みらい(新人医療事務)
「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」って名前、初めて見ました。人工腎臓のところに出てくる加算みたいですけど、これって何のための加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、これは区分番号「J038」人工腎臓(1日につき)の注10に規定されている加算です。透析を受けている患者さんの下肢(脚)の血管の状態を評価して、必要な指導管理を行った場合に算定候補になります。透析患者さんは動脈硬化が進みやすく、下肢末梢動脈疾患(足の血管が詰まる病気)のリスクが高いことが知られていて、それを早期に見つけて対応するための加算です。
みらい(新人医療事務)
なるほど、透析をしている患者さん全員が対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
そうですね。当サイトが収集した一次資料の範囲では「当該保険医療機関において慢性維持透析を実施している全ての患者に対しリスク評価等を行った場合に算定できる」とされています。一部の患者さんだけを対象にするのではなく、自院で慢性維持透析を行っている患者さん全員へのリスク評価が前提になっている点がポイントです。
下肢末梢動脈疾患指導管理加算とは(人工腎臓J038 注10)
みらい(新人医療事務)
「人工腎臓の注10」ってどういう位置づけなんですか? 単独の加算じゃないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。J038人工腎臓は「慢性維持透析を行った場合」の基本点数があり、そこに注1〜注15までいくつもの加算が並んでいます。導入期加算や長時間加算などと同じ並びに、注10として下肢末梢動脈疾患指導管理加算が置かれています。人工腎臓を実施している患者さんに対して、下肢末梢動脈疾患の重症度等を評価し、療養上必要な指導管理を行った場合に、所定点数に上乗せする形で算定候補になる加算です。
みらい(新人医療事務)
リスク評価って、具体的には何をするんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料には「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」等に基づき、下肢動脈の触診や下垂試験・挙上試験等を実施すること、そのうえで下肢末梢動脈の虚血性病変が疑われる場合には足関節上腕血圧比(ABI)検査または皮膚組織灌流圧(SPP)検査によるリスク評価を行うこと、と書かれています。触診や簡易な検査でリスクを疑ったら、より詳しい検査に進む、という流れですね。
点数区分と算定単位(令和8年度)

みらい(新人医療事務)
点数はどれくらいなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、下肢末梢動脈疾患指導管理加算は「月1回に限り所定点数に100点を加算する」とされています。人工腎臓の基本点数に上乗せする加算で、月に複数回算定できるものではない点に注意が必要です。
| 加算名 | 点数(令和8年度) | 算定単位 | 対象の基本診療 |
|---|---|---|---|
| 下肢末梢動脈疾患指導管理加算 | 100点 | 月1回に限り | J038 人工腎臓(1日につき) |
みらい(新人医療事務)
月1回ということは、透析は週に何回も行うのに、評価そのものは月1回分しか点数がつかないんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。透析の実施回数とは別に、リスク評価・指導管理を行った月に1回だけ算定候補になる、という整理になります。
対象患者・対象医療機関
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関、どんな患者さんが対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
対象医療機関は、人工腎臓(慢性維持透析)を実施している診療所・病院で、外来・入院のいずれの患者さんも対象になり得ます。対象患者は、当該保険医療機関で慢性維持透析を実施している患者さんです。一次資料の文言では「全ての患者に対し」リスク評価等を行った場合に算定できる、とされているため、自院で透析を行っている患者さんのうち特定の一部だけを評価する運用では、この加算の趣旨に沿っているか確認が必要になりそうです。
みらい(新人医療事務)
逆に、透析はしているけど下肢末梢動脈疾患の症状が全くない患者さんは対象外になったりしますか?
あおい(元・医療事務)
そこは慎重に見る必要があります。一次資料が求めているのは「リスク評価を行うこと」自体であって、症状の有無で最初から評価対象から外してよいとは書かれていません。触診や下垂試験・挙上試験といった基本的な評価はすべての対象患者に行い、そのうえで虚血性病変が疑われる場合にABI検査・SPP検査へ進む、という段階的な流れとして資料は整理されています。この点は具体的な運用として自院で確認いただくのが安心です。
施設基準・届出は必要ですか
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要なんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数表の条文では「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において」算定する、という書き方になっています。つまり条文上は、施設基準に適合したうえで地方厚生局への届出を行っていることが算定候補の前提として書かれています。
みらい(新人医療事務)
具体的にどんな施設基準なのかも書いてありますか?
あおい(元・医療事務)
施設基準の詳しい人員配置や体制の要件そのものについては、当サイトが収集した一次資料の範囲では確認できていません。届出様式や施設基準の告示・通知は地方厚生局が案内している内容も含めて別途確認が必要です。届出済みであれば算定候補になりますが、未届出の場合は算定候補にならない可能性がある、という位置づけで捉えていただくのが正確です。
届出状況の確認について
施設基準の適合状況・届出の有無は保険医療機関ごとに異なります。この記事の情報だけで届出済みと判断せず、自院の届出台帳や地方厚生局への届出内容を必ず確認してください。
算定要件の具体的な流れ
みらい(新人医療事務)
実際にどういう順番で評価や指導管理を進めればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料に基づくと、次のような流れになります。
自院で確認する順番
- 対象確認: 自院で慢性維持透析を実施している患者かどうかを確認する
- 基本評価: ガイドライン等に基づき、下肢動脈の触診や下垂試験・挙上試験等を実施する
- 精密検査の要否判断: 下肢末梢動脈の虚血性病変が疑われる場合、ABI検査またはSPP検査を自院で実施してリスク評価を行う
- 紹介・連携の判断: ABI検査0.7以下またはSPP検査40mmHg以下の場合は、専門的な治療体制を有する医療機関へ紹介する。自院が専門的な治療体制の要件を満たす場合は、院内の専門科と連携する
- 算定候補の整理: 月1回の評価・指導管理の実施記録と、施設基準の届出状況をあわせて確認する
みらい(新人医療事務)
検査は必ず自院でやらないといけないんですか? 他の医療機関にお願いしてもいいような気もするんですけど。
あおい(元・医療事務)
そこは実際に疑義解釈で示されている論点です。令和8年度より前の疑義解釈資料になりますが「当該医療機関がABI検査やSPP検査の設備を有しておらず、他の医療機関で実施した検査の結果を見て、専門的な医療機関へ紹介している場合、当該加算の施設基準を満たすか」という質問に対して、「当該医療機関で検査を実施している場合に限り算定できる」という回答が示されています。つまり、他院の検査結果だけをもとに紹介する運用では、この加算の算定候補にならない可能性がある、ということですね。
よくある取り漏れ
対象患者を絞り込みすぎていないか
一次資料は「慢性維持透析を実施している全ての患者」へのリスク評価を前提にしています。症状がある患者さんだけを評価対象にしている場合、この加算の趣旨と合っているか改めて確認する余地があります。
ABI検査・SPP検査を自院で実施しているか
疑義解釈では、他院の検査結果のみに基づく紹介では算定候補にならない可能性が示されています。自院での検査実施体制(設備・人員)を確認しておくと安心です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、令和8年度の改定で何か変わったところってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
この加算自体は以前の改定から存在しており、今回確認した疑義解釈も過去の改定時点のものです。前回改定(令和6年度)からの点数・算定要件の変更点については、当サイトが収集した一次資料の範囲では確認されていません。100点・月1回に限り、という点数表の記載は令和8年度の医科点数表によるものです。改定のたびに施設基準の告示番号や条文の位置(注番号)が変わることがあるため、算定にあたっては必ず最新の令和8年度の一次資料で確認してください。
改定での注番号のずれに注意
この加算は過去の改定で条文上の注番号が変わったことがあります。院内の古い資料やマニュアルが以前の注番号のまま残っている場合、令和8年度の一次資料と突き合わせて更新しておくと安心です。
自院で確認する順番

みらい(新人医療事務)
最後に、自院で確認するとしたらどんな順番がいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のような順番で確認していくと進めやすいと思います。
自院で確認する順番
- 自院で人工腎臓(慢性維持透析)を実施している患者数と体制を確認する
- 施設基準の届出状況を地方厚生局への届出台帳等で確認する
- 下肢動脈の触診・下垂試験・挙上試験を、対象患者全員に実施できる運用になっているか確認する
- ABI検査・SPP検査を自院で実施できる設備・人員があるか確認する
- 虚血性病変が疑われた患者の紹介先・院内連携先を確認する
- 月1回の評価・指導管理の実施記録の残し方をレセプト担当と共有する
みらい(新人医療事務)
これだけ整理できれば、自院が算定候補かどうかイメージがつきそうです。
あおい(元・医療事務)
はい。ただし最終的な判断は、届出内容や実際の診療体制によって変わってきますので、あくまで確認の手順として使ってくださいね。
人工腎臓の他の加算もあわせて確認したい
みらい(新人医療事務)
人工腎臓には他にもいろいろな加算があるんですよね?
あおい(元・医療事務)
そうですね。同じJ038人工腎臓の注に規定されている加算として、透析液水質確保加算や慢性維持透析濾過加算などがあります。透析患者さんの外来管理という点では慢性維持透析患者外来医学管理料も関係が深い項目です。下肢末梢動脈疾患指導管理加算とあわせて、自院で算定候補になりそうな項目を一通り確認しておくと、透析診療全体の届出・算定状況を整理しやすくなります。
みらい(新人医療事務)
1つずつバラバラに見るより、まとめて確認したほうがよさそうですね。
あおい(元・医療事務)
はい。人工腎臓まわりの加算は届出が必要なものと不要なものが混在しているので、それぞれの条文と施設基準を照らし合わせながら確認するのがおすすめです。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
いくつか気になったことを聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。
みらい(新人医療事務)
Q. 施設基準の届出をしていない場合、この加算は算定できませんか?
あおい(元・医療事務)
A. 令和8年度の点数表の条文では、施設基準に適合し地方厚生局長等に届け出た保険医療機関で算定するとされています。届出がない場合は算定候補にならない可能性が高いため、まず届出状況を確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
Q. ABI検査やSPP検査の設備が自院にない場合はどうすればいいですか?
あおい(元・医療事務)
A. 過去の疑義解釈では、自院で検査を実施している場合に限り算定できるとされています。設備がなく他院の検査結果のみで紹介している場合は、施設基準を満たしているか改めて確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
Q. 慢性維持透析患者の一部だけにリスク評価を行っている場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
A. 一次資料は「全ての患者」へのリスク評価を前提としています。対象を絞り込んでいる運用の場合、この加算の趣旨に沿っているか確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
Q. 月に何回も評価すれば、その分算定できますか?
あおい(元・医療事務)
A. 令和8年度の点数表では月1回に限り所定点数に加算するとされています。複数回評価を行っても、算定できるのは月1回分です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。