みらい(新人医療事務)
あおいさん、「退院許可申立て加算」っていう加算を見つけたんですけど、これってうちのクリニックでも算定候補になりますか?300点って書いてあって気になっていて。
あおい(元・医療事務)
結論から先にお伝えすると、これは一般の診療所や普通の病院向けの加算ではありません。「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」、いわゆる医療観察法に基づく指定入院医療機関だけが対象になる加算候補です。令和8年度(2026年度)の医療観察診療報酬改定で、算定方法告示に位置づけが明記されています。
みらい(新人医療事務)
医療観察法…なんだか聞き慣れない言葉です。うちみたいな一般の診療所は、最初から対象外の可能性が高いということですか?
あおい(元・医療事務)
その可能性が高いです。この加算は、法務省の審判を経て医療観察法上の入院決定を受けた方を受け入れる、ごく限られた指定入院医療機関の「医療観察一般病棟入院料」「医療観察地域移行支援病棟入院料」という特別な入院料に付随するものです。一般の保険医療機関のレセプトには基本的に登場しません。この記事では、対象施設の事務担当の方に向けて、一次資料の範囲で内容を整理していきますね。
この加算は何のための加算か
みらい(新人医療事務)
まず、そもそも「退院許可申立て加算」って何のための加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
医療観察法という法律には、指定入院医療機関の管理者が、入院を続ける必要がなくなったと判断したときに、地方裁判所へ「退院の許可の申立て」をしなければならないという条文があります。法第49条第1項ですね。裁判所に申立てをしてから実際に決定が出るまでには一定の期間がかかりますが、この間も病院は対象者への医療提供を続ける必要があります。その期間の医療提供を評価する仕組みの一つとして、申立て後90日を限度に1日につき300点を加算する規定が、令和8年度の算定方法告示に明記されています。
みらい(新人医療事務)
なるほど、裁判所の判断を待っている間の医療を評価する加算候補、というイメージですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし待機期間が長引いた場合には逆に減算される規定もセットになっていて、単純に「待てば待つほど加算がつく」という制度ではありません。この点は後の「算定タイミング・回数制限」のところで整理します。
対象医療機関・対象患者(要確認)
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関や患者さんについて、もう少し詳しく教えてください。
あおい(元・医療事務)
令和8年3月31日の算定方法告示(厚生労働省告示第146号)と、その実施上の留意事項通知では、対象となる病棟について次のように整理されています。
対象病棟の考え方(一次資料ベース)
- 医療観察一般病棟入院料を算定する病棟: 医療観察法上の入院決定により入院している対象者のうち、主として集中的な治療を要する者に医療を提供する病棟
- 医療観察地域移行支援病棟入院料を算定する病棟: 入院対象者のうち、主として地域移行支援を要する者に医療を提供する病棟で、社会生活能力の回復と社会参加の準備、退院後の支援体制の確立を図る病棟
みらい(新人医療事務)
どちらの病棟でも「退院許可申立て加算」の候補になり得るということですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した医科診療行為マスターの範囲では、医療観察一般病棟入院料に対応する「退院許可申立て加算(イ)」と、医療観察地域移行支援病棟入院料に対応する「退院許可申立て加算(ロ)」の2つのコードが登録されています。いずれも点数は300点です。ただし、この加算そのものは病棟区分だけで決まるものではなく、対象患者が「社会復帰期入院対象者入院医学管理料」を算定していること、かつ法第49条第1項に基づく退院許可の申立てが実際に行われていることが前提になります。個々の対象者の法的な手続き状況に依存する加算のため、必ず自院の診療録・申立て記録で確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
患者さんの法律上の手続き状況によって算定できるかどうかが変わる、ということなんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。誰が申立てをするかというと、法第49条第1項では「指定入院医療機関の管理者は…入院を継続させてこの法律による医療を行う必要があると認めることができなくなった場合は、保護観察所の長の意見を付して、直ちに、地方裁判所に対し、退院の許可の申立てをしなければならない」と定められています。つまり申立ての主体は病院の管理者で、対象者本人からの請求とは異なる手続きです。
点数・コード(令和8年度・要確認)
みらい(新人医療事務)
点数を表にして整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。令和8年度(2026年度)の算定方法告示に基づく整理です。
| 対応病棟 | 加算名(医科診療行為マスター上の名称) | 点数 | 算定単位 |
|---|---|---|---|
| 医療観察一般病棟入院料 | 退院許可申立て加算(イ) | 300点 | 1日につき |
| 医療観察地域移行支援病棟入院料 | 退院許可申立て加算(ロ) | 300点 | 1日につき |

あおい(元・医療事務)
告示本文では、社会復帰期入院対象者入院医学管理料に関する注の中で「法第49条第1項に基づく退院の許可の申立てを行った場合、当該申立ての日から起算して90日を限度として、1日につき300点を所定点数に加算する」と定められています。イ・ロどちらの病棟でも、申立て日から数えて90日以内という期間の限度は共通です。
みらい(新人医療事務)
90日を過ぎたらどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
退院許可申立て加算そのものは、申立て日から起算して90日を限度に1日300点を加算する規定です。90日を超えた場合に、申立ての状況そのものに直結した減算規定があるかどうかは、当サイトが確認した告示原文(令和8年厚生労働省告示第146号)の範囲では確認できませんでした。断定はできないため要確認としてお伝えします。混同しやすい点として、同じ注の中には、社会復帰期入院対象者入院医学管理料の算定を開始した日(他の指定入院医療機関から転院してきた場合はその転院日)を起算日とする、別の期間別減算区分(医療観察一般病棟入院料は180日超1年以内400点・1年超1年180日以内1,100点・1年180日超2年以内1,800点、医療観察地域移行支援病棟入院料は180日超1年以内300点・1年超1年180日以内700点・1年180日超2年以内1,500点)が定められています。これは退院許可申立ての90日経過とは起算日が異なる別の規定なので、混同しないよう注意してください。90日超過後の申立てに関する具体的な取扱いについては、告示原文・地方厚生局への確認をおすすめします。
点数・算定可否は必ず自院で最終確認を
上記は令和8年度の算定方法告示・実施上の留意事項通知に基づく整理ですが、個々の対象者の申立て日・決定状況によって算定候補かどうかは変わります。断定はできませんので、必ず自院の診療録・申立て記録・告示原文で確認してください。
施設基準・届出の考え方(要確認)
みらい(新人医療事務)
施設基準や届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
この加算に固有の施設基準届出は、当サイトが確認した一次資料の範囲では見当たりませんでした。前提となるのは、自院が医療観察法上の指定入院医療機関であり、かつ医療観察一般病棟入院料または医療観察地域移行支援病棟入院料を算定できる病棟を持っていることです。そのうえで、対象者が社会復帰期入院対象者入院医学管理料を算定していること、退院許可の申立てが行われていることという、患者ごとの法的手続きの状況が算定の起点になります。
みらい(新人医療事務)
施設としての届出というより、患者さんごとの手続き状況の確認が中心になるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ですので「施設基準を満たしているから自動的に算定できる」加算ではなく、「対象者の申立て日を診療録・法的書類でその都度確認する」運用が必要になる加算候補です。指定入院医療機関としての指定自体は、都道府県・地方厚生局への届出や厚生労働大臣の指定に基づくものなので、その点は自院の指定状況を人事・総務部門とあわせて確認しておくと安心です。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
大きく3点あります。
算定タイミングの確認ポイント
- 起算日: 法第49条第1項に基づく退院許可の申立てを行った日から起算します。申立て日をどう記録・確定するかが実務上のポイントです。
- 上限90日: 加算として算定できるのは申立て日から90日を限度とする期間です。90日を超えた分は加算の対象外になり、むしろ減算の区分に移行します。
- 前提となる管理料: 社会復帰期入院対象者入院医学管理料を算定している対象者が前提です。急性期・回復期の対象者には、同じ枠組みでの300点加算は確認できませんでした。
みらい(新人医療事務)
併算定については何か注意点がありますか?
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の改定と比べて何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、令和8年度医療観察診療報酬改定では、入院対象者入院医学管理料の評価体系そのものが見直されています。従来は「急性期入院対象者入院医学管理料」「回復期入院対象者入院医学管理料」「社会復帰期入院対象者入院医学管理料」という治療段階別の区分でしたが、改定後は病棟の機能によって「医療観察一般病棟入院料」と「医療観察地域移行支援病棟入院料」の2区分に再編され、それぞれの中に急性期・回復期・社会復帰期の点数が設定される形に変わりました。
改定前後の整理(事実ベース)
- 改定前: 入院対象者入院医学管理料(急性期・回復期・社会復帰期)を、指定入院医療機関共通の点数体系で算定
- 改定後(令和8年度): 医療観察一般病棟入院料/医療観察地域移行支援病棟入院料という病棟区分ごとに、急性期・回復期・社会復帰期の点数が再設定
- 退院許可の申立てからの経過日数に応じた加算・減算の規定は、改定後の算定方法告示(厚生労働省告示第146号)の注の中に、1日につき300点の加算(申立てから90日限度)として明記されている
あおい(元・医療事務)
前回改定(令和6年度)時点での申立て関連の点数の詳細な取り扱いまで完全に比較できる一次資料は、当サイトが確認した範囲では網羅できていません。今回の令和8年度改定で病棟区分・点数体系が再編されたことに伴い、退院許可申立てに関する加算の規定が現行の告示に明記されている、という事実関係の範囲でお伝えしています。詳細な新旧の異同は、貴院所轄の地方厚生局や告示原文でご確認いただくのが確実です。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちの施設に関係あるかどうか、どういう順番で確認したらいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のステップで確認してみてください。
自院で確認する順番
- 自院が医療観察法上の指定入院医療機関に指定されているかを確認する
- 対象病棟が医療観察一般病棟入院料または医療観察地域移行支援病棟入院料のいずれかを算定しているかを確認する
- 対象患者が社会復帰期入院対象者入院医学管理料を算定しているかを診療録で確認する
- 法第49条第1項に基づく退院許可の申立てが行われているか、申立て日はいつかを確認する
- 申立て日から起算して90日以内かどうかを確認し、算定候補かどうかを院内の診療報酬担当・医事課で最終確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
取り漏れやすいポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。
取り漏れやすいポイント
- 申立て日の記録漏れ: 退院許可の申立てをした日を診療録や事務記録に明確に残していないと、90日の起算日があいまいになり算定候補かどうか判断できなくなります。
- 90日超の減算区分への切り替え漏れ: 加算の90日が過ぎた後は減算の区分に切り替わるため、算定担当者間で情報共有ができていないと過大請求・過少請求のどちらにもつながりかねません。
- 急性期・回復期対象者への誤適用: この300点加算は社会復帰期入院対象者入院医学管理料が前提です。急性期・回復期の対象者に同様の加算を適用しないよう注意が必要です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。