みらい(新人医療事務)
先輩、「特定薬剤治療環境特別加算」って初めて見た名前なんですけど、これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
A220-3の入院料加算ですね。カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤、たとえば遺伝子治療薬や再生医療等製品を投与する目的で、患者さんを個室に入院させた場合に算定候補になる加算です。令和8年度(2026年度)の改定で新しくできた項目なんですよ。
みらい(新人医療事務)
「カルタヘナ法」ってあまり聞かない法律ですね……。
あおい(元・医療事務)
正式名称は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」です。遺伝子治療薬や再生医療等製品の中には、患者さんの体内や排せつ物を通じて周囲に生物学的な影響が及ばないよう、管理環境に配慮が必要なものがあります。その管理のために個室入院が必要になったときの評価がこの加算だと考えてください。
特定薬剤治療環境特別加算とは
みらい(新人医療事務)
まず、どんな医療機関が対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
病院・診療所を問わず、入院診療を行っている保険医療機関が対象です。有床診療所でも算定候補になる点は、後で詳しく説明しますね。対象になる患者さんは、入院基本料(特別入院基本料等を含む)または特定入院料のうち、この加算を算定できるものを現に算定している患者さんに限られます。
みらい(新人医療事務)
「現に算定している患者」というのがポイントなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。まず土台となる入院基本料や特定入院料が、この加算の対象範囲に含まれているかどうかの確認が最初のステップになります。そのうえで、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与する目的で個室に入院させた場合に、所定点数へ加算します。
点数・コード
みらい(新人医療事務)
点数はどれくらいなんですか?
あおい(元・医療事務)
1日につき300点です。入院日ごとに算定できる加算という位置づけですね。厚生労働省の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)には、次のように条文が書かれています。
| 区分番号 | 加算名 | 点数 | 算定単位 | 年度 |
|---|---|---|---|---|
| A220-3 | 特定薬剤治療環境特別加算 | 300点 | 1日につき | 令和8年度 |
告示の条文(該当部分)
「A220-3 特定薬剤治療環境特別加算(1日につき) 300点 注 保険医療機関に入院している患者(第1節の入院基本料(特別入院基本料等を含む。)又は第3節の特定入院料のうち、特定薬剤治療環境特別加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)について、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号。以下「カルタヘナ法」という。)に基づく管理が必要な薬剤(再生医療等製品を含む。)を投与する目的で個室に入院させた場合に、特定薬剤治療環境特別加算として、所定点数に加算する。」

みらい(新人医療事務)
マスターコードの番号も知りたいんですが……。
あおい(元・医療事務)
実際の請求で使う診療行為コードの詳細は、レセプトコンピュータや医科診療行為マスターの表示で必ず確認してくださいね。区分番号は「A220-3」ですが、レセ電算用の具体的なコード桁は各医療機関のシステム表示を優先してください。
施設基準・届出はどうなっている?
みらい(新人医療事務)
この加算、施設基準とか届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
この加算は、地方厚生局への事前の届出や特別な施設基準の設定は不要です。つまり「届出済みであることの確認」というステップが無い、比較的シンプルな加算ではあります。
みらい(新人医療事務)
届出が要らないなら、対象の患者さんに個室を使えばすぐ算定できるということですか?
あおい(元・医療事務)
そこは慎重に考えてほしいところです。届出が不要というのは「事前に施設基準を満たして届け出る手続きが無い」という意味であって、「誰でも無条件に算定できる」という意味ではありません。対象になる薬剤かどうか、個室に入院させた目的が本当にカルタヘナ法の管理のためかどうかは、患者さんごとに確認が必要です。届出不要な加算だからこそ、算定要件を満たしているかの記録がより重要になります。
対象になる薬剤・算定要件の詳細
みらい(新人医療事務)
対象になる薬剤って、具体的にはどんなものなんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知では、カルタヘナ法に基づく管理が必要と定められている薬剤として、オナセムノゲン アベパルボベク、テセルパツレブ、ボレチゲン ネパルボベク、ベレマゲン ゲペルパベク、デランジストロゲン モキセパルボベクの5つが挙げられています。遺伝子治療薬や再生医療等製品と呼ばれるカテゴリーの薬剤ですね。
みらい(新人医療事務)
摘要欄に何か書く必要はありますか?
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項通知では「個室管理を必要とする薬剤について、診療報酬明細書の摘要欄に記載すること」と定められています。どの薬剤の管理のために個室入院が必要だったのかを、レセプト上に明記する必要があるということです。
みらい(新人医療事務)
個室って、いわゆる「差額ベッド」とは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
良い質問ですね。留意事項通知には「当該患者の管理に係る個室が特別の療養環境の提供に係る病室であっても差し支えないが、患者から特別の料金の徴収を行うことはできない」と書かれています。つまり差額ベッド(特別療養環境室)を使うこと自体は問題ありませんが、この加算を算定する場合は患者さんから室料の実費を別途徴収することはできない、という整理です。
対象薬剤(カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤)
- オナセムノゲン アベパルボベク
- テセルパツレブ
- ボレチゲン ネパルボベク
- ベレマゲン ゲペルパベク
- デランジストロゲン モキセパルボベク
算定タイミング・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
ほかの入院料加算と一緒に算定できたりしますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、注意が必要です。留意事項通知では「特定薬剤治療環境特別加算は、HIV感染者療養環境特別加算、特定感染症患者療養環境特別加算、重症者等療養環境特別加算、小児療養環境特別加算及び無菌治療室管理加算と併せて算定できない」とされています。同じ「個室・特別な療養環境」を評価する加算どうしは、原則としてどれか一つしか算定候補にならない整理です。
併算定の確認ポイント
同じ患者さんについて、HIV感染者療養環境特別加算・特定感染症患者療養環境特別加算・重症者等療養環境特別加算・小児療養環境特別加算・無菌治療室管理加算のいずれかを同時に算定していないか、レセプト作成前に必ず確認してください。対象外の可能性がある組み合わせを機械的に算定してしまうと、後日の査定対象になり得ます。
みらい(新人医療事務)
医薬品の管理に使う衛生材料の費用なんかはどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこも留意事項通知に定めがあります。カルタヘナ法に基づく管理のために製造販売業者が特に必要と判断した物品は製造販売業者側から保険医療機関に給付される一方、保険医療機関が施設の構造上の理由などから個別に必要性を判断した環境整備用の衛生材料や、カルタヘナ法対応に関わらず一般的に使う衛生材料の費用は、この加算に含まれる整理になっています。
有床診療所でも算定候補になる
みらい(新人医療事務)
診療所でもこの加算って算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、有床診療所入院基本料の告示にも、算定できる入院基本料等加算の一つとして特定薬剤治療環境特別加算が明記されています。病院に限らず、有床診療所でも個室でのカルタヘナ法対応が必要な患者さんを受け入れれば算定候補になり得ます。
みらい(新人医療事務)
病床規模は関係ないんですね。
あおい(元・医療事務)
病床規模そのものよりも、「個室が用意できるか」「カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤の投与目的で入院させているか」という患者さんごとの状況が判断のポイントになります。ただし、実際に該当患者を受け入れる機会があるかどうかは医療機関の診療内容によって差が大きい加算でもあります。

令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定のときからあったんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ。厚生労働省の「個別改定項目について」では、この加算は「(新)」の表示付きで掲載されており、「カルタヘナ法に基づく医学管理を目的として、入院中の個室管理を行った場合の評価を新設する」と説明されています。つまり令和8年度(2026年度)改定で新しく設けられた加算です。前回の令和6年度(2024年度)改定の時点では存在していませんでした。
みらい(新人医療事務)
新しくできた加算なんですね。じゃあ今後また変わることもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
新設された直後の加算は、運用の中で疑義解釈が出たり、次回以降の改定で対象薬剤や点数が見直されたりする可能性があります。当サイトの整理では、令和8年度改定時点の内容として本記事をまとめていますので、今後の疑義解釈通知や次回改定の情報にも注意しておくと安心です。
自院で確認する順番
自院で確認する順番
- 対象になりそうな患者さんが、入院基本料または特定入院料のうち本加算を算定できるものを現に算定しているか確認する
- 投与予定・投与中の薬剤が、カルタヘナ法に基づく管理が必要と定められた薬剤(対象薬剤リスト)に該当するか確認する
- その薬剤の管理を目的として個室に入院させているかを確認し、差額ベッド料との重複徴収がないか整理する
- HIV感染者療養環境特別加算など、併算定できない他の療養環境系加算を同時に算定していないか確認する
- 診療報酬明細書の摘要欄に、個室管理を必要とする薬剤名を記載する
よくある取り漏れ
見落としやすいポイント
- 届出が不要な加算のため、「届出台帳に載っていないから対象外」と早合点してしまい、算定候補の患者さんを見落とすケースがあります。
- 差額ベッド(特別療養環境室)を使っていると「特別料金を徴収しているから加算は算定できない」と誤解しがちですが、正しくは「加算を算定する場合に特別料金の徴収ができない」という関係です。運用ルールを混同しないよう注意してください。
- 併算定できない他の療養環境系加算(HIV感染者療養環境特別加算等)との重複算定は、レセプトチェックの段階で見落としやすいポイントです。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に気になっていることをいくつか聞いてもいいですか?外来の患者さんにも使える加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、この加算は入院患者さんが対象です。当サイトが収録している一次資料の範囲では、外来や在宅療養での算定に関する規定は確認されていません。外来・在宅での薬剤管理については、別の管理料の枠組みが用意されていますので、混同しないよう気をつけてください。
みらい(新人医療事務)
1入院で1回だけしか算定できない、というような回数制限はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
告示・留意事項通知の範囲では「1日につき」という算定単位が明記されていますが、通算での算定回数の上限は当サイトが収録している資料の中では確認されていません。対象要件を満たす入院日ごとに算定候補になりうる、という理解で公式資料を当たってみてください。
みらい(新人医療事務)
薬剤の投与自体の費用とは別に算定できるんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい、この加算は個室管理という「環境」に対する評価であり、薬剤そのものの投与に関する費用や、特定薬剤治療管理料などの管理料とは別の枠組みです。ただし、それぞれの算定要件を個別に満たしているかどうかは分けて確認してくださいね。
参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省公式資料を根拠としています。詳細な算定要件は必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚生労働省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号): https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号): https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/000433602.pdf
- 令和8年度診療報酬改定の個別改定項目について(カルタヘナ法に基づく医学管理の推進): https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001639439.pdf
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。対象患者の状況や併算定の有無を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。