みらい(新人医療事務)
「緩和ケア病棟入院料」ってよく聞くんですけど、普通の入院料と何が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
緩和ケア病棟入院料は、区分番号A310の特定入院料です。悪性腫瘍の患者さん、後天性免疫不全症候群(AIDS)の患者さん、それに終末期の末期腎不全の患者さんを対象に、緩和ケアを専門に行う病棟に入院した場合の1日あたりの入院料として算定します。当サイトが収録している一次資料の範囲では、令和8年度(2026年度)時点でこの3つの対象疾患が明記されています。
みらい(新人医療事務)
対象になる患者さんって、その3つだけなんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。厚生労働省の留意事項通知には「緩和ケア病棟は、主として苦痛の緩和を必要とする悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群及び終末期の末期腎不全の患者を入院させ、緩和ケアを行うとともに、外来や在宅への円滑な移行も支援する病棟であり、当該病棟に入院した緩和ケアを要する悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群及び終末期の末期腎不全の患者について算定する」と定められています。末期腎不全については、腎不全に対して適切な治療が実施されていること、そのうえで日本腎臓学会の慢性腎臓病重症度分類でStage G5以上に該当し腎代替療法を必要とする状態だが透析療法の開始・継続が困難であること、という条件が示されています。
みらい(新人医療事務)
もし対象疾患じゃない患者さんが、たまたまその病棟に入院しちゃったらどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では「悪性腫瘍の患者及び後天性免疫不全症候群の患者以外の患者が、当該病棟に入院した場合には、一般病棟入院基本料の特別入院基本料を算定する」とされています。対象疾患でない患者さんの入院は、緩和ケア病棟入院料そのものではなく別の入院基本料の扱いになる、という整理です。この境界の判断が必要なケースは、自院だけで即断せず確認が必要な場面と言えそうですね。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はどうなっているんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、緩和ケア病棟入院料は1と2の2区分があり、それぞれ入院期間に応じて3段階の点数が設定されています。表にまとめますね。
| 区分 | 30日以内の期間 | 31日以上60日以内の期間 | 61日以上の期間 |
|---|---|---|---|
| 緩和ケア病棟入院料1 | 5,277点 | 4,724点 | 3,515点 |
| 緩和ケア病棟入院料2 | 5,025点 | 4,555点 | 3,449点 |

みらい(新人医療事務)
「1日につき」の点数なんですね。入院が長引くほど点数が下がっていくんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、1日につき算定する点数で、入院期間が長くなるほど各区分とも点数が下がる段階構成になっています。1と2のどちらの区分になるかは、後で説明する施設基準の充足状況で決まるので、点数だけを見て自院がどちらに当たるかを判断することはできません。
みらい(新人医療事務)
薬剤費とかは別に請求できるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には「緩和ケア病棟入院料を算定する日に使用するものとされた薬剤に係る薬剤料は緩和ケア病棟入院料に含まれるが、退院日に退院後に使用するものとされた薬剤料は別に算定できる」とあります。入院中の薬剤料は基本的に入院料に含まれていて、退院日に退院後の分として渡す薬剤だけは別に算定できる、という整理ですね。
施設基準を確認する
みらい(新人医療事務)
この入院料、届出が必要なんですよね? 施設基準はどんな内容なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、届出が必要な特定入院料です。厚生労働省が定める施設基準の告示・通知には、緩和ケア病棟入院料1の施設基準として(1)から(18)までの項目が示されています。主なものを挙げますね。
緩和ケア病棟入院料1の施設基準(主な項目・令和8年度)
対象病棟: 「主として悪性腫瘍患者、後天性免疫不全症候群又は終末期の末期腎不全に罹患している患者を入院させ、緩和ケアを行う病棟を単位として行うこと」 夜間看護: 「夜間において、看護師が複数配置されていること」 医師員数: 「当該病院の医師の員数は、医療法に定める標準を満たしていること」 担当医の配置: 「当該病棟内に緩和ケアを担当する常勤の医師が1名以上配置されていること」(複数病棟で届け出る場合は病棟ごとに1名以上) 担当医の研修: 「がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会の開催指針に準拠した緩和ケア研修会」または「緩和ケアの基本教育に関する指導者研修会(日本緩和医療学会主催)等」のいずれかを修了していること(末期腎不全患者に緩和ケアを行う場合は前者の研修修了が必要) 病棟・病室面積: 「当該病棟に係る病棟床面積は、患者1人につき内法による測定で、30平方メートル以上であり、病室床面積は、患者1人につき内法による測定で、8平方メートル以上であること」
みらい(新人医療事務)
建物や部屋の広さまで決まってるんですね。他にはどんな項目がありますか?
あおい(元・医療事務)
まだあります。病棟は全室個室でも構わないが「特別の療養環境の提供に係る病床の数が5割以下であること」、入退棟に関する基準の作成、緩和ケアの内容に関する患者・家族向け案内の作成と説明、地域の在宅医療機関と連携した緊急時受入体制の確保、24時間連絡を受ける体制の確保、連携医療機関の医師・看護師・薬剤師への実習を伴う専門的な緩和ケア研修の実施、といった項目が続きます。これらに加えて、がん診療の拠点となる病院に該当する場合は別途要件が定められていることがあるため、該当する場合は公式資料での確認をおすすめします。
みらい(新人医療事務)
入院期間についての基準もあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。「当該病棟直近1年間の入院患者について」入院の意思表示から実際の入院までの平均待機期間が14日未満であること、または退院患者のうち転院・転棟・死亡退院以外の患者が15%以上であること、のいずれかを満たす必要があります。加えて「緩和ケア診療加算」「外来緩和ケア管理料」「在宅がん医療総合診療料」のいずれかに係る届出を行っていること、データ提出加算の届出を行っていること、も条件に含まれます。
みらい(新人医療事務)
入院料1と2で施設基準の違いはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
通知では「緩和ケア病棟入院料2に関する施設基準等」として「1の(1)から(14)まで及び(18)を満たしていること」とされています。つまり入院料2は、入院料1の(1)から(14)とデータ提出加算の届出((18))を満たせばよく、待機期間・退院患者割合の基準((16))や緩和ケア診療加算等の届出((17))は入院料2では求められていません。どちらの区分に該当するかは、この違いを踏まえて確認が必要です。
届出の要否
みらい(新人医療事務)
届出の書類はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
通知には「緩和ケア病棟入院料の施設基準に係る届出は、別添7の様式9、様式20及び様式52を用いる」と示されています。届出済みであれば算定候補として整理できますが、届出がまだの場合は、まず施設基準を満たしているかどうかの確認から始めることになります。
届出状況は必ず確認を
緩和ケア病棟入院料は「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た緩和ケアを行う病棟を有する保険医療機関」が対象です。届出の有無・区分(1か2か)・直近の実績要件の充足は自院で必ず確認してください。この記事だけで届出済みとみなすことはできません。
算定のタイミング・注意点
みらい(新人医療事務)
併算定で気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
緩和ケア病棟入院料には、注2に「緩和ケア病棟緊急入院初期加算」、注4に「緩和ケア疼痛評価加算」という加算が規定されています。緩和ケア病棟緊急入院初期加算は、在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院と連携している場合に、病状急変時の受入れを評価するもので、対象患者・連携実績の条件があります。緩和ケア疼痛評価加算は、留意事項通知に「緩和ケアに関するガイドラインを参考として、疼痛の評価その他の療養上必要な指導等を実施すること」と定められています。どちらも緩和ケア病棟入院料への上乗せという位置づけなので、算定候補になるかは個別に確認が必要です。関連ページとして緩和ケア病棟緊急入院初期加算と緩和ケア疼痛評価加算も参考にしてください。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出項目にあった「緩和ケア診療加算」や「外来緩和ケア管理料」も関係あるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、緩和ケア病棟入院料1の施設基準(17)で、緩和ケア診療加算、外来緩和ケア管理料、在宅がん医療総合診療料のいずれかに係る届出を行っていることが条件の一つになっています。緩和ケア病棟だけでなく、外来や在宅の緩和ケア関連加算の届出状況もあわせて確認しておくと整理しやすいと思います。
対象疾患以外の患者が入院した場合
悪性腫瘍・後天性免疫不全症候群・終末期の末期腎不全のいずれにも該当しない患者さんが緩和ケア病棟に入院した場合、留意事項通知では一般病棟入院基本料の特別入院基本料を算定する扱いとされています。緩和ケア病棟入院料をそのまま算定できるとは限らないため、対象疾患の該当性は個別に確認が必要です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲(令和8年度の医科点数表・留意事項通知・施設基準通知)では、緩和ケア病棟入院料そのものについて前回改定(令和6年度)からの変更点を示す一次資料は確認できていません(確認日: 2026年8月)。点数・施設基準の内容は、あくまで令和8年度時点の一次資料に基づく整理としてお読みください。前回改定との比較を含めて正確に把握したい場合は、厚生労働省が公表する改定の概要資料もあわせて確認することをおすすめします。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちの病院で確認するとしたら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
自院で確認する順番は、こんな流れになると思います。
自院で確認する順番
- 入院している(または入院予定の)患者さんが、悪性腫瘍・後天性免疫不全症候群・終末期の末期腎不全のいずれかに該当するかを確認する
- 緩和ケア病棟の施設基準((1)から(18)の各項目、医師配置・研修・病棟床面積・待機期間等)を満たしているかを確認する
- 入院料1と2のどちらの基準に該当するかを整理する(1は(1)から(18)全て、2は(1)から(14)及び(18))
- 地方厚生局長等への届出状況(様式9・様式20・様式52)を確認する
- 届出済みであれば算定候補として整理し、不明点は審査支払機関や公式資料で確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場で見落としがちなポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつか挙げてみますね。
確認しておきたいポイント
対象疾患の再確認: 末期腎不全の患者さんは「腎不全に対して適切な治療が実施されている」ことと「慢性腎臓病重症度分類Stage G5以上」かつ「透析療法の開始又は継続が困難」であることの両方を満たすかどうかの確認が必要です 入院料1と2の混同: 待機期間・退院患者割合の基準や緩和ケア診療加算等の届出は入院料1だけの要件です。入院料2の届出病棟でこれらを求めていないか確認しておくと安心です 注加算の算定漏れ: 緩和ケア病棟緊急入院初期加算・緩和ケア疼痛評価加算は、対象患者や実施内容の要件を個別に満たしているかの確認が必要です 薬剤料の切り分け: 入院中に使用する薬剤料は入院料に含まれますが、退院日に退院後用として渡す薬剤料は別に算定できる、という切り分けを取り違えないようにする必要があります
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。