みらい(新人医療事務)
あおいさん、「複雑加算」っていうシンプルすぎる名前の加算があって、何の加算なのか全然わからないんです……。
あおい(元・医療事務)
それ、正式名称は「複雑加算(帝王切開術)」ですね。マスター上は「複雑加算」とだけ表示されることがあるのですが、実際は区分番号K898「帝王切開術」に付く「注」の加算です。帝王切開術が医学的に複雑な状況で行われた場合に、所定点数へ2,000点を加算するものです。
みらい(新人医療事務)
帝王切開術そのものではなくて、あくまで「加算」なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。帝王切開術(K898)の点数に、複雑な場合の追加分として上乗せされる仕組みです。帝王切開術自体を実施していないと、この加算だけを算定することはできません。
複雑加算(帝王切開術)とは
みらい(新人医療事務)
まず帝王切開術そのものの点数を教えてください。
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の医科点数表(令和8年度)では、K898帝王切開術は「1 緊急帝王切開」と「2 選択帝王切開」の2区分に分かれています。緊急帝王切開は22,200点、選択帝王切開は20,140点です。そして「注 複雑な場合については、2,000点を所定点数に加算する。」と定められています。緊急・選択のどちらの区分でも、複雑な場合に該当すれば2,000点の加算が候補になります。
みらい(新人医療事務)
緊急でも選択でも、複雑な場合なら同じ2,000点が加算されるんですか?
あおい(元・医療事務)
告示上の注はそのように読める書き方ですが、実際に加算候補になるかどうかは個々のケースの状況次第です。次で説明する「複雑な場合」の要件に該当するかを、まずカルテの記載で確認する必要があります。
対象になる医療機関・患者
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関が対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
帝王切開術(K898に分類される産科手術)を実施する医療機関、つまり分娩を取り扱う産科・産婦人科のある病院や、分娩を扱う有床診療所が対象になり得ます。ただし当サイトが収載している一次資料の範囲では、この複雑加算そのものに医療機関単位の施設要件(病床数や診療科の限定など)を定めた記載は確認されていません。対象となるのはあくまで、帝王切開術を受ける妊産婦のうち、後述する複雑な場合の要件に該当するケースです。
みらい(新人医療事務)
患者さん側の条件があるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。前置胎盤や早産、多胎など、医学的な状況によって「複雑な場合」に当たるかどうかが決まります。単に手術時間が長かった、出血量が多かったというだけでは、告示に列挙された要件に当てはまらない限り加算候補にはなりません。
点数とコードの整理(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数を表で整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。まず帝王切開術本体と、複雑加算の点数をまとめます。
| 区分 | 内容 | 点数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| K898「1」 | 緊急帝王切開 | 22,200点 | 母体・胎児の状況により緊急に実施した場合 |
| K898「2」 | 選択帝王切開 | 20,140点 | あらかじめ予定していた帝王切開 |
| K898「注」 | 複雑加算(帝王切開術) | 2,000点 | 「複雑な場合」に該当するときに所定点数へ加算 |

あおい(元・医療事務)
医科診療行為マスター(令和8年度)でも、この複雑加算は「複雑加算(帝王切開術)」という正式名称で、点数2,000点・加算区分として登録されています。マスター上は「複雑加算」と短縮表示されるため、他の手術の複雑加算と混同しないよう、必ずK898帝王切開術に付随するものであることを確認してください。
みらい(新人医療事務)
緊急帝王切開の22,200点に複雑加算の2,000点を足すと、24,200点になる、というイメージですか?
あおい(元・医療事務)
要件に該当し、加算候補として整理できるのであれば、その計算になります。ただし実際の算定は、複雑な場合の要件該当性をカルテ等で確認したうえで判断するものですので、この記事の数字はあくまで点数表上の整理としてご覧ください。
「複雑な場合」に当たる6つの要件
みらい(新人医療事務)
一番知りたいのはここです。「複雑な場合」って具体的に何を指すんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知(診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について)では、K898帝王切開術の「注」に規定する「複雑な場合」として、次の6つが列挙されています。
複雑な場合に当たる要件(留意事項通知・令和8年度)
- 前置胎盤の合併を認める場合: 胎盤が子宮口を覆う・近接するなどの状態
- 32週未満の早産の場合: 妊娠32週未満での帝王切開
- 胎児機能不全を認める場合: 胎児の状態悪化が確認される場合
- 常位胎盤早期剥離を認める場合: 正常位置の胎盤が早期に剥離する状態
- 開腹歴のある妊婦に対して実施する場合: 腹腔・骨盤腔内手術の既往がある妊婦への実施
- 多胎の場合: 双胎・品胎など複数児の妊娠
みらい(新人医療事務)
この6つのうち、どれか1つに当てはまれば加算候補になる、ということですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の書き方は「以下に掲げるものをいう」という列挙形式で、いずれか一つに該当すれば「複雑な場合」に当たると読めます。ただし、該当するかどうかの医学的な判断そのものは、当サイトが代わりに行うことはできません。診療録に該当理由が明確に記載されているかを、自院で必ず確認してください。
開腹歴の疑義解釈(既往帝王切開・腹腔鏡の扱い)
みらい(新人医療事務)
「開腹歴」のところ、少しあいまいに感じます。どこまでが開腹歴に入るんですか?
あおい(元・医療事務)
この点については、厚生労働省の疑義解釈で具体的な考え方が示されています。平成28年度に出された疑義解釈資料(その1)問175では、「開腹歴には腹腔鏡を用いた手術も含まれるか」という質問に対して、「原則として腹腔鏡を用いた手術も含まれる。ただし、帝王切開術の手技を複雑にしないと考えられる上腹部のみを手術野とする手術は、加算の対象とならない」という考え方が示されました。
みらい(新人医療事務)
腹腔鏡手術の既往でも、部位によっては対象外になることがあるんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。骨盤内や下腹部への手術歴であれば開腹歴に含まれやすい一方、上腹部だけの手術は帝王切開の手技を複雑にしないため対象外とされています。また、同じく平成28年度の疑義解釈資料(その4)問28では、「帝王切開術の既往のある妊婦に、新たに帝王切開術を実施する場合も開腹歴に含まれるか」という質問に「そのとおり」と回答されています。過去の帝王切開術も開腹歴に該当し得るということです。
みらい(新人医療事務)
平成28年度の疑義解釈が、令和8年度の今も参考になるんですか?
あおい(元・医療事務)
この疑義解釈はK898の「開腹歴」という要件の解釈を示したもので、要件自体が廃止・変更されたという情報は当サイトが収載している一次資料の範囲では確認されていません。とはいえ、疑義解釈が発出された時点から解釈が変わっている可能性もゼロではないため、算定の最終判断では最新の告示・通知や審査支払機関への確認が必要です。
施設基準・届出について
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要ですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収載している医科点数表・留意事項通知の範囲では、この複雑加算に関して、医療機関単位の施設基準の届出を求める記載は確認されていません。帝王切開術本体(K898)に対する「注」の加算という位置づけで、個々の症例が複雑な場合の要件に該当するかどうかで判断される仕組みだと考えられます。
みらい(新人医療事務)
届出なしで自動的に算定できる、ということですか?
あおい(元・医療事務)
「届出が不要」と断定はできません。当サイトの一次資料の範囲で施設基準の届出に関する記載が見当たらないというだけで、レセプトの摘要欄への記載や、該当理由をカルテに明記することなど、個別の事務手続きが必要になる場合があります。届出の要否も含めて、算定前に自院の状況を確認することをおすすめします。
算定タイミング・注意点
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
この複雑加算は、K898帝王切開術(緊急または選択)を実施した際に、複雑な場合の要件に該当する場合に所定点数へ加算するものです。帝王切開術を実施していない月に、この加算だけを単独で算定することはできません。
算定候補の判断は自院で
複雑な場合の6要件のいずれに該当するかは、診療録の記載内容と医学的判断に基づいて決まります。当サイトの整理はあくまで一次資料の内容紹介であり、個別の症例が要件に該当するかどうかの判断を代替するものではありません。
みらい(新人医療事務)
他の加算と一緒に算定することもありますか?
あおい(元・医療事務)
帝王切開術に関連する加算としては、麻酔管理料(Ⅰ)の「注2」に定められる帝王切開術時麻酔加算(帝王切開術時麻酔加算)が別に存在します。これはL009麻酔管理料(Ⅰ)に対する加算で、K898に対する複雑加算とはコード上の位置づけが異なります。同時に算定できるかどうかは個々の算定要件を確認する必要があり、当記事だけで断定はできません。
あおい(元・医療事務)
また、妊娠管理の段階でハイリスク妊娠管理加算(ハイリスク妊娠管理加算)やハイリスク分娩等管理加算(ハイリスク分娩等管理加算)を算定しているケースでは、前置胎盤や多胎など、複雑加算の要件と重なる病態が記録されていることがあります。カルテの記載を横断的に確認すると、複雑加算の該当理由を整理しやすくなります。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収載している厚生労働省の一次資料(医科点数表・留意事項通知の令和8年度版)の範囲では、複雑加算(帝王切開術)の点数(2,000点)や、複雑な場合の6要件についての令和8年度改定による変更は確認されていません(確認日: 2026年8月)。帝王切開術本体の点数(緊急帝王切開22,200点・選択帝王切開20,140点)についても、当サイトが保有する令和8年度資料の中では現行の点数として記載されています。
みらい(新人医療事務)
変更がないなら、それはそれで安心材料になりますね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし「変更が確認されていない」というのは、当サイトが収載している一次資料の範囲での整理です。今後の告示改正や疑義解釈の発出によって取扱いが変わる可能性もあるため、最新情報は厚生労働省の公式ページで随時確認することをおすすめします。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
自院で確認するときは、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のステップの順番で確認していくと進めやすいです。
自院で確認する順番
- 対象の分娩でK898帝王切開術(緊急または選択)を実施したかを確認する
- 前置胎盤・32週未満の早産・胎児機能不全・常位胎盤早期剥離・開腹歴・多胎のいずれかに該当するかをカルテで確認する
- 該当する要件とその医学的根拠が、診療録に具体的に記載されているかを確認する
- 該当理由が明確であれば算定候補として整理し、レセプト記載を含めて自院の事務フローで最終確認する

あおい(元・医療事務)
特に大事なのは2番目と3番目のステップです。要件に該当していても、その根拠がカルテに残っていなければ、算定候補として整理しづらくなります。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
取り漏れやすいポイントってありますか?
よくある取り漏れ(複雑加算)
- 既往帝王切開の見落とし: 過去の帝王切開術も開腹歴に含まれ得ることが、疑義解釈で示されています。既往歴の確認が漏れると取り漏れにつながります
- 多胎妊娠での確認漏れ: 多胎は複雑な場合の要件の一つですが、帝王切開術以外の加算(産科管理加算等)の確認に気を取られて見落とされることがあります
- 上腹部のみの開腹歴を開腹歴に含めてしまう誤り: 疑義解釈では、帝王切開の手技を複雑にしないと考えられる上腹部のみの手術は対象外とされています。逆方向の誤り(過大算定)にも注意が必要です
みらい(新人医療事務)
取り漏れだけでなく、算定しすぎにも注意が必要なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。どちらの方向にも、根拠となるカルテの記載を確認する姿勢が大切です。
参考にした公式資料(令和8年度)
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省の公式資料を根拠に整理しています。実際の算定にあたっては、必ず一次資料そのものと自院の状況をあわせてご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 医科点数表(診療報酬の算定方法の一部を改正する件・令和8年厚生労働省告示第69号 関連資料) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号・訂正後版) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf
- 疑義解釈資料の送付について(その1・その4)(厚生労働省 診療報酬 疑義解釈ページ) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21053.html
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。実施した帝王切開術の区分や該当しそうな要件を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・診療内容・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。