みらい(新人医療事務)
あおいさん、レセプトの検査欄に「冠動脈造影加算」って項目があったんですけど、これって普通の冠動脈造影と何が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
いい質問ですね。これは単独の検査ではなくて、D206「心臓カテーテル法による諸検査」という検査に付随する加算のひとつなんです。右心カテーテルか左心カテーテルの検査をしたときに、その検査の中で冠動脈造影も行った場合に、所定点数へ上乗せする形で算定候補になります。
みらい(新人医療事務)
「上乗せ」というのは、心臓カテーテル自体の点数にプラスするということですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。令和8年度(2026年度)の医科点数表では、D206心臓カテーテル法による諸検査は、右心カテーテルが3,600点、左心カテーテルが4,000点と定められています。冠動脈造影加算は、この所定点数に1,400点を加算する仕組みです。厚生労働省の告示にも「D206 心臓カテーテル法による諸検査(一連の検査について) 1 右心カテーテル 3,600点 2 左心カテーテル 4,000点」と明記されています。
みらい(新人医療事務)
なるほど。じゃあ、冠動脈造影加算だけを単独で算定することはできないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。あくまでD206の検査を実施した上での加算という位置づけなので、単独では算定候補になりません。まずはD206の右心・左心カテーテル検査が行われているかどうかが前提になります。
対象となる医療機関・患者
みらい(新人医療事務)
この加算は診療所でも算定できるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収載している一次資料の範囲では、対象医療機関は診療所・病院の両方で、外来・入院のいずれでも対象になっています。往診・訪問診療の場面は対象になっていません。ただし、この加算はD206検査そのものが実施できる体制(循環器の検査設備・人員)が前提になるため、実際に算定候補になるかどうかは自院の検査実施体制を確認することが必要です。
みらい(新人医療事務)
患者さん側の条件はありますか?
あおい(元・医療事務)
一次資料に明記されているのは「当該検査(右心カテーテル又は左心カテーテル)に当たって冠動脈造影を行った場合」という条件です。特定の疾患名などは、この注の記載範囲では限定されていません。実際にどの患者にどの検査を行うかは、診療上の必要性に基づいて医師が判断するものです。
点数・コードの整理(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数の関係を一度整理してもらえますか?似たような加算がいくつもあって混乱しています。
あおい(元・医療事務)
D206の注2には、冠動脈造影加算を含めて複数の加算が列挙されています。それぞれ実施した手技によって名称と点数が変わる仕組みです。厚生労働省の告示では、次のようにまとめて記載されています。「当該検査に当たって、卵円孔又は欠損孔を通しての左心カテーテル検査、経中隔左心カテーテル検査(ブロッケンブロー)、伝導機能検査、ヒス束心電図、診断ペーシング、期外(早期)刺激法による測定・誘発試験、冠攣縮誘発薬物負荷試験、冠動脈造影又はガイドワイヤを用いた冠微小循環の評価を行った場合は、卵円孔・欠損孔加算、ブロッケンブロー加算、伝導機能検査加算、ヒス束心電図加算、診断ペーシング加算、期外刺激法加算、冠攣縮誘発薬物負荷試験加算、冠動脈造影加算又は冠微小循環評価加算として、それぞれ800点、2,000点、400点、400点、400点、800点、800点、1,400点又は150点を加算する、とされています。

| 実施した手技 | 加算名 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| 卵円孔・欠損孔を通しての左心カテーテル検査 | 卵円孔・欠損孔加算 | 800点 |
| 経中隔左心カテーテル検査(ブロッケンブロー) | ブロッケンブロー加算 | 2,000点 |
| 伝導機能検査 | 伝導機能検査加算 | 400点 |
| ヒス束心電図 | ヒス束心電図加算 | 400点 |
| 診断ペーシング | 診断ペーシング加算 | 400点 |
| 期外(早期)刺激法による測定・誘発試験 | 期外刺激法加算 | 800点 |
| 冠攣縮誘発薬物負荷試験 | 冠攣縮誘発薬物負荷試験加算 | 800点 |
| 冠動脈造影 | 冠動脈造影加算 | 1,400点 |
| ガイドワイヤを用いた冠微小循環の評価 | 冠微小循環評価加算 | 150点 |
みらい(新人医療事務)
こうして表にしてもらうと分かりやすいです。冠動脈造影加算は、この中では期外刺激法加算や冠攣縮誘発薬物負荷試験加算と並んで、比較的点数が大きい部類なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。当サイトでも独自のコードで管理している加算です。ただし、複数の手技を同一の検査の中で実施した場合にそれぞれの加算を合わせて算定できるかどうかは、告示のこの部分だけでは明確に読み取れません。実務では、実施した手技の記録(造影の実施記録・レポート等)に基づいて、レセプト担当者・審査支払機関の確認範囲で判断されることになりますので、複数手技を行った月は特に記録を丁寧に残すことをお勧めします。同じD206の注2に属する加算としては、冠微小循環評価加算 もあります。あわせて確認しておくと理解が深まります。
みらい(新人医療事務)
D206にはほかにも加算があるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。同じD206の注に規定されている加算として、心腔内超音波検査を行った場合の 心腔内超音波検査加算 があります。冠動脈造影加算とは対象となる手技が異なりますが、同じ検査の枠組みの中で登場する加算なので、レセプト担当の方はまとめて把握しておくと確認漏れを防ぎやすくなります。
施設基準・届出について
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要ですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した範囲では、冠動脈造影加算そのものに対する個別の施設基準の届出は求められていません。当サイトのデータでも、この加算は施設基準の届出が不要な扱いで登録されています。
みらい(新人医療事務)
届出なしでそのまま算定していいということですか?
あおい(元・医療事務)
そこは慎重に考えたいところです。冠動脈造影加算自体に届出は不要とされていても、前提となるD206の心臓カテーテル検査を実施するための院内体制(循環器の専門医・検査設備など)は自院で確認しておく必要があります。「届出が不要だから確認しなくていい」ではなく、「この加算固有の届出は不要だが、検査自体の実施体制は自院で確認すべき」という理解が正確です。
算定タイミング・回数と併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定できる回数に制限はありますか?
あおい(元・医療事務)
D206は「一連の検査について」という単位で算定するものです。厚生労働省の告示にも、次のように明記されています。「カテーテルの種類、挿入回数によらず一連として算定し、諸監視、血液ガス分析、心拍出量測定、脈圧測定、肺血流量測定、透視、造影剤注入手技、造影剤使用撮影及びエックス線診断の費用は、全て所定点数に含まれるものとする」とされています。
包括される費用に注意
造影剤注入手技・造影剤使用撮影・エックス線診断など、冠動脈造影に関連する手技・撮影の費用は、D206の所定点数(冠動脈造影加算を含む)にすべて含まれます。これらを別項目として重ねて算定することは想定されていません。
みらい(新人医療事務)
造影剤を使った撮影(E002撮影)は別に算定できないんですか?
あおい(元・医療事務)
心臓・冠動脈の造影に関するかぎり、原則として別算定にはなりません。E002撮影の告示にも「造影剤使用撮影について、心臓及び冠動脈造影を行った場合は、一連につき区分番号D206に掲げる心臓カテーテル法による諸検査の所定点数により算定するものとし」と記載されています。つまり、心臓・冠動脈造影に関する撮影費用はD206側(冠動脈造影加算を含む)でまとめて評価される仕組みで、E002として重複算定はできません。
みらい(新人医療事務)
カテーテルを何回か入れ替えても、加算は1回分しか算定できないんですか?
あおい(元・医療事務)
そうなります。「カテーテルの種類、挿入回数によらず一連として算定」とされているため、同一の一連の検査の中で複数回カテーテルを操作しても、冠動脈造影加算は一連につき1回の算定候補になります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは正直にお伝えしますね。当サイトが収載している一次資料の範囲では、令和6年度(2024年度)改定時点のD206・冠動脈造影加算に関する公式資料が確認できておらず、令和8年度(2026年度)改定での点数・要件の変更点は確認できていません(確認日: 2026年7月)。今回ご案内した1,400点、対象、包括ルールはいずれも令和8年度の一次資料に基づく現行の内容です。前回改定からの変更があったかどうかは、確定的に「変更なし」とも「変更あり」とも申し上げられない状態ですので、気になる場合は厚生局への確認や過去の点数表との突き合わせをお勧めします。
自院で確認する順番

自院で確認する順番
- D206「心臓カテーテル法による諸検査」(右心カテーテル又は左心カテーテル)を実施しているか確認する
- その検査の中で冠動脈造影を実施しているか、検査記録・レポートで確認する
- 造影剤使用撮影(E002)などを別項目で重複計上していないか、レセプト内容を確認する
- 冠動脈造影加算1,400点を、D206の所定点数に上乗せする形で算定候補として整理する
あおい(元・医療事務)
この順番であれば、前提条件から漏れなく確認できます。特に3番目の「別項目での重複計上」は見落としやすいポイントなので、レセプトチェックの際に意識してみてください。
よくある取り漏れ
取り漏れが起きやすいポイント
- 記録の不備: 冠動脈造影を実施したこと自体はカルテに書いてあっても、レセプトへの加算入力を忘れるケース
- 重複算定の誤り: 造影剤使用撮影(E002)を別途算定してしまい、包括ルールに抵触するケース
- 他の注2加算との混同: ブロッケンブロー加算や冠微小循環評価加算など、似た並びの加算と取り違えて別の点数で入力してしまうケース
逆に注意したいケース
- 冠動脈造影を実施していないのに、D206検査があったからと機械的に加算を付けてしまう入力ミス
- 右心・左心いずれのカテーテル検査も実施していないのに、単独の造影検査として誤って本加算を計上するケース
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、事務スタッフからよく聞かれそうな質問をまとめてもらえますか?
あおい(元・医療事務)
いいですね。順番に見ていきましょう。
みらい(新人医療事務)
冠動脈造影加算は、外来でも入院でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
はい、当サイトが確認した一次資料の範囲では、外来・入院いずれも対象として扱われています。ただし、実際に算定候補になるかどうかは、D206の検査自体が適切に実施・記録されているかによります。
みらい(新人医療事務)
冠攣縮誘発薬物負荷試験加算やブロッケンブロー加算と同時に算定できますか?
あおい(元・医療事務)
告示ではそれぞれ異なる手技に対応する加算として列挙されていますが、複数の手技を同一検査内で行った場合にすべてを合算できるかは、この記載範囲だけでは明確に判断できません。実施記録をもとに、個別に確認することをお勧めします。
みらい(新人医療事務)
マスターコードはどこで確認できますか?
あおい(元・医療事務)
マスターコードの具体的な数字は、レセプトコンピュータや医科診療行為マスターで最新のものをご確認ください。当サイトの記事では加算名と点数を軸にご案内しています。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省公式資料を根拠としています。詳細な点数・要件は必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)医科点数表 D206心臓カテーテル法による諸検査、E002撮影 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。D206検査の実施状況や冠動脈造影の記録を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。