みらい(新人医療事務)
「こころの連携指導料」っていう名前を初めて聞いたんですけど、これってどんな加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表にあるB005区分の指導料ですね。心の不調を抱えている患者さんを、かかりつけ医などが精神科や心療内科につなぐ「連携」を評価するものです。こころの連携指導料(Ⅰ)とこころの連携指導料(Ⅱ)の2区分があります。
みらい(新人医療事務)
「つなぐ」って、紹介状を書くのとは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
紹介状(診療情報提供料)とは別物です。孤立の状況などから精神疾患が悪化しそうな患者さんや、精神科・心療内科の医師による指導が必要と判断された患者さんに対して、かかりつけ医などが診療や療養上の指導を行い、患者さんの同意を得たうえで精神科・心療内科側に診療情報を文書で提供する、という一連の流れ全体を評価する指導料です。
こころの連携指導料とは
みらい(新人医療事務)
具体的にはどんな場面を想定しているんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
例えば、内科の外来で診ている患者さんが、SAD Personsスケールやこころの状態を測るPHQ-9、K-6などのスクリーニングで、精神科・心療内科への紹介が望ましいと判断されたケースです。すぐに紹介するだけでなく、かかりつけ医として療養上の指導も行い、その内容を診療情報として精神科・心療内科側に伝える。この一連の対応が評価対象になります。
みらい(新人医療事務)
なるほど、地域の医療機関同士の橋渡しみたいなイメージですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。こころの連携指導料(Ⅰ)は紹介する側(かかりつけ医等)、こころの連携指導料(Ⅱ)は紹介を受けて指導する側(精神科・心療内科)が算定する、と役割が分かれています。この対になっている構造を理解しておくと、自院がどちらの立場になるか整理しやすくなります。
対象となる患者・医療機関
みらい(新人医療事務)
対象になる患者さんの条件をもう少し詳しく知りたいです。
あおい(元・医療事務)
こころの連携指導料(Ⅰ)の対象は、入院中の患者さん以外で、地域社会からの孤立の状況等により精神疾患が増悪するおそれがあると認められる患者さん、または精神科・心療内科の医師による療養上の指導が必要と判断された患者さんです。留意事項通知では、この判断について「SAD Personsスケール、EPDS、PHQ-9又はK-6等によるスクリーニングにより、精神科又は心療内科への紹介が必要であると認められる患者」という基準が示されています。
みらい(新人医療事務)
EPDSって聞いたことあります、産後うつのチェックに使うやつですよね?
あおい(元・医療事務)
そうです。産科や小児科での育児支援の場面でも使われるスクリーニングツールですね。なお、厚生労働省の疑義解釈(令和8年度・その3)では、これらのスクリーニングにアルコール使用障害スクリーニング尺度のAUDITやAUDIT-Cも含まれるかという質問に対して「含まれる」という回答が示されています。うちの外来で使っているスクリーニングツールが対象に含まれるかどうか、この点は確認しておきたいポイントです。
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関にも条件はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関であることが前提です。診療所か病院かという規模の指定は資料上は特に見当たりませんが、届出の有無は算定候補になるかどうかを左右する重要な確認事項ですね。
対象患者チェックの落とし穴
「なんとなく気分が落ち込んでいそう」という主観だけで算定候補と判断しないことが大切です。留意事項通知が示すスクリーニングツール(SAD Personsスケール・EPDS・PHQ-9・K-6・AUDIT等)を使った評価であるかどうかが、算定候補になるかを確認するうえでの目安になります。
点数区分(Ⅰ・Ⅱ)
みらい(新人医療事務)
点数はそれぞれいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数表では、こころの連携指導料(Ⅰ)が350点、こころの連携指導料(Ⅱ)が500点です。どちらも月1回、患者1人につき算定できる区分です。
| 区分 | 点数(令和8年度) | 主な算定者の立場 |
|---|---|---|
| こころの連携指導料(Ⅰ) | 350点 | 紹介する側(かかりつけ医等) |
| こころの連携指導料(Ⅱ) | 500点 | 紹介を受けて指導する側(精神科・心療内科) |

みらい(新人医療事務)
(Ⅱ)の方が点数が高いんですね。
あおい(元・医療事務)
紹介を受けた精神科・心療内科側が専門的な診療と指導を行う点が評価されているためと考えられます。ただし点数の高低だけを見るのではなく、それぞれ算定できる立場・要件が異なる点をまず押さえておくことが大切です。
施設基準と届出
みらい(新人医療事務)
施設基準って具体的に何を満たせばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
告示の注では「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関」であることが求められています。厚生労働省の疑義解釈では、こころの連携指導料(Ⅰ)の施設基準で求められる医師の要件として「自殺対策等に関する適切な研修」が挙げられており、具体例として自殺未遂者ケア研修(かかりつけ医版・精神科救急版・一般救急版)や日本臨床救急医学会等が実施するPEECコースなどが示されています。
みらい(新人医療事務)
研修を受けた医師がいるかどうかも確認しないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。この研修要件については、当サイトが確認した一次資料の範囲で内容の変更を示す記載は見当たりませんが、制度の詳細は改定のたびに更新される可能性があります。最新の施設基準の通知や届出様式で必ずご確認ください(前回改定からの経緯は次の「改定での変更点」でも整理しています)。
施設基準は自院での確認が必須
どの研修が現時点で該当するか、また施設基準の細目は今後の通知で更新される可能性があります。届出済みであれば算定候補になりますが、最終的な適合判断は地方厚生局への届出内容と最新の公式通知でご確認ください。
算定要件とタイミング・回数制限
みらい(新人医療事務)
算定のタイミングや回数にルールはありますか?
あおい(元・医療事務)
あります。こころの連携指導料(Ⅰ)(Ⅱ)ともに、初回算定日の属する月から起算して1年を限度として、患者1人につき月1回に限り算定するとされています。つまり同じ患者さんに毎月算定できるわけではなく、上限が定められています。
みらい(新人医療事務)
1年って結構長い期間ですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし、2回目以降の診療等について文書による情報提供が必ずしも必要とされていない一方で、あらかじめ定められた方法での情報共有は求められています。診療録への記載も含めて、継続的な連携の記録を残しておくことが大切です。
みらい(新人医療事務)
記録に残す内容も決まっているんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、患者さんの心身の不調への配慮に加えて、生活上の課題等について聴取し、その内容と指導の要点を診療録に記載することが求められています。単に「紹介した」という事実だけでなく、指導の中身が記録として残っているかがポイントです。
こころの連携指導料(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い
みらい(新人医療事務)
(Ⅰ)と(Ⅱ)、混同しそうです。表で整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。役割の違いを表にまとめますね。
| 項目 | こころの連携指導料(Ⅰ) | こころの連携指導料(Ⅱ) |
|---|---|---|
| 算定する立場 | かかりつけ医等(紹介する側) | 精神科・心療内科の担当医(紹介を受ける側) |
| 対象患者 | 孤立等で精神疾患増悪のおそれ、または精神科・心療内科の指導が必要と判断された患者 | (Ⅰ)を算定し、当該医療機関に紹介された患者 |
| 主な行為 | 診療・療養上の指導+精神科等への診療情報の文書提供 | 診療・療養上の指導+紹介元医師への診療情報の文書提供 |
| 点数(令和8年度) | 350点 | 500点 |
みらい(新人医療事務)
つまり同じ患者さんについて、紹介する側の医療機関が(Ⅰ)、受け入れた精神科・心療内科側が(Ⅱ)を算定する、という流れなんですね。
あおい(元・医療事務)
その理解で合っています。自院がどちらの立場になるかによって、確認すべき算定要件が変わってきます。
疑義解釈から見る注意点(紹介先のルール)
みらい(新人医療事務)
実際の運用で気をつけるべき点はありますか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の疑義解釈(令和4年度・問163)が参考になります。心療内科または精神科を標榜する保険医療機関の心療内科・精神科担当医が、患者さんを他の心療内科・精神科に紹介した場合について「算定不可」という回答が示されています。
みらい(新人医療事務)
精神科の先生が別の精神科に紹介しても対象外なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。一方で、同じ疑義解釈の問164では、心療内科・精神科を標榜する保険医療機関の内科等を担当する医師が、他の心療内科・精神科に患者さんを紹介した場合については「他の算定要件を満たせば算定可能」という回答が示されています。同じ医療機関からの紹介でも、紹介元の担当診療科によって取り扱いが分かれる点は見落としやすいところです。
紹介元の診療科を確認する
「精神科・心療内科の医師から精神科・心療内科への紹介」は対象外、「内科等の医師から精神科・心療内科への紹介」は他の要件を満たせば算定候補、という違いがあります。院内のどの診療科が紹介したのかを記録に残しておくと、後から確認しやすくなります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集している一次資料の範囲では、こころの連携指導料(Ⅰ)(Ⅱ)の点数や算定要件について、令和6年度から令和8年度にかけての大きな変更は確認されていません(確認日: 2026年8月)。令和6年度の疑義解釈(問165)で示された「自殺対策等に関する適切な研修」という施設基準の考え方は、令和8年度の資料でも同様の枠組みで扱われているとみられます。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、前から算定していた医療機関はそのまま続けられそうですね。
あおい(元・医療事務)
傾向としてはそう見えますが、断定はできません。研修の対象範囲や様式が細部で更新されている可能性もあるため、既に届出をしている医療機関も、最新の施設基準通知と照らし合わせて確認しておくことをおすすめします。なお、令和8年度の疑義解釈(その3・問8)では、スクリーニングツールにAUDIT・AUDIT-Cが含まれるかという追加の論点が示されており、対象患者の判断基準について解釈が補足されている点は押さえておきたいところです。
改定差分を確認する際の注意
「変更が見当たらない」という状態は、当サイトが収集した一次資料の範囲での確認結果です。届出済みの医療機関も、施設基準の細目(研修の対象範囲など)は今後の通知で更新される可能性がある前提で、定期的な確認をおすすめします。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちで確認すべきことを順番に整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
順番に並べるとこの流れになります。
自院で確認する順番
- 対象患者かどうかを確認する(孤立の状況等による精神疾患増悪のおそれ、またはスクリーニングツールでの評価により精神科・心療内科の指導が必要と判断された患者か)
- 自院がこころの連携指導料の施設基準の届出を済ませているか確認する(未届出であれば算定候補にならない)
- 自院がどちらの立場か確認する(紹介する側なら(Ⅰ)、紹介を受けて指導する側なら(Ⅱ))
- 診療・指導の内容を診療録に記載し、患者さんの同意を得たうえで診療情報を文書で提供する
- 算定回数(月1回・初回算定日から1年限度)を管理する
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
取り漏れしやすいポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、紹介はしたけれど診療情報の文書提供まで完了していないケース。文書による情報提供が算定要件の中に含まれているので、口頭連絡だけで終わっていると要件を満たさない可能性があります。
みらい(新人医療事務)
文書で送るところまでがセットなんですね。
あおい(元・医療事務)
もう一つは、患者さんの同意取得の記録です。こころの連携指導料は患者さんの同意を得たうえで診療情報を提供することが前提になっているので、同意取得の経緯が診療録などに残っているかも確認ポイントです。
紹介先の診療科を必ず記録する
疑義解釈で紹介元の診療科によって取り扱いが分かれることが示されているため、紹介元・紹介先それぞれの診療科(内科なのか、精神科・心療内科なのか)を診療録や紹介状の控えに明確に残しておくことをおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や紹介の立場(紹介する側か、受ける側か)を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する指導料として、認知症サポート指導料 や 退院時共同指導料 も、医療機関同士の連携を評価する仕組みという点で共通しています。あわせて確認しておくと、自院の連携体制を整理しやすくなると思います。

最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。