みらい(新人医療事務)
あおいさん、うちのマスター一覧に「医療観察持続性抗精神病注射薬剤治療指導管理料」っていう長い名前の項目が出てきたんですけど、これって普通の診療報酬なんですか?
あおい(元・医療事務)
いいところに気づきましたね。実はこれ、健康保険の医科点数表とは別の体系なんです。心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った方の医療及び観察等に関する法律、いわゆる医療観察法に基づく「医療観察診療報酬点数表」という専用の点数表に載っている項目です。
みらい(新人医療事務)
医科点数表とは別物なんですね。じゃあ、うちの一般クリニックでも算定候補になることってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこが一番大事なポイントです。順番に確認していきましょう。
この管理料はどんな管理料ですか?
みらい(新人医療事務)
まず、そもそもどういう内容の管理料なんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省告示(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律第八十三条第二項の規定による医療に要する費用の額の算定方法。令和8年度は令和8年3月31日厚生労働省告示第146号で最終改正)の別表「医療観察診療報酬点数表」第2章13「医療観察抗精神病特定薬剤治療指導管理料」のイに当たる区分です。原文では次のように定められています。
みらい(新人医療事務)
原文だとどう書かれているんですか?
あおい(元・医療事務)
そのまま引用しますね。「13 医療観察抗精神病特定薬剤治療指導管理料 イ 医療観察持続性抗精神病注射薬剤治療指導管理料 (1) 入院中の対象者 250点 (2) 入院中の対象者以外 250点」となっています。持続性の抗精神病注射薬剤を使いながら計画的な医学管理と療養上の指導を続けている場合の指導管理料、というイメージです。
みらい(新人医療事務)
「対象者」っていう言い方、普通の患者さんとは違う響きですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。医療観察法では、法に基づく決定を受けた方のことを「対象者」と呼びます。ここも次の対象医療機関の話とセットで理解しておくと混乱しにくいですよ。
対象になる医療機関はどこですか?
みらい(新人医療事務)
さっき「一般クリニックでも算定候補になるか」って聞きましたけど、答えはどうなんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
告示の総則部分にはっきり書かれています。「法(略)第二条第三項に規定する指定医療機関に係る医療に要する費用の額は、別表医療観察診療報酬点数表により算定するものとする」とあり、この点数表全体が「指定医療機関」だけを対象にしています。
みらい(新人医療事務)
「指定医療機関」って具体的にはどんな医療機関なんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の制度概要ページによると、入院の決定を受けた方については「厚生労働大臣が指定した医療機関(指定入院医療機関)において、手厚い専門的な医療の提供が行われる」とされ、通院の決定を受けた方については「厚生労働大臣が指定した医療機関(指定通院医療機関)による医療を受けることとなります」と説明されています。つまり、厚生労働大臣から個別に指定を受けた特定の病院・診療所だけが対象で、指定を受けていない一般の医療機関はこの点数表そのものの対象外の可能性が高いです。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、うちのクリニックが指定を受けているかどうかを、まず確認しないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。自院が指定入院医療機関または指定通院医療機関としての指定を受けているかどうかは、地方厚生局や都道府県の担当窓口、あるいは自院の指定通知書で確認するのが確実です。指定を受けていない医療機関にとっては、この項目自体が算定対象にならない可能性が高いという前提で読み進めてください。
混同に注意
医科点数表にも似た名前の「I013 抗精神病特定薬剤治療指導管理料」(抗精神病特定薬剤治療指導管理料)という項目があります。こちらは通常の健康保険制度上の項目で、医療観察法の指定医療機関に限定されない一般の医療機関でも算定候補になり得るものです。名前が似ているため、どちらの点数表の話をしているのか、条文の見出し(医科点数表か、医療観察診療報酬点数表か)で必ず確認してください。
対象になる患者さんはどんな方ですか?
みらい(新人医療事務)
指定医療機関だとして、その中でも誰に対して算定できるものなんですか?
あおい(元・医療事務)
入院中の対象者と、入院中の対象者以外(通院対象者)とで条件が分かれています。原文を見てみましょう。
みらい(新人医療事務)
お願いします。
あおい(元・医療事務)
入院中の対象者については「持続性抗精神病注射薬剤を投与している法第42条第1項第1号又は第61条第1項第1号による決定を受けた統合失調症の対象者に対して、計画的な医学管理を継続して行い、かつ、療養上必要な指導を行った場合に、当該薬剤の投与開始日の属する月及びその翌月にそれぞれ1回に限り、当該薬剤を投与したときに算定する」とされています。
みらい(新人医療事務)
「投与開始日の属する月及びその翌月にそれぞれ1回」というのは、回数の制限があるってことですよね。
あおい(元・医療事務)
そうです。最初の月と翌月、合わせて2回までという読み方になります。入院中の対象者以外、つまり通院対象者については「持続性抗精神病注射薬剤を投与している統合失調症の通院対象者に対して、計画的な医学管理を継続して行い、かつ、療養上必要な指導を行った場合に、月1回に限り、当該薬剤を投与したときに算定する」となっていて、こちらは月1回が上限という書き方です。
みらい(新人医療事務)
どちらも「統合失調症」という病名指定と、「持続性抗精神病注射薬剤を投与している」という条件がセットなんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。対象疾患は統合失調症、かつ持続性の抗精神病注射薬剤を投与していることが条件です。それ以外の疾患や薬剤には、この条文の範囲では触れられていません。
点数はいくらですか?
みらい(新人医療事務)
点数のところ、もう一度整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
表にするとこうなります。
| 区分 | 対象 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| 13-イ(1) | 入院中の対象者 | 250点 |
| 13-イ(2) | 入院中の対象者以外(通院対象者) | 250点 |
| (参考)13-ロ | 医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料 | 500点 |

みらい(新人医療事務)
イの(1)も(2)も同じ250点なんですね。ロの方は500点で、施設基準の届出も要るみたいですけど、これは別物ですか?
あおい(元・医療事務)
はい、医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料は同じ区分13の「ロ」に当たる別項目で、治療抵抗性統合失調症治療薬を対象とする、施設基準の届出が明記された別の管理料です。今回の「イ」(持続性抗精神病注射薬剤治療指導管理料)とは対象薬剤も届出の扱いも異なるので、混同しないよう区別してください。
みらい(新人医療事務)
単価も普通の点数表と同じ1点10円で計算していいんですか?
あおい(元・医療事務)
そこも告示に明記があって、「指定医療機関に係る医療に要する費用の額は、一点の単価を十円とし、別表医療観察診療報酬点数表に定める点数を乗じて算定するものとする」とされています。1点=10円という単価の考え方自体は、通常の医科点数表と同じです。
施設基準・届出はどうなっていますか?
みらい(新人医療事務)
この管理料自体に、何か特別な施設基準や届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、この点は慎重な言い方が必要です。今回確認できた条文(注1・注2)には、イの(1)(2)について、ロのような「施設基準に適合しているものとして地方厚生局長に届け出た」という個別の届出要件の記載が見当たりません。ロの方には注3で「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長に届け出た指定通院医療機関において」という文言が明記されているのと対照的です。
みらい(新人医療事務)
ということは、イは届出なしで算定候補になるということですか?
あおい(元・医療事務)
そこは断定できません。個別の届出要件が条文上に明記されていないというだけで、前提として自院がそもそも「指定医療機関」(指定入院医療機関または指定通院医療機関)としての指定を受けていることは必須です。また、指定医療機関としての指定要件や運用細則については、施設基準の告示・通知(医療観察法指定医療機関の施設基準に関する告示・通知)で別途定められている可能性があるため、指定を担当する部署や地方厚生局に、自院の指定内容と合わせて確認することをおすすめします。
断定できない範囲
今回確認できた一次資料の範囲では、イ(1)(2)について個別の施設基準届出の明記は見当たりませんでした。ただし、これは「届出が一切不要」と保証するものではなく、資料の記載が確認できなかったことを示すにとどまります。実際の運用は、自院の指定医療機関としての指定内容・地方厚生局の指導に従って確認が必要です。
算定のタイミングと注意点
みらい(新人医療事務)
タイミングのところ、もう一度確認させてください。入院中の対象者だと「投与開始日の属する月とその翌月」でしたよね。
あおい(元・医療事務)
そうです。持続性抗精神病注射薬剤の投与を開始した月と、その翌月にそれぞれ1回ずつ、合計で最大2回が上限という読み方になります。通院対象者の方は、月1回が上限です。
みらい(新人医療事務)
3回目以降とか、投与開始から数か月経ってからだと、対象外になるということですか?
あおい(元・医療事務)
入院中の対象者の場合、条文が示す回数の範囲は「投与開始日の属する月及びその翌月」のそれぞれ1回に限定されているため、それ以降の月については、この区分(イ)の対象外の可能性があります。実際の請求にあたっては、投与開始日の管理と、算定した月の記録をあわせて確認してください。
併算定・回数制限は自院で必ず確認
このページで引用した回数制限は、あくまで条文に明記された範囲の整理です。医療観察診療報酬点数表には他の区分(電気痙攣療法、通院精神療法、訪問看護関連の各加算など)もあり、それらとの併算定の可否については、今回の記事の裏取り範囲では確認していません。併算定の扱いは、自院の指定医療機関の担当窓口や地方厚生局にご確認ください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
令和8年度の改定で、この管理料に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
確認した範囲では、変更は確認されていません。令和8年3月31日厚生労働省告示第146号による改正の新旧対照表を見ると、区分12から14までの部分は「12~14 (略)」という表記で、改正前後どちらの欄も同じ「(略)」表記になっています。これは、その区分に条文上の変更がなかったことを示す表記です。
みらい(新人医療事務)
「(略)」だから変わっていない、という読み方なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。加えて、この改正の適用時期を定めた条文でも「令和八年六月一日から適用する。ただし、別表第1章第1節に一項を加える改正規定(同節の1の注8に係る部分に限る。)は、令和八年十二月一日から適用する」とされており、個別に適用時期が分かれているのは第1章第1節の入院料に関する部分だけです。第2章13(医療観察抗精神病特定薬剤治療指導管理料)に触れた記載はありませんでした。
前回改定(令和6年度)との対比
今回の告示の改正履歴には「改正文(令和六年三月二九日厚生労働省告示第一六三号)抄 令和六年六月一日から適用する」という記載もあります。前回改定(令和6年度・令和6年6月1日適用)から令和8年度改定にかけて、区分13のイ・ロを含む部分の点数・算定要件に変更は確認されていません(一次資料の確認範囲内)。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
ここまでの話をまとめると、どんな順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
フローにするとこうなります。

自院で確認する順番
- 自院が医療観察法上の「指定医療機関」(指定入院医療機関または指定通院医療機関)としての指定を受けているかを確認する
- 対象の患者さんが、医療観察法に基づく決定を受けた「対象者」(入院対象者または通院対象者)であるかを確認する
- 対象者が統合失調症で、持続性抗精神病注射薬剤を投与されているかを確認する
- 計画的な医学管理と療養上必要な指導を継続して行っているかを確認する
- 入院中の対象者は投与開始月とその翌月、通院対象者は月1回という回数の範囲内かを確認する
- 指定医療機関としての運用細則・届出の要否について、地方厚生局や指定担当部署に確認する
みらい(新人医療事務)
1番目の「指定医療機関かどうか」がそもそもの前提なんですね。
あおい(元・医療事務)
そこを飛ばして点数や算定要件だけを見てしまうと、算定候補かどうかの判断を誤ってしまいます。まず制度の前提を確認してから、患者さんの条件を見ていく順番が安全です。
よくある取り漏れ・誤解
みらい(新人医療事務)
現場でよくある勘違いってどんなものがありますか?
あおい(元・医療事務)
代表的なものを2つ挙げますね。
一般の医科点数表と取り違える
名前が似ている「I013 抗精神病特定薬剤治療指導管理料」(通常の医科点数表)と、この「医療観察持続性抗精神病注射薬剤治療指導管理料」(医療観察診療報酬点数表)は、根拠となる点数表そのものが異なります。指定医療機関以外では、この記事で扱っている項目自体が算定対象にならない可能性が高い点に注意してください。
回数制限の見落とし
入院中の対象者は「投与開始日の属する月及びその翌月」にそれぞれ1回まで、通院対象者は月1回までという回数の上限が条文に明記されています。長期間にわたって継続的に算定できるという前提で記録を残してしまうと、後から確認した際に食い違いが生じる可能性があります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。指定医療機関としての指定状況や対象者の条件を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。