みらい(新人医療事務)
あおいさん、加算のリストに「医療観察複数名訪問看護指導加算」っていう、見慣れない名前のものがあったんですけど……これって普通のクリニックでも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
これは少し特殊な加算なんです。名前は「複数名精神科訪問看護・指導加算」とよく似ているんですが、根拠になっている制度がまったく違うんですよ。今日はそこを丁寧に整理していきましょう。
みらい(新人医療事務)
制度が違う……というと、普通の医科点数表とは別物ってことですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。この加算は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った方の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)に基づく診療報酬(医療観察診療報酬点数表)に規定された加算です。通常の医科点数表とは別建ての告示体系で、対象になる医療機関もかなり限定されています。
医療観察複数名訪問看護指導加算とは
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関を教えてください。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医療観察診療報酬点数表(別表第2章「11 医療観察精神科訪問看護・指導料」注3)では、正式名称は「医療観察複数名精神科訪問看護・指導加算」です。当サイトでは加算の概念を整理する都合上「精神科」を省いた表記で扱っていますが、一次資料上の正式名称は「精神科」を含む点を覚えておいてください。厚生労働省の告示原文には、次のように定められています。「注3 注1及び注2に規定する場合(いずれも30分未満の場合を除く。)であって、複数の保健師等、准看護師又は看護補助者を訪問させて、看護又は療養上必要な指導を行わせた場合は、医療観察複数名精神科訪問看護・指導加算として、次に掲げる区分に従い、1日につき、いずれかを所定点数に加算する。ただし、ハの場合にあっては週1日を限度とする。」(医療観察診療報酬点数表 別表第2章)
みらい(新人医療事務)
「指定通院医療機関」っていう言葉、初めて聞きました。
あおい(元・医療事務)
医療観察法では、対象者への医療を担う医療機関があらかじめ厚生労働大臣から指定を受ける仕組みになっています。この加算の主体は、その「指定通院医療機関」の保健師等です。対象になる患者さんも、医療観察法第42条第1項第2号又は第51条第1項第2号の決定(通院決定)を受けた「通院対象者」に限られます。一般の保険診療の患者さんとはまったく別の枠組みなんです。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、指定を受けていない普通のクリニックは……
あおい(元・医療事務)
対象外の可能性が高いです。ただし、断定はできません。指定通院医療機関としての指定状況は医療機関ごとに異なりますし、指定を受けているのに院内での認識が薄いケースもゼロではありません。まずは自院が指定通院医療機関(または訪問看護事業型指定通院医療機関)に該当するかどうかを、地方厚生局や都道府県の担当窓口で確認するところから始めてください。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
同行する職種、1日の実施回数、同一建物内の対象者数の組み合わせで細かく分かれています。令和8年度の告示本文の点数区分をまとめると、次のとおりです。

| 区分(同行する職種・回数) | 同一建物内1〜2人 | 3〜9人 | 10〜19人 | 20〜49人 | 50人以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| イ 保健師等同行・1日1回 | 450点 | 400点 | 340点 | 300点 | 270点 |
| イ 保健師等同行・1日2回 | 900点 | 810点 | 688点 | 607点 | 546点 |
| イ 保健師等同行・1日3回以上 | 1,450点 | 1,300点 | 1,105点 | 975点 | 877点 |
| ロ 准看護師同行・1日1回 | 380点 | 340点 | 280点 | 250点 | 220点 |
| ロ 准看護師同行・1日2回 | 760点 | 680点 | 560点 | 500点 | 440点 |
| ロ 准看護師同行・1日3回以上 | 1,240点 | 1,120点 | 922点 | 823点 | 724点 |
| ハ 看護補助者又は精神保健福祉士同行(週1日限度) | 300点 | 270点 | 210点 | 190点 | 160点 |
みらい(新人医療事務)
「イ」「ロ」「ハ」で最大の点数が違うんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。イ(保健師等が同行する場合)が最も高く設定されていて、ロ(准看護師が同行する場合)、ハ(看護補助者又は精神保健福祉士が同行する場合。週1日が上限)の順に低くなります。ハの区分は週1日までという回数制限がある点にも注意してください。
みらい(新人医療事務)
表の点数の範囲を見ると160点〜1,450点ですけど、これって当サイトで整理している区分数(23区分)とぴったり対応しているんですか?
あおい(元・医療事務)
正直に言うと、そこは要確認です。告示本文の区分自体は職種3種類×回数3段階×人数5段階の組み合わせで最大35通りありますが、当サイトの概念整理上の区分数(23区分)が、そのうちのどの組み合わせに対応するかまでは、一次資料の記載だけでは一意に確定できませんでした。自院が算定する際は、上の表の職種・回数・人数の組み合わせをそのまま一次資料原文と突き合わせて確認することをおすすめします。
算定要件
みらい(新人医療事務)
どういうときに算定できる(候補になる)んですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知(障精発0331第3号)には、次のように書かれています。「(10)「注3」に規定する医療観察複数名精神科訪問看護・指導加算は、指定通院医療機関の医師が、複数の保健師等又は准看護師等(准看護師又は看護補助者をいう。以下同じ。)による患家への訪問が必要と判断し、通院対象者又はその家族等に同意を得て、当該医師の指示を受けた当該指定通院医療機関の保健師等と保健師等又は准看護師等が、通院対象者又はその家族等に対して看護及び社会復帰指導等を行った場合に算定する。単に2人の保健師等又は准看護師等が同時に医療観察精神科訪問看護・指導を行ったことのみをもって算定することはできない。」
みらい(新人医療事務)
「単に2人で訪問しただけでは算定できない」って書いてありますね。
あおい(元・医療事務)
そこが一番の注意点です。医師が「複数名での訪問が必要」と判断し、指示を出し、対象者や家族から同意を得ているという一連のプロセスが必須です。たまたま2人体制になった、という理由だけでは算定候補になりません。
算定要件のポイント
医師による複数名訪問の必要性の判断・指示、対象者又は家族等への同意取得、実際に複数名で看護・社会復帰指導等を行ったことの記録がそろって、はじめて算定候補になります。単なる同時訪問の事実だけでは算定要件を満たさない可能性が高い、と一次資料に明記されています。
施設基準・届出
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要ですか?
あおい(元・医療事務)
ここも要確認としか言えません。基本診療料及び医療観察精神科専門療法の施設基準等(厚生労働省告示第366号)の本文を確認した範囲では、この加算そのものに対応する個別の届出条項は見当たりませんでした。届出が必要な項目としては、医療観察機能強化型訪問看護管理料や医療観察24時間対応体制加算など、別の項目が定められています。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、届出なしで算定できるってことですか?
あおい(元・医療事務)
「届出は不要」と断定するのはまだ早いです。当サイトが確認できたのは告示本文の範囲までで、施設基準の取扱いに関する通知(障精発0331第4号)の全文までは確認しきれていません。指定通院医療機関としての指定要件・届出内容全体と合わせて、地方厚生局や担当部局に確認したうえで判断してください。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
医療観察診療報酬点数表は令和8年3月31日厚生労働省告示第146号によって改正され、令和8年6月1日から適用されています(一部の別項目は令和8年12月1日適用)。ただし、当サイトが確認した一次資料の範囲では、医療観察複数名精神科訪問看護・指導加算(注3)自体の点数区分・算定要件について、前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません。
改定チェックのポイント
医療観察法の診療報酬は改定のたびに告示・通知が個別に発出されます。「点数据え置き=内容も同じ」とは限らないため、改定年度が変わるタイミングでは、告示・留意事項通知の最新版を必ず確認してください。
紛らわしい加算名にご注意
みらい(新人医療事務)
最初に「似た名前の加算がある」っておっしゃってましたよね。
あおい(元・医療事務)
はい、そこが今日一番お伝えしたいポイントです。通常の医科点数表にも、精神科訪問看護・指導料(精神科訪問看護・指導料)の注4に規定する複数名精神科訪問看護・指導加算という、名前がとてもよく似た加算があります。こちらは医療観察法とは関係のない、一般の精神科訪問看護の枠組みの加算です。
みらい(新人医療事務)
名前だけ見たら、区別がつかなさそうです……。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。「医療観察」の文字が付いているかどうかが最大の見分けポイントです。院内で申し送りをするときも、正式名称を省略せずに書くようにすると取り違えを防げます。なお、医療観察法の枠組みには、同じ訪問看護でも医療観察精神科緊急訪問看護加算のように、緊急時に対応した場合の別の加算もあります。こちらも名前が近いので、算定する際は加算ごとに一次資料の該当条項を確認するようにしてください。
自院で確認する順番

自院で確認する順番
- 自院が医療観察法上の指定通院医療機関(又は訪問看護事業型指定通院医療機関)に該当するかを確認する
- 対象の患者さんが医療観察法上の通院対象者(通院決定を受けた方)であるかを確認する
- 医師が複数名での訪問看護・指導の必要性を判断し、指示を出しているかを確認する
- 対象者又は家族等から同意を得ている記録があるかを確認する
- 同行した職種(保健師等・准看護師・看護補助者又は精神保健福祉士)、実施回数、同一建物内の対象者数を記録し、該当する点数区分を確定する
- 施設基準・届出の要否について、地方厚生局・担当部局にも確認する
よくある取り漏れ
取り漏れ例1: 医師の指示・同意の記録漏れ
複数名で訪問した事実だけを記録し、医師の判断・指示や対象者・家族の同意取得の経緯を記録していないケースです。留意事項通知は「単に2人が同時に訪問したことのみをもって算定することはできない」と明記しているため、判断のプロセスを記録に残しておくことが大切です。
取り漏れ例2: ハ区分の週1日限度の見落とし
看護補助者又は精神保健福祉士が同行するハ区分は、週1日が上限です。複数回の訪問記録をそのまま積み上げて算定しようとすると、回数制限を超えてしまう可能性があります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、みんなが気になりそうなことをまとめて聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。順番に答えていきますね。
みらい(新人医療事務)
通常の訪問看護ステーションでも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
医療観察法上の「訪問看護事業型指定通院医療機関」として指定を受けている場合は候補になり得ますが、指定を受けていない一般の訪問看護ステーションは対象外の可能性が高いです。指定の有無をまず確認してください。
みらい(新人医療事務)
入院中の患者さんにも算定できますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した告示本文の範囲では、この加算は通院処遇の対象者向けの制度として規定されており、入院医療機関(指定入院医療機関)向けの同種の複数名加算は確認できませんでした。入院中の対象者については、別の入院医学管理料の枠組みで確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必ず必要ですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した施設基準告示の範囲では、この加算に固有の届出条項は見当たりませんでしたが、確定的な結論ではありません。指定通院医療機関としての指定・届出状況全体とあわせて確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。