みらい(新人医療事務)
病理の結果に「特殊染色加算」って書いてあるレセプトを見たんですけど、これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
特殊染色加算ですね。病理組織標本作製、点数表でいう「N000」の注に定められている加算です。通常の標本作製(染色)とは別に、特殊な染色を追加で行った場合に上乗せされる点数なんですよ。
みらい(新人医療事務)
「特殊」ってつくくらいだから、普段のとは違う染色をするってことですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。通常のH-E染色(ヘマトキシリン・エオジン染色)だけでは診断がつきにくいときに、追加でアザン染色や鉄染色などの染色を行って、より詳しく組織を調べるんです。その追加分の手間を評価しているのがこの加算になります。
対象になる医療機関・場面
みらい(新人医療事務)
診療所でも病院でも算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。この加算は入院・外来を問わず、診療所・病院のどちらでも算定候補になります。ただし在宅療養の場面には該当しません。あくまで「病理組織標本作製(N000)」を行い、そこに特殊染色を併せて行った場合が対象です。院内で標本作製をしている医療機関はもちろん、外部の衛生検査所に委託している場合でも、実施した染色の内容によって対象になるかどうかが変わってくるので確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
患者さんの病気の種類とかで対象が決まるわけじゃないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。対象患者を疾患名で絞る加算ではなく、「病理組織標本作製に特殊染色を併せて行ったかどうか」という検査手技の実施内容で決まる加算です。なので、算定候補になるかは診療録・病理検査の依頼伝票・報告書に「どの染色を行ったか」がきちんと記録されているかがポイントになります。
点数の区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、N000病理組織標本作製の注に「特殊染色を併せて行った場合は、特殊染色加算として、1臓器又は1部位ごとにそれぞれ50点を所定点数に加算する」と定められています。ポイントは、標本作製の方法によって数える単位が変わることです。
| 標本作製の方法 | 加算の単位 | 加算点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| 「1」組織切片によるもの | 1臓器につき | 50点 |
| 「2」セルブロック法によるもの | 1部位につき | 50点 |

みらい(新人医療事務)
「1臓器」と「1部位」で分かれているのは、標本の作り方が違うからなんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。組織切片による標本作製は臓器単位で数え、セルブロック法による標本作製は部位単位で数える、という整理になっています。どちらの方法で標本を作ったかは、病理検査の依頼票や報告書を見れば確認できるはずです。
回数・併算定の断定はできません
この加算そのものの点数は明確ですが、実施回数の上限や他の検査・加算との併算定の可否は、個々の実施状況によって変わり得ます。当サイトが収録している一次資料の範囲を超える細かい運用(複数臓器・複数部位を同時に行った場合の数え方など)は、レセプト作成時に審査支払機関や公式資料で個別に確認が必要です。
施設基準・届出は必要か
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するのに、届出とか施設基準とかは必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、特殊染色加算そのものに固有の施設基準の届出は求められていません。病理組織標本作製(N000)を実施できる体制があり、実際に特殊染色を併せて行っていれば、算定候補になり得るという整理です。
みらい(新人医療事務)
じゃあ届出なしでも大丈夫ってことですね!
あおい(元・医療事務)
そこは言い切れません。「届出が不要」というのは、あくまで加算に固有の届出が確認できないという意味です。病理診断そのものに関する体制や、標本作製・診断のどの部分を自院で行いどこを委託しているかによって、確認すべきポイントは医療機関ごとに変わります。届出の要否は自院の体制と合わせて必ず確認してください。
「特殊染色」とは具体的に何を指すのか
みらい(新人医療事務)
そもそも「特殊染色」って、具体的にどんな染色のことをいうんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは厚生労働省の疑義解釈でも質問が出ていて、回答が示されています。「N000病理組織標本作製の注及びN004細胞診の注3に規定する特殊染色加算について、特殊染色とは具体的に何か」という質問に対して、「アザン染色、鉄染色、グロコット染色、チール・ネルゼン染色、グラム染色、パム染色、パス染色、ギムザ染色等が該当する」と回答されています。
みらい(新人医療事務)
具体的な染色の名前が挙げられているんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。ここに挙げられている染色法が該当する、という整理です。「等」という表現もあるので、ここに挙げられていない染色法についても、実施した染色が特殊染色に該当するかどうかは、報告書に記載された染色名をもとに個別に確認したほうが安全です。
取り漏れの確認ポイント
病理検査の報告書に「アザン染色施行」「鉄染色施行」のように染色名が明記されているのに、レセプト側で特殊染色加算の算定候補として拾えていないケースがあります。標本作製の点数だけを見て、注の加算を見落とさないようにしましょう。
似た名前の加算に注意(別の区分の特殊染色加算)
みらい(新人医療事務)
「特殊染色加算」って名前、他でも見た気がするんですけど……。
あおい(元・医療事務)
いいところに気づきましたね。実は同じ「特殊染色加算」という名前の加算が、D005血液形態・機能検査という別の区分にも存在します。例えば末梢血液像(鏡検法)の注では「特殊染色を併せて行った場合は、特殊染色加算として、特殊染色ごとにそれぞれ52点を所定点数に加算する」、骨髄像の注では「特殊染色ごとにそれぞれ60点を所定点数に加算する」と定められています。
みらい(新人医療事務)
点数も違うし、単位も「特殊染色ごと」で、こっちの「1臓器・1部位ごと」とは数え方が違うんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。この記事で扱っているのはあくまでN000病理組織標本作製の注に規定された特殊染色加算(1臓器又は1部位ごとに50点)です。D005血液形態・機能検査の特殊染色加算(52点・60点)とは点数表上まったく別の区分・別の点数なので、レセプトを確認するときは「どの検査の注による加算か」を必ず確認してください。同じ名前だからといって同じ点数・同じ数え方だと思い込まないことが大切です。
みらい(新人医療事務)
N000以外にも似たような規定ってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。N004細胞診の注3にも「特殊染色を併せて行った場合は、特殊染色加算として、1部位ごとにそれぞれ50点を所定点数に加算する」という規定があります。こちらは点数こそ同じ50点ですが、対象はN000病理組織標本作製ではなくN004細胞診であり、別の条文に基づく加算です。関連する液状化検体細胞診加算とあわせて、どの検査区分の注による加算かを確認しておくと整理しやすくなります。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から変わったところってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、令和8年度改定における特殊染色加算(N000病理組織標本作製の注)の点数や算定単位についての変更は確認されていません。1臓器又は1部位ごとに50点を加算するという整理は、令和8年度の医科点数表に定められている内容です。
改定差分の確認について
今回、令和6年度時点の該当箇所を当サイトの資料の範囲で照合しましたが、比較対象となる令和6年度の一次資料が見当たりませんでした。前回改定からの変更点を断定はできないため、「変更は確認されていない」という表現にとどめています。自院の過去のレセプトと点数が変わっていないかは、念のため最新の点数表でご確認ください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちの医療機関で算定候補になるか、どういう順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のような順番で見ていくとわかりやすいですよ。
自院で確認する順番
- 病理組織標本作製(N000)を実施しているか確認する
- その標本作製で、通常の染色に加えて特殊染色(アザン染色・鉄染色・グロコット染色・チール・ネルゼン染色・グラム染色・パム染色・パス染色・ギムザ染色等)を併せて行っているか、報告書で確認する
- 標本作製が「組織切片によるもの」か「セルブロック法によるもの」かを確認する
- 組織切片によるものなら1臓器ごと、セルブロック法によるものなら1部位ごとに、それぞれ50点の加算候補として整理する

みらい(新人医療事務)
この順番で見ていけば、取りこぼしがないか確認しやすそうです。
あおい(元・医療事務)
はい。特に2番目の「特殊染色を行ったかどうか」の確認が抜けやすいポイントです。標本作製自体の点数だけを見て、注の加算まで手が回っていないケースがよくあります。
よくある取り漏れ
よくある取り漏れ例
病理検査を外部の衛生検査所に委託している場合、報告書に染色の内訳が書かれていても、院内のレセプトチェック担当者まで情報が伝わらず、加算の算定候補として拾われないことがあります。委託先からの報告書の内容を、レセプト担当者が定期的に確認する仕組みがあるかも見直しておきましょう。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
同じ患者さんで、1回の検査で複数の臓器の標本を作った場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
点数表の文言では「1臓器又は1部位ごとに」加算するとされています。複数臓器・複数部位を同時に取り扱った場合の具体的な数え方は、個別の実施状況によって確認が必要な部分なので、断定はできません。実施した臓器数・部位数と報告書の記載を照らし合わせて、必要であれば審査支払機関にも確認してください。
みらい(新人医療事務)
特殊染色の名前が報告書に書かれていない場合はどうすればいいですか?
あおい(元・医療事務)
その場合は、算定候補として扱う前に、実際にどの染色を行ったかを検査担当者や委託先に確認したほうが安全です。染色名が確認できないまま加算だけ先に算定するのは避けましょう。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。実施した標本作製の方法や染色の内容を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する国際標準病理診断管理加算など、他の病理診断関連の加算とあわせて確認しておくと、病理診断まわりの算定候補もあわせて確認できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。