みらい(新人医療事務)
「薬剤業務向上加算」って名前を初めて見たんですけど、これって病棟薬剤業務実施加算とは別物なんですか?うちの病院、病棟薬剤業務実施加算はもう届出しているんですが。
あおい(元・医療事務)
いい質問ですね。薬剤業務向上加算は、単独の加算ではなく、区分番号A244病棟薬剤業務実施加算の「注2」に規定されている加算です。つまり病棟薬剤業務実施加算に上乗せする形の加算で、単独では算定候補になりません。
みらい(新人医療事務)
上乗せ、ですか。じゃあ病棟薬剤業務実施加算を届け出ていれば自動的についてくるものなんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは違います。薬剤師の研修体制その他につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者であって、病棟薬剤業務実施加算1又は病棟薬剤業務実施加算2を算定しているものについて、週1回に限り100点を所定点数に加算する、という条文になっています。研修体制などの追加の施設基準を満たして、別途届出をした場合に候補になる加算です。
この加算は何のための加算ですか?
みらい(新人医療事務)
そもそも、この加算はどんな目的でできたんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知では、さらなるチーム医療の推進と薬物治療の質の向上を図る観点から、地域医療に係る業務の実践的な修得を含めた病院薬剤師の充実した研修体制を整備した医療機関において病棟薬剤業務を実施することを評価するものである、と説明されています。つまり、病棟薬剤業務そのものを評価する病棟薬剤業務実施加算にさらに上乗せして、薬剤師の研修体制や地域医療への出向の仕組みまで整えている医療機関を評価する加算、という位置づけです。
みらい(新人医療事務)
研修体制まで見られるんですね。うちの病院みたいな中小規模の病院でも対象になるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
それは対象医療機関の要件次第です。次の項目で確認していきましょう。
対象になる医療機関・対象患者は?
みらい(新人医療事務)
まず対象になる医療機関を教えてください。
あおい(元・医療事務)
この加算は入院料加算の一種で、当サイトが収録している一次資料の範囲では、外来やクリニック(診療所)は対象になっていません。入院している患者に対する病棟薬剤業務実施加算の上乗せという性格上、病院(入院基本料や特定入院料を算定している病棟・治療室)が前提になります。
みらい(新人医療事務)
患者さんの側の条件はありますか?
あおい(元・医療事務)
はい、ここが見落としやすいポイントです。条文では「病棟薬剤業務実施加算1又は病棟薬剤業務実施加算2を算定しているものについて」と書かれています。病棟薬剤業務実施加算3(治療室で1日につき算定するタイプ)を算定している患者については、条文の文言上、薬剤業務向上加算の対象に含まれていない可能性があります。自院がどの区分で届け出ているか、対象患者がどちらに当たるかは、必ず自院のレセプト担当・薬剤部で確認してください。
対象患者の範囲に注意
薬剤業務向上加算の対象は、病棟薬剤業務実施加算1又は2を算定している患者に限られます。病棟薬剤業務実施加算3を算定している患者(治療室対象)は、条文上は含まれていない可能性があるため、算定候補かどうかは自院の届出区分に照らして要確認です。
点数・算定のポイント
みらい(新人医療事務)
肝心の点数を教えてください。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数表では、週1回に限り100点を所定点数に加算する、とされています。病棟薬剤業務実施加算そのものの点数(1は300点、2は120点、いずれも週1回)に、この100点が上乗せされる形です。
| 区分 | 点数 | 算定回数 | 年度 |
|---|---|---|---|
| 病棟薬剤業務実施加算1 | 300点 | 週1回 | 令和8年度 |
| 病棟薬剤業務実施加算2 | 120点 | 週1回 | 令和8年度 |
| 薬剤業務向上加算(注2) | 100点 | 週1回 | 令和8年度 |

みらい(新人医療事務)
病棟薬剤業務実施加算3には薬剤業務向上加算は上乗せできないってことですね。
あおい(元・医療事務)
条文の書き方からはそう読めます。ただし個別のレセプト運用に関わる判断なので、最終的には自院の届出区分と実際の算定状況を照らし合わせて確認してください。
施設基準を確認しましょう
みらい(新人医療事務)
施設基準がいちばん気になります。何を満たせばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の施設基準通知(4 薬剤業務向上加算の施設基準)に沿って、順番に整理しますね。
みらい(新人医療事務)
お願いします。
あおい(元・医療事務)
まず(1)として、病棟薬剤業務実施加算1又は2に係る届出を行っていることが前提です。その上で(2)として、免許取得直後の薬剤師を対象とした病棟業務等に係る総合的な研修体制を整備していることが求められます。具体的には、研修の責任者や委員会の設置、指導能力を有する常勤薬剤師の配置、研修プログラムの公開などが必要とされています。
みらい(新人医療事務)
研修だけじゃなく、出向みたいな話も聞いたことがあるんですが。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。都道府県との協力の下で、当該保険医療機関の薬剤師が、一定期間、別の保険医療機関に勤務して地域医療に係る業務を実践的に修得する体制も要件の一つです。出向する薬剤師は、概ね3年以上の病院勤務経験を有する常勤薬剤師であることなどが求められ、実際に出向を実施していることも要件になっています。
みらい(新人医療事務)
出向先はどこでもいいんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の疑義解釈では、当該保険医療機関が所在する都道府県との協力が望ましいものの、出向先の選定が困難な場合には、他の都道府県との協力の下での出向でも該当する、と示されています。また、出向先での勤務形態については、常勤(週4日以上勤務し、所定労働時間が週32時間以上)の職員として継続的に勤務している必要がある、とされています。
みらい(新人医療事務)
医療機関そのものの条件もあるんでしたよね?
あおい(元・医療事務)
はい。もう一つ大きな要件として、医療法第4条の2第1項に規定する特定機能病院、又はA200急性期総合体制加算1から4までのいずれかに係る届出を行っている保険医療機関であることが求められます。特定機能病院でなければ、急性期総合体制加算の届出という条件を満たす必要がある、ということですね。
施設基準の見落としやすいポイント
研修体制の整備(責任者・委員会・常勤薬剤師の配置)と、都道府県連携の出向体制(3年以上の常勤薬剤師を実際に出向させていること)は、どちらも「整備しているだけ」では不十分で、実際に運用・実施していることが要件です。書面上の体制整備だけで満たしていると判断せず、実施状況まで確認が必要です。
届出について
みらい(新人医療事務)
届出はどうすればいいですか?
あおい(元・医療事務)
薬剤業務向上加算の施設基準に係る届出は、別添7の様式40の4の2を用いることとされています。病棟薬剤業務実施加算の届出(様式40の4)とは別の様式になるので、注意してください。
みらい(新人医療事務)
もう病棟薬剤業務実施加算を届け出ている病院でも、また別に出す必要があるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。加えて、新規に届け出る場合は、出向に関する具体的な計画が策定された時点で届出を行うことができ、実際に出向を開始した月から算定を開始することとされています。届出のタイミングと算定開始月がずれる可能性があるので、薬剤部と事務部門で認識をそろえておくと安心です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
点数(週1回100点)や、病棟薬剤業務実施加算1又は2に上乗せするという基本的な算定要件については、当サイトが収録している一次資料の範囲では、変更は確認されていません(確認日: 2026年7月)。一方で、対象医療機関の要件の書きぶりには整理が入っています。
みらい(新人医療事務)
どんな整理ですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準通知では、対象医療機関の一つの条件として「特定機能病院又はA200急性期総合体制加算1から4までのいずれかに係る届出を行っている保険医療機関であること」とされています。この「急性期総合体制加算」は令和8年度改定に伴う加算区分の名称です。あわせて経過措置として、令和8年3月31日において現に急性期充実体制加算の届出を行っている保険医療機関については、令和8年9月30日までの間に限り、この対象医療機関の基準を満たしているものとみなす、と定められています。
前回→今回の時系列
これまで急性期充実体制加算を届け出ていた医療機関は、令和8年9月30日までの経過措置期間中は対象医療機関の要件を満たしているとみなされます。経過措置終了後に薬剤業務向上加算の対象医療機関としての要件を維持するには、急性期総合体制加算1〜4のいずれかの届出状況を改めて確認しておく必要があります。
みらい(新人医療事務)
経過措置が切れたあとも算定候補でい続けるには、届出を見直さないといけないってことですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。経過措置の期限は自院の届出スケジュールに関わるところなので、事務部門で日付を管理しておくと安心です。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの病院で何から確認すればいいのか整理してほしいです。
あおい(元・医療事務)
では順番に並べますね。
自院で確認する順番
- 病棟薬剤業務実施加算1又は2の届出を行っているか(病棟薬剤業務実施加算3のみの場合は上乗せの対象になりません)
- 免許取得直後の薬剤師を対象とした総合的な研修体制(責任者・委員会の設置、指導能力を有する常勤薬剤師の配置、研修プログラムの公開)を整備しているか
- 都道府県と連携した出向体制を整え、実際に3年以上の病院勤務経験を有する常勤薬剤師を出向させているか
- 特定機能病院に該当するか、又はA200急性期総合体制加算1から4までのいずれかの届出を行っているか(経過措置の期限も確認)
- 別添7様式40の4の2で薬剤業務向上加算の施設基準に係る届出を行っているか

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
実際に取り漏れやすいのはどんなケースですか?
あおい(元・医療事務)
いくつか典型的なパターンがあります。
よくある取り漏れ①
病棟薬剤業務実施加算を届け出ているだけで満足してしまい、薬剤業務向上加算の別途届出(様式40の4の2)を出していないケースです。上乗せ加算のため、算定候補にするには追加の届出が必要です。
よくある取り漏れ②
研修体制の整備は書類上できていても、出向体制について「実際に出向を実施していること」まで満たしていないケースです。施設基準通知では計画の策定だけでなく現に出向を実施していることが要件とされているため、実施状況の記録が残っているかを確認しておく必要があります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
いくつか気になっていることを聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
どうぞ。
みらい(新人医療事務)
病棟薬剤業務実施加算3しか届け出ていない病院は、薬剤業務向上加算はまったく候補にならないんですか?
あおい(元・医療事務)
条文では対象を「病棟薬剤業務実施加算1又は2を算定しているもの」と定めており、加算3は明記されていません。文言上は対象に含まれていない可能性が高いですが、最終的な判断は自院の届出内容と審査支払機関の確認によります。
みらい(新人医療事務)
出向させる薬剤師は誰でもいいんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準通知では、概ね3年以上の病院勤務経験を有する常勤薬剤師であることなどが要件とされています。また出向先での勤務形態についても、疑義解釈で常勤(週4日以上・週32時間以上)として継続的に勤務している必要があると示されています。
みらい(新人医療事務)
急性期総合体制加算を届け出ていない病院は、もうこの加算の対象にはならないんですか?
あおい(元・医療事務)
特定機能病院であれば、急性期総合体制加算の届出がなくても対象医療機関の要件を満たします。また、これまで急性期充実体制加算を届け出ていた医療機関は、令和8年9月30日までの経過措置の間は要件を満たしているものとみなされます。それ以外の場合は、急性期総合体制加算1〜4のいずれかの届出状況を確認する必要があります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する 病棟薬剤業務実施加算 や 急性期総合体制加算 のページもあわせて確認しておくと、施設基準のつながりが把握しやすくなります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。