みらい(新人医療事務)
先輩、うちの病院で「児童・思春期精神科入院医療管理料」の届出を検討しようという話が出ているんですが、これってどんな入院料なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)の診療報酬でいうと、区分番号A311-4にあたる特定入院料の一つですね。20歳未満の精神疾患を持つ患者さんを対象に、医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師などが連携して、家庭や学校とも協力しながら集中的な治療を行う病棟・治療室を評価する入院料です。
みらい(新人医療事務)
特定入院料ということは、うちみたいなクリニックでも取れるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、これは病院の特定入院料なので、診療所では算定できません。まずそこは前提として押さえておいてください。届出をした病院の病棟・病室・治療室に入院している患者さんについて算定する入院料です。
対象医療機関・対象患者を確認する
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関と患者さんについて、もう少し詳しく教えてください。
あおい(元・医療事務)
対象医療機関は、精神科を標榜している病院です。病棟または治療室を単位として届け出ます。対象患者は20歳未満の精神疾患を有する患者さんですが、精神作用物質使用による精神及び行動の障害の患者さんと、知的障害の患者さんは対象から除かれています。ここは見落としやすいポイントなので注意してください。
みらい(新人医療事務)
病室単位でも届出できるんですね。
あおい(元・医療事務)
できますが、疑義解釈で示されている考え方として、病室単位で算定する場合でも、病棟全体で児童・思春期精神科入院医療管理料の看護配置を満たす必要があるとされています。また、精神科急性期治療病棟入院料を届け出ている病棟の一部病室について、この入院料を重ねて届け出ることはできないとされています。病室単位だからといって、その病室だけ体制を整えればよいわけではない、という点は必ず確認してください。
点数はいくらか(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
気になる点数を教えてください。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の告示では、児童・思春期精神科入院医療管理料は1日につき3,144点です。これに加えて、施設基準に適合し届け出た病棟であれば、精神科養育支援体制加算として入院初日に限り300点を加算できます。
| 項目 | 点数 | 算定単位・タイミング |
|---|---|---|
| 児童・思春期精神科入院医療管理料 | 3,144点 | 1日につき |
| 精神科養育支援体制加算(注3) | 300点 | 入院初日に限り、要・別途施設基準の届出 |

みらい(新人医療事務)
精神科養育支援体制加算は自動的についてくるものではないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。これは虐待等の不適切な養育が疑われる20歳未満の精神疾患を有する患者さんへの支援体制を評価する加算で、院内に精神科養育支援チームを設置するなど、別の施設基準を満たして届け出た場合に限って算定候補になります。基本の入院料が取れているからといって、この加算も自動的に算定できるとは限らない、という点は確認が必要です。
施設基準を確認する
みらい(新人医療事務)
施設基準はどんな内容になっていますか?かなり細かそうですね。
あおい(元・医療事務)
はい、人員・病床・設備の3つの観点で確認する必要があります。厚生労働省の施設基準の通知では、次のように定められています。
施設基準の主な項目(令和8年度・保医発0305第7号)
- 病院・病棟の要件: 精神科を標榜する病院において、精神病棟又は治療室を単位とすること
- 患者構成の要件: 当該病棟又は治療室における直近1か月間の入院患者数の概ね8割以上が、20歳未満の精神疾患を有する患者(精神作用物質使用による精神及び行動の障害の患者並びに知的障害の患者を除く)であること
- 医師配置: 小児医療及び児童・思春期の精神医療の経験を有する常勤の医師が2名以上配置されており、うち1名は精神保健指定医であること
- 多職種配置: 専従の常勤の精神保健福祉士及び常勤の公認心理師がそれぞれ1名以上配置されていること
- 設備要件: 保険医療機関内に学習室が設けられていること
- 病床・区画の要件: 当該治療室の病床は30床以下であり、浴室・廊下・デイルーム・食堂・面会室・便所・学習室が、当該病棟の他の治療室とは別に設置されていること
- データ提出加算: データ提出加算に係る届出を行っている保険医療機関であること(一定の要件を満たす場合は経過措置あり)
みらい(新人医療事務)
専従の精神保健福祉士さんは、病棟の外での業務は一切できないんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは少し柔軟です。厚生労働省の施設基準通知では、当該病棟の患者に関する業務を主として行うことが前提ですが、患者さんの支援を目的として院外に付き添う場合や、業務に影響のない範囲で入棟予定・退棟後の患者さんへの支援を病棟外で行うことは差し支えないとされています。この柔軟な取扱いは令和8年度改定で新設された規定です(詳しくは後述の「改定での変更点」で説明します)。ただし「専従」であることの実質が崩れていないかは、自院で判断が難しいところなので、必ず個別に確認してください。
届出は必要か
みらい(新人医療事務)
届出は具体的にどう進めればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
児童・思春期精神科入院医療管理料の施設基準に係る届出は、様式9・様式20・様式57を用いることとされています。病棟の勤務実績表で看護要員の職種が確認できる場合は、様式20の当該看護要員の記載を省略できます。また、学習室が設けられていることが確認できる施設の平面図を添付する必要があります。
みらい(新人医療事務)
届出をしないまま算定してしまうと、どうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
届出をしないまま算定するのは過誤請求にあたります。「体制は整っているはず」という思い込みではなく、地方厚生局への届出が受理されているかどうかを必ず確認してください。届出済みであれば算定候補になりますが、届出前は算定候補にはなりません。
算定のタイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定するときに気をつけることは他にありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、算定要件に該当しない患者さんが当該病棟又は治療室に入院した場合は、区分番号A103精神病棟入院基本料の注2に規定する特別入院基本料の例により算定することとされています。つまり、対象患者に該当しなくなった時点で、この入院料をそのまま使い続けることはできません。
算定タイミングで注意したい点(令和8年度)
- 入院中に誕生日を迎えて20歳を超えた場合は、誕生日を含む月に限り引き続き算定可能とされています(その月の翌月からは対象外)
- 一旦この入院料を算定した後、病状悪化等で他の入院料を算定する病棟・病床に転棟し、その後同管理料の届出病床に再転棟した場合、同管理料を再算定することはできないとされています
- 医師事務作業補助体制加算は、50対1補助体制加算・75対1補助体制加算・100対1補助体制加算に限り、この入院料と併せて算定できるとされています
みらい(新人医療事務)
併算定できる加算とできない加算の区別も難しそうです。
あおい(元・医療事務)
そうですね。告示では、調整加算や排尿自立支援加算、一部の処置・手術・麻酔・病理診断・その他の費用などを除いて、診療に係る費用は原則この入院料に含まれるとされています。ただし、地域加算・離島加算・特定感染症患者療養環境特別加算・強度行動障害入院医療管理加算・摂食障害入院医療管理加算・口腔管理連携加算・医療安全対策加算・感染対策向上加算・患者サポート体制充実加算・報告書管理体制加算・褥瘡ハイリスク患者ケア加算・精神科救急搬送患者地域連携受入加算・データ提出加算・精神科入退院支援加算などは、別途の要件を満たせば加算候補になります。特に、この入院料を算定する病棟であることが、強度行動障害入院医療管理加算の対象病棟の条件の一つにもなっているので、あわせて確認する価値があります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から何か変わったところはありますか?
あおい(元・医療事務)
はい、1点あります。厚生労働省の「個別改定項目について」では、精神保健福祉士の病棟専従要件が見直されています。同一の精神保健福祉士による継続的な支援を推進する観点から、専従の精神保健福祉士が病棟の患者の支援を目的として院外に付き添う場合や、業務に影響のない範囲で入棟予定・退棟後の患者への支援を病棟外で行う場合には、病棟外で業務を行っても差し支えないこととされました。この見直しは精神病棟入院基本料の精神保健福祉士配置加算だけでなく、児童・思春期精神科入院医療管理料、精神療養病棟入院料(注5の精神保健福祉士配置加算)、認知症治療病棟入院料、地域移行機能強化病棟入院料にも同様に適用されると明記されています。
みらい(新人医療事務)
つまり、令和6年度まではこの病棟外業務は認められていなかった、ということですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。厚生労働省の資料では、この病棟外業務に関する規定は「改定案」欄にのみ記載され、「現行」欄には記載がありません。つまり令和8年度(2026年度)改定で新設された取扱いです。前段の「施設基準を確認する」で説明した専従精神保健福祉士の柔軟な運用は、令和8年度改定によるものと理解しておいてください。
前回改定(令和6年度)→今回(令和8年度)の変化
- 令和6年度まで: 専従の常勤精神保健福祉士は、当該病棟の患者に関する業務に主として従事するとのみ規定
- 令和8年度から: 上記に加え、患者支援を目的とした院外への付き添いや、入棟予定・退棟後の患者への病棟外での支援が明示的に認められた(児童・思春期精神科入院医療管理料の施設基準にも同様に適用)
みらい(新人医療事務)
この精神保健福祉士の要件以外にも、変わったところはありますか?
あおい(元・医療事務)
点数・対象患者・病床要件・データ提出加算の届出など、それ以外の項目については、当サイトが収録している一次資料の範囲では前回改定(令和6年度)からの変更点は確認されていません。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
情報が多いので、確認する順番を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
では、次の順番で確認していきましょう。
自院で確認する順番
- 病院の要件を確認 — 精神科を標榜する病院であり、対象とする病棟又は治療室を単位として届出できる体制か
- 患者構成を確認 — 直近1か月間の入院患者の概ね8割以上が20歳未満の精神疾患を有する患者(精神作用物質使用障害・知的障害の患者を除く)になっているか
- 医師配置を確認 — 小児医療及び思春期精神医療の経験を有する常勤医師が2名以上、うち1名が精神保健指定医であるか
- 多職種配置を確認 — 専従の常勤精神保健福祉士1名以上、常勤公認心理師1名以上が配置されているか
- 設備・病床を確認 — 学習室の設置、治療室30床以下、浴室・廊下・デイルーム等が他の治療室と別設置になっているか
- データ提出加算の届出を確認 — データ提出加算の届出を行っているか(経過措置の該当有無も含む)
- 届出書類を準備 — 様式9・様式20・様式57、必要に応じて勤務実績表・平面図を準備し、地方厚生局に届出

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな見落としも教えてください。
あおい(元・医療事務)
よくあるのは次のようなケースです。
よくある取り漏れ(令和8年度)
- 精神科養育支援体制加算の届出漏れ: 本体の入院料は届出済みでも、精神科養育支援体制加算は別の施設基準(虐待等不適切な養育が疑われる患者への支援チーム設置等)が必要なため、届出していないケースがあります
- 対象患者の範囲の誤認: 20歳未満であっても、精神作用物質使用による精神及び行動の障害の患者や知的障害の患者は対象から除かれている点を見落としがちです
- 病室単位届出時の看護配置: 病室単位で届け出る場合でも、病棟全体で看護配置基準を満たす必要があることを見落とし、病室内の人員だけで判断してしまうケース
- 転棟・再転棟時の再算定可否: 一度対象病床から転棟し、その後同じ病床に再転棟した場合に、同じ入院料を再算定できると誤解してしまうケース
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後によくある質問も聞いておきたいです。診療所でも一部だけ体制を整えれば算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、これは病院の特定入院料であり、診療所では算定できません。診療所で同様の児童・思春期精神科の診療を評価するものとしては、別の加算(外来向けの児童思春期精神科専門管理加算など)が用意されていますので、そちらの要件を別途確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
対象患者が20歳の誕生日を迎えたら、その日からすぐに算定できなくなるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、疑義解釈で示されている取扱いでは、入院中に誕生日を迎えて規定の年齢を超えた場合、誕生日を含む月に限り引き続き算定可能とされています。ただし、翌月以降も同じように算定を続けられるかは自院だけで判断せず、必ず公式資料や審査支払機関に確認してください。
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たさなくなったら、どうすればいいですか?
あおい(元・医療事務)
常勤医師の退職などで人員配置基準を満たさなくなった場合は、速やかに施設基準不適合として取り扱い、変更の届出が必要になります。「そのうち補充するから」と算定を続けてしまうと、遡って過誤請求になるリスクがあるため、人員体制の変化があった時点で確認する習慣をつけることをおすすめします。
公式資料の根拠
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省の公式資料を根拠としています。詳細な施設基準・届出手続きは、必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚生労働省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示・点数部分) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項及び基本診療料の施設基準等に関する通知(令和8年3月5日 保医発0305第6号・第7号)の内容は、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」のページから確認できます https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 診療報酬の算定方法の一部改正等に伴う告示の訂正通知 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707506.pdf
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちの病院が算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。病棟の体制や届出状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。病院向けの目安を知りたい場合は 病院向けシミュレーター もあわせて活用してみてください。関連する 精神病棟入院基本料 や 精神科入退院支援加算 も同じ精神科領域の加算として合わせて確認しておくと、届出や体制の確認漏れを見つけやすくなります。
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。人員配置や病床・設備の要件を満たしているかどうかは、必ず自院の実態と公式資料を照らし合わせてご確認ください。