みらい(新人医療事務)
先輩、NICUのレセプトを見ていたら「一酸化窒素ガス加算」というのが出てきたんですけど、これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
一酸化窒素吸入療法(区分番号J045-2)に対する加算ですよ。人工呼吸管理をしている新生児や、心臓手術後の患者さんに一酸化窒素ガスを吸入させる処置に、追加で点数が付くしくみです。令和8年度(2026年度)の医科点数表でも、この加算自体は引き続き設けられています。
みらい(新人医療事務)
一酸化窒素を吸わせるって、ちょっと聞いただけだと不思議な治療ですね。
あおい(元・医療事務)
肺の血管を広げて血圧を下げる目的で使われる吸入薬なんです。対象になる場面が限られているので、まずはどんな患者さんに使われる処置なのかから確認していきましょう。
一酸化窒素ガス加算とは
みらい(新人医療事務)
この加算、そもそもどういう位置づけなんですか?
あおい(元・医療事務)
区分番号J045-2「一酸化窒素吸入療法(1日につき)」という処置本体に対する加算です。吸入時間が1時間までの場合は900点を所定点数に加算し、1時間を超える場合は、900点に「吸入時間が1時間又はその端数を増すごとに900点を加算して得た点数」を、所定点数に加算する、という定めになっています。
みらい(新人医療事務)
「端数を増すごとに900点」というのは、1時間15分吸入したら2回分ってことですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。端数が出た時点で次の900点が発生する計算です。長時間の吸入になるほど加算点数も積み上がっていく仕組みですね。
みらい(新人医療事務)
なるほど。じゃあどんな患者さんに使う処置なんですか?
あおい(元・医療事務)
次で詳しく見ていきましょう。
対象になる患者・場面
みらい(新人医療事務)
対象患者はどう分類されているんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料では大きく2つの場面に分かれています。1つ目は「新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全の改善を目的として本療法を行った場合」で、J045-2の「1」により算定します。2つ目は「心臓手術又は先天性横隔膜ヘルニアの周術期における肺高血圧の改善を目的として一酸化窒素吸入療法を行った場合」で、こちらは「2」により算定する、と留意事項通知に定められています。
みらい(新人医療事務)
新生児のケースと、心臓手術・先天性横隔膜ヘルニアの周術期のケースで、扱いが分かれているんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。どちらの場面に当たるかで、後で説明する算定できる期間の上限も変わってきます。自院の診療内容がどちらに当てはまるか(あるいはどちらにも当てはまらないか)を、まず確認するのが出発点になります。
みらい(新人医療事務)
外来でも算定候補になるケースってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
一酸化窒素吸入療法は人工呼吸器と接続して行う処置なので、通常は入院管理の中で行われる処置です。関連する管理料として新生児特定集中治療室管理料や小児特定集中治療室管理料のようなNICU・PICU向けの入院料と合わせて診療している医療機関で登場する場面が多いですね。ただし個々の診療実態は病院ごとに違うので、外来か入院かも含めて自院の記録で確認する必要があります。
点数の考え方(令和8年度)

みらい(新人医療事務)
点数を表にすると整理しやすそうです。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の告示ベースで整理すると、こうなります。
| 区分 | 一酸化窒素吸入療法(本体) | 一酸化窒素ガス加算 |
|---|---|---|
| 1 新生児の低酸素性呼吸不全に対して実施する場合 | 1,680点 | 900点(吸入時間1時間まで)、1時間を超えるごとに900点を加算 |
| 2 その他の場合(心臓手術・先天性横隔膜ヘルニアの周術期など) | 1,680点 | 900点(吸入時間1時間まで)、1時間を超えるごとに900点を加算 |
みらい(新人医療事務)
本体もガス加算も、どちらの区分でも点数自体は同じなんですね。
あおい(元・医療事務)
はい、点数の考え方は共通です。違ってくるのは、次に説明する「算定できる期間の上限」の部分です。
加算の考え方に関する注記
900点は「吸入時間が1時間までの場合」の加算点数です。1時間を超える場合は、900点に「1時間又はその端数を増すごとに900点を加算して得た点数」を所定点数に加算する、という告示の定めに沿って計算します。実際の点数は診療記録上の吸入時間から正確に積算する必要があります。
算定できる期間・回数の考え方

みらい(新人医療事務)
さっき言っていた「期間の上限」って何ですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に、開始時刻からの通算時間の限度が定められているんです。新生児の低酸素性呼吸不全の改善を目的とする場合は、開始時刻より通算して96時間を限度として一酸化窒素ガス加算を加算でき、本療法の終了日に算定する、とされています。
みらい(新人医療事務)
96時間を超えたら、もうずっと算定候補にならないんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは例外があります。医学的根拠に基づいてこの限度を超えて算定する場合は、さらに48時間を限度として算定でき、診療報酬明細書の摘要欄にその理由及び医学的な根拠を詳細に記載すること、と定められています。延長には摘要欄への記載が前提になっている点がポイントです。
みらい(新人医療事務)
心臓手術や先天性横隔膜ヘルニアの周術期のケースはどうなんですか?
あおい(元・医療事務)
そちらは開始時刻より通算して168時間を限度として一酸化窒素ガス加算を加算でき、本療法の終了日に算定します。ただし56時間を超えて本療法を実施する場合は、症状に応じて離脱の可能性について検討し、その検討結果を診療録に記録すること、とされています。こちらも医学的根拠があれば、さらに48時間を限度として延長算定でき、摘要欄への理由・医学的根拠の記載が求められます。
みらい(新人医療事務)
「開始時刻」って、具体的にはいつを指すんですか?
あおい(元・医療事務)
一酸化窒素供給装置を人工呼吸器と接続し、一酸化窒素の供給を開始した時刻を指す、と留意事項通知に明記されています。本療法を実施した場合は、同時刻を診療報酬明細書の摘要欄に記載することになっています。
算定期間の管理について
96時間・168時間という上限、延長時の48時間、56時間超での離脱検討記録など、時間の起算・上限・記録要件が細かく定められています。診療記録・摘要欄の記載が算定の前提になっているため、記録の抜け漏れがないか自院で確認することが必要です。
施設基準・届出について
みらい(新人医療事務)
施設基準や届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
ここは区分によって書かれ方が違うので、正直にお伝えしますね。新生児の低酸素性呼吸不全に対して実施する場合(区分「1」)については、告示に「別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において行われる場合に限り算定する」という注記があります。つまりこのケースでは、本体となる一酸化窒素吸入療法自体に施設基準の要件があることが分かります。
みらい(新人医療事務)
心臓手術・先天性横隔膜ヘルニアの周術期のケース(区分「2」)はどうですか?
あおい(元・医療事務)
そちらについては、当サイトが確認できた一次資料の範囲では、同様の施設基準の明記を確認できていません。ここは「施設基準なし」と決めつけず、未確認として扱うのが正確です。
みらい(新人医療事務)
届出そのものについてはどうなんですか?
あおい(元・医療事務)
一酸化窒素ガス加算そのものについて、独自の届出手続きが必要かどうかは、当サイトが確認できた一次資料の範囲では明記を確認できていません。区分「1」に関する施設基準の内容や届出の要否については、地方厚生局への確認、または自院の届出状況の確認が必要です。
施設基準・届出の確認ポイント
新生児の低酸素性呼吸不全のケース: 告示に施設基準の定めがあることは確認できています。自院がこの基準を満たしているか、届出が必要かどうかは地方厚生局への確認をおすすめします。 心臓手術・先天性横隔膜ヘルニア周術期のケース: 一次資料の範囲では施設基準の明記が確認できていません。診療内容に応じて個別に確認してください。
併算定の注意
みらい(新人医療事務)
一酸化窒素吸入療法をしている日に、他の処置や検査を行った場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に併算定の扱いが定められています。同一日に呼吸心拍監視、新生児心拍・呼吸監視、カルジオスコープ(ハートスコープ)、カルジオタコスコープ、経皮的動脈血酸素飽和度測定、または非観血的連続血圧測定を行った場合、これらに係る費用は一酸化窒素吸入療法の所定点数に含まれる、とされています。
みらい(新人医療事務)
つまり別立てでは算定候補にならないということですね。
あおい(元・医療事務)
はい。さらに、喀痰吸引、干渉低周波去痰器による喀痰排出、酸素吸入及び突発性難聴に対する酸素療法の費用も、本療法の所定点数に含まれるとされています。同一日にこれらを行った場合、別途の算定候補にはならない点に注意が必要です。
併算定に関する注記
呼吸心拍監視・経皮的動脈血酸素飽和度測定・酸素吸入などを同一日に行っても、留意事項通知の定めにより一酸化窒素吸入療法の所定点数に含まれます。レセプト作成時に重複算定していないか確認してください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、この加算に変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できた厚生労働省の一次資料の範囲では、一酸化窒素ガス加算の点数(900点、1時間ごとの加算方法)や、算定できる期間の上限(96時間・168時間)について、前回改定(令和6年度)からの主な変更は確認されていません(2026年7月確認・厚労省一次情報ベース)。
みらい(新人医療事務)
変わっていない、とはっきり言えるんですね。
あおい(元・医療事務)
「確認できた資料の範囲では」という前提つきですけどね。改定のたびに細かい表記整備が入ることもあるので、実務では最新の告示・通知を都度確認するようにしてください。
改定対比の整理(前回→今回)
前回改定(令和6年度): 一酸化窒素ガス加算900点(1時間まで)、1時間超過ごとに900点加算という枠組み。 今回改定(令和8年度): 一次資料の範囲では同様の枠組みが維持されており、主な変更は確認されていません。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
ここまでの内容を、自院で確認する手順として整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
はい、次のステップで確認していくとよいと思います。
自院で確認する順番
- 対象患者に当てはまるか確認する(新生児の低酸素性呼吸不全、または心臓手術・先天性横隔膜ヘルニアの周術期の肺高血圧改善)
- 区分「1」に該当する場合、J045-2の施設基準を満たしているか、届出状況を地方厚生局に確認する
- 一酸化窒素供給装置を人工呼吸器に接続した開始時刻と、吸入時間を診療記録に残す
- 通算96時間(新生児)または168時間(心臓手術・先天性横隔膜ヘルニア周術期)の起算・上限を管理する
- 上限を超えて算定する場合は、医学的根拠と理由を摘要欄に記載できる状態にしておく
- 同一日に行った呼吸心拍監視・酸素吸入などを別立てで算定していないか確認する
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちなミスってどんなものがありますか?
あおい(元・医療事務)
よく見かけるのはこの2つですね。
よくある取り漏れ・記載漏れ
開始時刻の記載漏れ: 一酸化窒素供給装置を人工呼吸器と接続し、一酸化窒素の供給を開始した時刻を診療報酬明細書の摘要欄に記載する必要があります。この記載が漏れていると、算定候補としての整理が難しくなります。 56時間超の離脱検討記録の漏れ: 心臓手術・先天性横隔膜ヘルニア周術期のケースで56時間を超えて実施する場合、離脱の可能性について検討し、その結果を診療録に記録することが求められています。記録がないと確認が難しくなる点に注意してください。
みらい(新人医療事務)
逆に、併算定できないものを別立てで算定してしまうミスもありそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。呼吸心拍監視や酸素吸入などは、一酸化窒素吸入療法の所定点数に含まれるので、レセプトの二重算定にならないか、確認する体制を作っておくと安心です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、よくある質問をいくつか聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
どうぞ。
みらい(新人医療事務)
一酸化窒素ガス加算は、外来でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
一酸化窒素吸入療法は人工呼吸器と接続して行う処置のため、入院診療の中で行われるのが一般的です。外来診療での実施が自院にあるかどうかは、診療実態に沿って個別に確認してください。
みらい(新人医療事務)
96時間や168時間を超えたら、もう一酸化窒素ガス加算の算定候補にはならないんですか?
あおい(元・医療事務)
医学的根拠に基づいてこの限度を超えて算定する場合は、さらに48時間を限度として算定候補になり得ますが、診療報酬明細書の摘要欄にその理由及び医学的な根拠を詳細に記載することが前提です。記載がなければ確認が難しくなります。
みらい(新人医療事務)
前回改定(令和6年度)から点数や算定期間の上限は変わりましたか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できた一次資料の範囲では、前回改定(令和6年度)からの主な変更は確認されていません。実務では最新の告示・通知を都度確認するようにしてください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。