みらい(新人医療事務)
院長から「緊急往診加算って、うちでも算定できるの?」と聞かれたんですけど、正直まだよくわかっていなくて…。緊急往診加算って何のための加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
往診料に上乗せする加算のひとつですよ。標榜時間内に急に「往診してほしい」と連絡が来て、実際に緊急で往診した場合に、通常の往診料720点に加えて算定できる加算です。令和8年度(2026年度)の医科点数表に規定されています。
みらい(新人医療事務)
「緊急で」っていうのは、具体的にどういう状態を指すんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知では「患者又は現にその看護に当たっている者からの訴えにより、速やかに往診しなければならないと判断した場合」とされていて、具体例として往診の結果、急性心筋梗塞、脳血管障害、急性腹症等が予想される場合が挙げられています。15歳未満の小児(小児慢性特定疾病医療支援の対象なら20歳未満)は、これに加えて低体温、けいれん、意識障害、急性呼吸不全等が予想される場合も含まれます。医学的に終末期と考えられる患者への往診も対象になり得ます。
みらい(新人医療事務)
なるほど、「急いで行かないと危ない」と判断した往診ということですね。じゃあ点数はいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
ここが少し複雑で、医療機関の種別と、患者が「別に厚生労働大臣が定める患者」に該当するかどうかで変わります。まず告示の点数から見てみましょう。
緊急往診加算の点数区分(令和8年度)
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表(告示)では、往診料720点に対する加算として、緊急往診加算は次の4区分に分かれています。

| 区分 | 点数 | 該当する医療機関・条件 |
|---|---|---|
| ハ | 325点 | 在支診等以外の保険医療機関で、対象患者に該当する場合 |
| ロ | 650点 | 在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院(機能強化型を除く) |
| イ(2) | 750点 | 機能強化した在支診等で、病床を有しない場合 |
| イ(1) | 850点 | 機能強化した在支診等で、病床を有する場合 |
| ニ | 325点 | 「別に厚生労働大臣が定める患者」に該当しない場合(医療機関の種別を問わず) |
みらい(新人医療事務)
医療機関の種別だけじゃなくて、患者さんの条件でも点数が変わるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。告示の注1では「別に厚生労働大臣が定める患者に対し」と、まず対象患者を限定した上で、医療機関の種別ごとに850点・750点・650点・325点と点数を分けています。その対象患者に該当しない場合は、医療機関の種別に関わらず一律325点(区分ニ)という構造です。「対象患者」の詳しい定義は別の告示に規定されているので、自院での判定は個別に確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
うちは在支診の届出をしていないクリニックなんですが、それでも算定候補にはなるんですか?
あおい(元・医療事務)
在支診等の届出がなくても、対象患者に該当する緊急往診であれば325点の区分(ハ)で算定候補になり得ます。ただし実際に算定できるかは、往診の内容が「緊急」の要件を満たしているか、標榜時間内かどうかなど、個別の状況次第です。断定はできないので、算定候補として院内で確認するところから始めるのがおすすめです。
対象医療機関と対象になる往診の場面
みらい(新人医療事務)
対象になる往診の場面って、もう少し具体的に整理できますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、次の条件を満たす往診が対象とされています。
緊急往診加算の対象になりうる場面
標榜時間内であること: 保険医療機関において、標榜時間内に往診を行った場合が対象です。 入院中の患者以外であること: 外来通院中や在宅療養中の患者への往診が対象で、入院患者は対象外です。 緊急に求められた往診であること: 患者又は現にその看護に当たっている者から緊急に求められて、速やかに赴いた場合が対象です。定期的・計画的な訪問は対象外です。
みらい(新人医療事務)
「定期的な訪問」と「緊急往診」って、どこで線引きされるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、往診料そのものについて「定期的ないし計画的に患家又は他の保険医療機関に赴いて診療を行った場合には算定できない」とされています。緊急往診加算はさらにその中でも、患者側からの急な訴えを受けて速やかに赴いた場合に限られます。あらかじめ日時を決めて訪問する在宅患者訪問診療とは別物として扱われている、という理解になります。
施設基準と届出
みらい(新人医療事務)
施設基準や届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
緊急往診加算そのものに単独の届出義務があるわけではありません。ただし、点数区分が「在宅療養支援診療所(在支診)」「在宅療養支援病院(在支病)」「機能強化した在支診等」のどれに当たるかで変わるため、実質的には自院がどの区分の届出をしているかが点数を左右します。留意事項通知では、この「在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院であって別に厚生労働大臣が定めるもの」は、特掲診療料施設基準通知に規定する在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院を指すとされています。
施設基準の確認は自院の届出書類で
「機能強化した在支診等」に該当するかどうかは、特掲診療料施設基準通知に定める要件(複数医師の配置、緊急往診・在宅看取りの実績等)を満たして届け出ているかで決まります。本記事では点数区分の全体像を紹介していますが、自院がどの区分に当たるかは、届出時の区分・施設基準の充足状況を必ず自院の届出書類で確認してください。
算定タイミング・注意点
みらい(新人医療事務)
算定するときに気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、緊急往診加算は往診料に上乗せする加算なので、往診料本体(720点)が算定できることが前提です。また、同じ患家(有料老人ホーム等を含む)で2人以上の患者を診療した場合、2人目以降は往診料自体を算定せず、初診料・再診料等のみの算定になるという整理があるので、同一建物での複数患者対応時は特に注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
夜間や深夜の往診とは別なんですか?
あおい(元・医療事務)
別の加算です。夜間・休日往診加算や深夜往診加算は、時間帯(夜間・休日・深夜)で区分される加算で、緊急往診加算とは要件も点数体系も異なります。標榜時間内の緊急往診にはこの緊急往診加算が、標榜時間外・夜間・深夜・休日の往診には別の加算が対応するイメージです。時間帯によって複数の加算が重なって適用される場合もあるため、実際の算定にあたっては往診の時刻と自院の標榜時間を照らし合わせて確認する必要があります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集した令和8年度の一次資料(告示・留意事項通知)の範囲では、緊急往診加算の新設・廃止や、点数区分の枠組み自体の変更は確認されていません(確認日: 2026年8月・厚労省一次情報ベース)。ただし、当サイトでは令和6年度時点の同一区分の点数を横並びで比較できる一次資料をまだ収録できていないため、「点数が全く変わっていない」と断定はできません。前回改定からの厳密な増減が気になる場合は、厚生労働省が公表する「個別改定項目について」等の一次資料、または自院が契約している算定システムの改定対応表であわせて確認することをおすすめします。
改定差分を確認するときの視点
点数区分の枠組み: イ・ロ・ハ・ニという区分そのものが変わっていないか。 施設基準・人員配置: 「機能強化した在支診等」の要件(複数医師配置等)に変更がないか。 対象患者の定義: 「別に厚生労働大臣が定める患者」の範囲に変更がないか。
自院で確認する順番

みらい(新人医療事務)
実際にうちで確認するとしたら、どういう順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認するとわかりやすいですよ。
自院で確認する順番
- 標榜時間内に、患者または看護に当たっている者から緊急に往診を求められたかを確認する
- 入院中の患者ではなく、定期的・計画的な訪問ではなく、緊急の訴えを受けての往診だったかを確認する
- 往診の結果、急性心筋梗塞・脳血管障害・急性腹症等が予想される状態、またはそれに準じる状態(終末期を含む)だったかを確認する
- 自院が「在支診等以外」「在支診等(機能強化型以外)」「機能強化した在支診等(病床あり/なし)」のどの届出区分かを確認する
- 患者が「別に厚生労働大臣が定める患者」に該当するかを確認し、区分ごとの点数(325点/650点/750点/850点)を当てはめる
みらい(新人医療事務)
これを順番に見ていけば、うちが算定候補になるかどうかの当たりがつけられそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし最終的な判断には、往診記録の記載内容や届出区分の裏付けが必要になるので、確認が必要な項目として院内で共有しておくのがおすすめです。
よくある取り漏れ
緊急往診加算で見落とされやすいポイント
在支診等の届出区分の確認漏れ: 自院が「機能強化した在支診等」に当たるかどうかで750点/850点の区分になり得ることを見落とし、一律で325点と誤解しているケースがあります。 同一患家での複数患者対応時の整理漏れ: 同じ患家・有料老人ホーム等で2人以上診療した場合、2人目以降は往診料自体を算定しない扱いになるため、緊急往診加算の重複算定にならないよう注意が必要です。 「緊急」の該当性を診療録に残していない: 緊急往診と判断した根拠(訴えの内容、予想された病態等)を診療録に記載していないと、後から算定根拠を確認しづらくなります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する加算では、深夜往診加算や夜間往診加算、在宅ターミナルケア加算もあわせて確認しておくと、往診まわりの算定漏れに気づきやすくなります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。