みらい(新人医療事務)
先生、今日のレセプトチェックで「一期的両靱帯形成加算」っていう聞き慣れない加算が出てきたんですけど、これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
整形外科の膝の手術に関わる加算ですね。膝の前十字靱帯(ACL)と後十字靱帯(PCL)の両方が断裂している患者さんに対して、1回の手術で両方の靱帯形成術を行った場合に算定候補になる加算です。名前のとおり「一期的に(=同じ手術で)両方の靱帯を形成した」ことに対する加算、というイメージです。
みらい(新人医療事務)
両方いっぺんに直すって、結構大がかりな手術になりそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。前十字靱帯と後十字靱帯の両方が同時に断裂しているケースは、交通外傷やスポーツ外傷など強い外力が加わった場合に起こりますが、通常の靱帯断裂よりも手術の負担が大きくなります。そうした一期的な手術に対する評価として、令和8年度の医科点数表に加算として位置づけられています。
対象になる手術と点数
みらい(新人医療事務)
具体的には、どの手術についている加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
基礎になる手術は「K079-2 靱帯断裂形成手術(関節鏡下)」の区分「1 十字靱帯断裂形成手術」です。この区分の所定点数に対して、一期的両靱帯形成加算として5,000点が加算される形になります。まずは点数を整理してみましょう。
| 項目 | 点数(令和8年度) | 備考 |
|---|---|---|
| K079-2 靱帯断裂形成手術(関節鏡下)1 十字靱帯断裂形成手術 | 34,980点 | 加算の基礎となる区分 |
| 一期的両靱帯形成加算(注) | +5,000点 | 前十字靱帯・後十字靱帯を一期的に形成術した場合 |
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)には、次のように定められています。「注 1について、前十字靱帯及び後十字靱帯に対して一期的に形成術を実施した場合は、一期的両靱帯形成加算として、5,000点を所定点数に加算する。」という条文です。
みらい(新人医療事務)
つまり、区分1の「十字靱帯断裂形成手術」を選んだ手術についてだけ、この加算が乗る、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。同じK079-2のなかでも「2 膝側副靱帯断裂形成手術」や「3 内側膝蓋大腿靱帯断裂形成手術」など、区分1以外の術式にはこの加算は付きません。まず「どの区分の手術を行ったか」をカルテとレセプトで確認するのが最初のステップになります。
みらい(新人医療事務)
開放手術(関節鏡を使わない術式)の場合は、この加算はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
一期的両靱帯形成加算の注は、K079-2「靱帯断裂形成手術(関節鏡下)」の区分1に付いているものです。当サイトが収集した告示の範囲では、関節鏡を使わないK079「靱帯断裂形成手術」側に同じ加算の記載は確認できていません。開放手術で両靱帯を一期的に形成した場合の取扱いは、当サイトの資料だけでは断定できないため、地方厚生(支援)局や審査支払機関に個別に確認することをおすすめします。
算定要件: 一期的に両靱帯を形成した場合
みらい(新人医療事務)
「一期的に」というのは、具体的にはどういう条件を満たせばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知(令和8年度)には、算定要件がもう少し詳しく書かれています。「『注』に規定する加算は、膝前十字靱帯断裂及び膝後十字靱帯断裂を同時に有する患者に対して、医学的な必要性から一期的に両靱帯の形成術を行った場合に算定する。なお、両靱帯損傷と診断する根拠となった検査所見等及び一期的な両靱帯形成術の医学的必要性について、診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。」という内容です。
あおい(元・医療事務)
ポイントは3つです。1つ目は、膝の前十字靱帯断裂と後十字靱帯断裂を「同時に」有する患者さんであること。2つ目は、両方を同じ手術(一期的)で形成術する「医学的な必要性」があること。3つ目は、その根拠と必要性を診療報酬明細書の摘要欄に記載することです。
みらい(新人医療事務)
記載しないと、算定候補にならないんですか?
あおい(元・医療事務)
記載事項として明示されているので、記載がないと審査の段階で確認を求められる可能性があります。「両靱帯損傷と診断した検査所見(MRIなど)」と「一期的に行う医学的必要性」の2点を、診断書やカルテの記録と揃えて摘要欄に落とし込む、という運用が求められている加算だと考えるとよいと思います。
施設基準・届出は必要?
みらい(新人医療事務)
この加算、届出とか施設基準は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集した資料の範囲では、一期的両靱帯形成加算そのものに固有の届出は不要と整理されています。告示・施設基準に関する通知(基本診療料・特掲診療料の施設基準等)にも、この加算に個別の施設基準を求める記載は見当たりませんでした。術式・診断根拠・医学的必要性の記載が中心の加算という位置づけです。
みらい(新人医療事務)
届出がいらないなら、基準を満たしていなくてもすぐ算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
そこは分けて考えたいところです。この加算自体には固有の届出は不要と整理されていますが、基礎となるK079-2「靱帯断裂形成手術(関節鏡下)」側に施設基準が関わる場合は、そちらの届出状況が前提になります。「届出不要」と読める資料内容ではありますが、最終的な要否は自院の解釈だけで判断せず、地方厚生(支援)局や審査支払機関に確認することをおすすめします。
届出不要と読めるが自院で必ず確認
一期的両靱帯形成加算そのものに固有の届出・施設基準の規定は、当サイトが収集した一次資料の範囲では確認できていません。ただし基礎となるK079-2側の施設基準(該当する場合)や、届出内容の変更・見直しの有無は、自院の届出状況・地方厚生(支援)局への確認をお願いします。
レセプト摘要欄の記載事項(要注意ポイント)
みらい(新人医療事務)
摘要欄には、具体的に何を書けばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
レセプト電算処理システム用コードの訂正通知には、この加算に対応する摘要欄記載のコードが2つ示されています。「両靱帯損傷と診断する根拠となった検査所見(一期的両靱帯形成加算);」(コード830100277)と、「一期的な両靱帯形成術の医学的必要性(一期的両靱帯形成加算);」(コード830100278)の2件です。
あおい(元・医療事務)
つまり、①両靱帯損傷と診断した根拠となる検査所見(MRI所見や徒手検査の結果など)、②一期的に両方を形成術した医学的な理由、この2点を摘要欄に記載する運用がとられています。手術記録・診断根拠と、レセプト記載の文言が食い違わないように揃えておくことが、取り漏れや査定を防ぐポイントになります。
取り漏れやすいポイント
区分の取り違え: K079-2の区分1(十字靱帯断裂形成手術)以外を選んでいないか、まずレセプトの区分コードを確認します。 摘要欄の記載漏れ: 両靱帯損傷の診断根拠と、一期的に行う医学的必要性の2点が、摘要欄にそれぞれ記載されているかを確認します。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったところってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこも正直にお答えすると、当サイトが収集した令和8年度の一次資料(告示・留意事項通知・レセプト記載要領の訂正通知)の範囲では、前回改定(令和6年度)からの一期的両靱帯形成加算そのものの変更点は確認されていません(確認日: 2026年7月)。点数・算定要件・摘要欄記載事項に加えて、届出(不要)についても、当サイトが確認した限りでは前回改定から変更は確認されていません。
前回改定との対比(当サイトが確認した範囲)
令和6年度: K079-2の区分1に対する一期的両靱帯形成加算として、摘要欄への記載を求め、固有の届出は不要と整理される運用。 令和8年度: 当サイトが収集した一次資料の範囲では、点数・算定要件・摘要欄記載・届出(不要)のいずれも上記からの変更は確認されていません。
あおい(元・医療事務)
ただし、これはあくまで当サイトが収集できた資料の範囲での確認です。基礎点数であるK079-2自体の点数やレセプト記載ルールが今後改定されると、この加算の運用にも影響する可能性がありますので、最新の告示・通知は都度確認することをおすすめします。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
では、実際にレセプトを見るとき、どういう順番で確認すればいいですか?
自院で確認する順番
- 手術記録で、前十字靱帯断裂・後十字靱帯断裂の両方が診断されているか確認する
- 同一手術(一期的)で両靱帯の形成術を行ったか、手術記録・術式コードで確認する
- 選択した術式区分がK079-2「1 十字靱帯断裂形成手術」であるか確認する
- 両靱帯損傷の診断根拠となる検査所見(MRI等)がカルテにあるか確認する
- 一期的に両靱帯を形成した医学的必要性が、カルテ・診断書に記録されているか確認する
- 診療報酬明細書の摘要欄に、上記2点(診断根拠・医学的必要性)を記載する
あおい(元・医療事務)
この順番で確認すれば、算定候補になるかどうかの見当がつけやすくなると思います。特に4番目と5番目の「記録があるかどうか」は、手術後にさかのぼって整理するのが大変なので、手術直後のカルテ記載の段階から意識しておくと、後の摘要欄記載がスムーズになります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、よく聞かれそうな質問をまとめておきたいです。
あおい(元・医療事務)
いいですね。いくつか代表的なものを挙げてみましょう。
みらい(新人医療事務)
片方の靱帯だけを手術した場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
この加算は「前十字靱帯及び後十字靱帯に対して一期的に形成術を実施した場合」が要件なので、片方のみの手術では対象になりません。片方だけの十字靱帯断裂形成手術の場合は、この加算は付かない前提で確認してください。
みらい(新人医療事務)
前十字靱帯と後十字靱帯を、別々の日に手術した場合はどうですか?
あおい(元・医療事務)
「一期的に」という要件がポイントになります。別の手術日に分けて実施した場合は、一期的に行ったとは言えないため、この加算の対象になるかどうかは慎重な確認が必要です。判断に迷う場合は、審査支払機関に個別に確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出をしていなくても算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集した資料の範囲では、一期的両靱帯形成加算そのものに固有の届出は不要と整理されています。ただし、基礎となるK079-2側の施設基準が関わる場合もあるため、自院の届出状況は必ず確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。