしまっていないか。 担当医師の要件確認漏れ: 麻酔担当医師が医療法第6条の6第1項の許可を受けているかを、その都度確認できているか。 制度の取り違え: 一般の医科点数表上の精神科電気痙攣療法(区分番号I000)と、医療観察法専用のこの項目を混同していないか。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。